第2章21話:戦いの後2
ユズナさんが言った。
「では、ラミサちゃんとアイリスちゃんの試合をはじめましょうか」
そういえば、私とヘンリックくんの後は、二人の試合だっけ……
が、ラミサさんが異を唱える。
「さすがに、セレナやヘンリックの後で戦うのはきついわ。あんなハイレベルな戦いができるとは思わないもの。アイリスはどうかしら?」
「……私も、無理だと思う」
「そうよね。だから、対戦は後日ってことじゃダメかしら? ヘンリックも帰っちゃったし」
と、ラミサさんが提案した。
ユズナさんはうなずいた。
「わかりました。では、後日あらためて、ラミサちゃんとアイリスちゃんの試合をおこなうことにしましょう。今日の剣術教室は解散ということで」
と、ユズナさんが宣言する。
かくして、今日の剣術教室は閉幕となる。
そのあと、テオくんとラミサさんに遊びに誘われたので、いくことにした。
<他者視点>
テオとラミサが、セレナたちを連れて走り去っていく。
クレアベルとユズナは、その背中を優しく見送っていた。
クレアベルは尋ねる。
「どうだ? セレナはすごかっただろ?」
「はい。ヘンリックくんを、ああも簡単に倒してしまうとは、思ってもみませんでした」
ユズナは、事前にクレアベルから、セレナの才能が飛びぬけていると聞いていた。
しかし、なんだかんだヘンリックが勝利すると思っていたのだ。
だが終わってみれば、セレナの圧勝である。
ヘンリックはまるで手も足も出ていなかった。
「あのヘンリックも、筋は悪くなかったがな。冒険者でいえばEランクぐらいの実力があるんじゃないか?」
「はい。それぐらいはあるでしょうね」
冒険者ランクは最下位がFランクだ。
Eランクは、下から二番目であるので、決して高くは無い。
しかしヘンリックの年齢が10歳であることを考えると、Eランクはかなりの高ランク。
将来が楽しみになるような強さである。
ユズナは言った。
「ヘンリックくんには悪いですが、今回の彼の敗北は、ありがたいことでした。ヘンリックくんは最近、実力が伸びてきたことで、少し増長してましたから」
「ああ。口振りからして傲慢さがにじみでていたな。ああいうのは放置しておくと、そのうち歪みかねない」
傲慢な性格は、歯止めをかける者が必要だ。
しかしたとえばユズナがヘンリックを叩きのめしても、あまり意味がない。
大人が子どもに勝ったところで当たり前。
衝撃は薄いからだ。
ゆえに、年下のセレナがヘンリックを倒したことは、大きかった。
ヘンリックにとって、うぬぼれを自覚するきっかけとなっただろう。
「しかし、セレナちゃんは本当にすごいですね。実力的にはもう、Dランクぐらいはあるんじゃないでしょうか」
「いや、もっと上だろう。さきほどの戦いですら、全然本気ではなかったからな。あいつが本気になったら、私でも敵わないかもしれない」
「……そんな馬鹿な」
「冗談ではないぞ。セレナは魔法に関してだけは、本当に飛びぬけているからな。規格外の娘だよ」
「……」
クレアベルは、真顔で言っている。
ウソではないのだということに、ユズナは、静かに驚愕した。
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