第2章24話:再戦?

……で。


あと食べてないのはヘンリックくんだけだ。


私はヘンリックくんに、差し出した。


「ヘンリックくんも、どうぞ」


「……」


ヘンリックくんは、差し出されたチョコに、怪訝けげんそうな顔をする。


しかし。


おそるおそる手を伸ばし、チョコを手に取った。


口に運ぶ。


もぐもぐと食べる。


ややあって。


「……美味い」


と、ぽつり漏らした。


私は言う。


「それはよかったです」


「お前の魔法……なんなんだよ」


何……といわれても。


チョコレート魔法である。


今でこそ、私はチョコレート魔法についてもかなり理解が深まっているけれど。


知れば知るほど、チョコレートとしか言いようが無いんだよね。この魔法。


「まあいい。セレナ、今からもう一回僕と勝負しろ」


とヘンリックくんが言ってきた。


私は首をかしげる。


「え? 今からですか?」


「今からだ」


「……さっき『努力して、いつか追いつく』的な宣言してませんでした?」


「いつか追いつくための努力として、再戦を挑んでいるんだ!」


と上手い切り返しをしてきた。


続けて、ヘンリックくんは告げる。


「僕はいつか王都の学園を受験するんだ。それが僕の目標だ。だから、こんなところで負けていられないんだよ」


どうやら受験を見据えているらしい。


口振りからするに、王都の学園とやらは筆記試験だけじゃないんだろう。


実技試験もあって、だから戦闘技術を鍛えているといったところかな。


「僕は強くならなくちゃいけない。目標をかなえるために! だから勝負しろ。今すぐに!」


ヘンリックくんの瞳には、燃えるような決意の光が宿っていた。


静かな情熱、学園への憧憬しょうけいを感じる目だった。


と、そのときラミサさんが水を差す。


「えー? でも、もう1回やってもボコボコにやられるだけなんじゃないの?」


すると、ヘンリックくんが怒りに顔を赤くした。


「次はボコボコにはならない! せめて良い勝負はする!」


「いや、無理じゃない?」


「無理じゃない!」


「えー」


と、ラミサさんが疑問の声を呈した。


そのときテオくんが口を挟んだ。


「次は俺がやりてえ! 俺が勝ったら、チョコレート1年ぶんくれよ!」


いやー。


戦うのは別にいいけど、1年ぶんはさすがに無理だ。


「いいえ、あたしが戦ってみたいわ!」


ラミサさんが言うと、テオくんが言い返した。


「お前は先にアイリスとやるんだろ!」


「そうだけど、セレナともやってみたいのよ!」


わぁ……


みんな戦いが好きだねぇ。


元気が有り余っているのか、子どもなりに血の気が多いのか。


そのときヘンリックくんが鼻を鳴らした。


「ふん。僕ですら負けたんだぞ。お前たちでは相手にならん。瞬殺されて終わりだ」


「なんだとヘンリック!!」


「あたしたちだって善戦ぐらいできるわよ!」


テオくんとラミサさんが反論するが、ヘンリックくんが言い返す。


「実際に戦ったやつにしかわからないだろうな。こいつの魔法が、どれだけ厄介な代物しろものか」


ヘンリックくんはあれだけ敗北したからか、チョコレート魔法の戦闘能力を、とても高く評価しているようであった。





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