第2章19話:対決4

<セレナ視点>


「くっ!!」


ヘンリックくんは、顔をゆがめていた。


思いがけない苦戦だったのだろう。


いま、チョコレート魔法は確実にヘンリックくんを追い詰めている。


「舐めるなよッ!」


ヘンリックくんは、劣勢をくつがえそうと反撃を開始する。


パンチを避けたあと、右手に魔力を集中させる。


そして私に向けて風魔法弾を放ってきた。


(ふむ……やっぱり冷静だね)


ヘンリックくんのことを、私はそう分析した。


チョコレート・ハンドにいくら攻撃を加えても、ダメージはない。


だから本体である私にダメージを与えようとしたわけだ。


まあ、風魔法弾なんて効かないけどね。


私は【チョコレート・ウォール】を作って、風魔法弾を防いだ。


「くっ……!」


ヘンリックくんが歯噛みする。


「そろそろ決着といきましょうか」


と、私は宣告した。


「!!?」


次の瞬間、チョコレート・パンチがヘンリックくんに迫ったかと思うと――――


途中で、突然形を変えて、ガバッと広がり……


あみのような形状に変化した。


「なに!?」


ヘンリックくんが驚愕して、一瞬、足が止まる。


網が、ヘンリックくんの周囲を囲い込む。


そして。


ぎゅっと収縮して、ヘンリックくん一人を閉じ込める檻となった。


「くっ!!」


檻の中は、木剣を振れる広さがない。


木剣を持っていても仕方ないと思ったのだろう、ヘンリックくんは木剣を取り落とした。


素手で檻をこじ開けようとする。


だが。


「か、硬い……!?」


チョコレートの檻はびくともしない。


これぞチョコレートの牢獄――――【チョコレート・プリズン】である。


勝ちを確信した私は、悠然とヘンリックくんのほうへ歩き出した。


「ちっ!!」


ヘンリックくんは盛大に舌打ちしたのち、


檻の中から手を伸ばして、魔法弾を放ってきた。


しかし、私は歩みを止めない。


飛んできた魔法弾は、チョコレート魔法がムチのようにしなって、はたき落とす。


ヘンリックくんは諦めず、二度、三度と、魔法弾を打ってくるが……


すべてチョコレート魔法が弾き返し、はたき落とし、跳ね飛ばした。


やがて私は、ヘンリックくんを閉ざす檻の近くまで到着した。


ぐいーんと伸ばしたチョコレート・ハンドの先端を変形して、チョコレート・ナイフを作り、ヘンリックくんの喉元へと突きつける。


「これで決着ですね?」


「……」


ヘンリックくんが悔しそうな顔をする。


「それまで!」


と、ユズナさんが宣言した。


私の勝ちである。






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