第2章20話:戦いの後
みんなが、私たちに近づいてきた。
テオくんが興奮したように叫ぶ。
「うおおおおおおおおお! すげえ! マジでヘンリックに勝っちまいやがったのかよ!」
ラミサさんも告げる。
「あなた、やるじゃない! 思わず魅入っちゃったわよ!?」
「あはは。ありがとうございます」
と、私は賞賛の言葉を受け取りつつ、
ヘンリックくんの檻を解除した。
アイリスが言ってきた。
「お姉ちゃん、すごかった!」
「ありがとうございます、アイリス」
と私は答える。
ユズナさんやクレアベルも、ねぎらいと、賞賛の言葉をかけてくれる。
悔しそうに拳を握り締めるヘンリックくん。
ヘンリックくんが叫ぶように言ってきた。
「セレナ!」
「は、はい?」
「確かにお前の魔法はすごかった! だがな、いま僕が負けたのは2回戦だからだ!」
とヘンリックくんは言って、続ける。
「1回戦でお前は僕の手の
ふむ、なるほど。
まあ理屈はわかる。
1回戦の時点で、私はヘンリックくんの戦い方を知ったので、2回戦は対応しやすかったのは事実だ。
しかし逆にヘンリックくんは、チョコレート魔法を初見で対応しなければならなかった。
お互いの戦い方について、初見だったヘンリックくんと、初見じゃなかった私。
フェアではないのは確かだ。
私は言った。
「まあ私は3回戦をやってもいいですが」
とユズナさんを見つめる。
ユズナさんはうなずいてから言った。
「そうですね。気の済むまでやってみなさい」
かくして。
私とヘンリックくんの3回戦が開始された。
しかし……
「ぐはっ!!?」
開始直後にチョコレート・パンチを食らったヘンリックくんがぶっ飛んだ。
私の勝ちである。
「もう1回勝負だ!」
というわけで4回戦。
途中までヘンリックくんは、なんとかチョコレート魔法に食らいついていたが……
「ぐふっ!?」
チョコレート・ハンドの平手打ちを食らったヘンリックくんが、ぶっ飛んだ。
私の勝ちである。
その後。
5回戦、6回戦も私が勝利し……
7回戦目。
ヘンリックくんが、チョコレート・ハンドに剣を叩き落される。
つづいてチョコレート・ハンドの突き飛ばし攻撃を食らって、ぶっ倒れた。
7回戦も私の勝利で終わった。
「はあ……はぁ……はぁ……はぁ……はっ……はぁ……」
息切れするヘンリックくんが、大の字に寝転がって、
「勝てない……」
と、つぶやいた。
私は尋ねる。
「8回戦もやりますか?」
「いや……もういい」
とヘンリックくんは返す。
「十分わかった……今の僕は、お前より弱い」
やっと敗北を受け入れたようである。
私は展開していたチョコレート魔法を霧散させた。
ヘンリックくんは、立ち上がる。
「だがな! 僕はあきらめないぞ!」
ヘンリックくんは言った。
「もっと強くなって、必ずお前の魔法を打ち破ってやる!」
一方的にそう告げて。
ヘンリックくんは早足で去っていく。
彼の背中に、テオくんが問いかける。
「おいヘンリック、どこにいくんだよ!?」
「うるさいな! 今日はもう帰る! 帰って
ヘンリックくんは言い捨てて、歩き去っていった。
「自主練って……」
と、テオくんが困惑したようにぽつりつぶやく。
ラミサさんが説明した。
「負けたことがよっぽど悔しかったんじゃないの?」
すると、テオくんが笑った。
「まあセレナの圧勝だったからな! ほんとセレナはすげーよ! 剣術教室の新エースだぞ!」
「エ、エースですか」
「ああ、だってヘンリックにあれだけ勝ちまくったんだからよ! うちの最強はセレナだろ!」
テオくんの言葉に、ラミサさんもウンウンとうなずいた。
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