第1章11話:チョコレートは美味しい

「以前から聞きたかったんだが、それ、どういう魔法なんだ?」


チョコレート魔法のこと?


うーん。


人に説明するのは難しいな。


私自身は、この魔法について、そこそこ理解は深まっているが……


他人について説明するとなると、少し難しい。


チョコレートそのものが、この世界に存在してないっぽいしね。


私は言葉を選びつつ、言った。


「そうですね。このチョコレート魔法は、いわばお菓子の魔法です」


と、私は説明した。


クレアベルは困惑を示す。


「お菓子……?」


「はい。チョコレートというお菓子があって、それを液体状えきたいじょうにしたり、あるいは固めたりしながら利用しているんです」


私は、手のひらを上に向けて。


そのうえに、小さなチョコレートを一つ、取り出した。


それをクレアベルへと差し出す。


私は告げる。


「食べてみてください」


「え?」


「言った通り、お菓子ですから。美味しいですよ」


「……」


クレアベルは明らかに混乱していた。


ただ、考えてもわからないと思ったのか。


とにかく、私の手のひらのチョコレートを食べてみることにしたようだ。


クレアベルがチョコレートを口に放り込む。


「もぐもぐ……んん!!? なんだこれは!? めちゃくちゃ美味い!?」


「はい。ほろ苦い甘さで、美味しいでしょう」


「ああ! こんな美味い菓子は食ったことがないぞ!? いや、これ魔法だよな? 本当に菓子なのか!?」


まだ菓子だと信じられないようだ。


まあ無理もないか。


お菓子を作る魔法なんて聞いたことがないだろうしね。


「お姉ちゃん! 私もソレ欲しいー!」


とアイリスがせがんできた。


「ああ、はいはい」


と私は言ってから、もう一つチョコレートを作ってあげた。


それをアイリスに渡す。


アイリスは口に運んで食べた。


「もぐもぐ……ふおおおお!!? なにこれなにこれ! 美味しいー!!」


アイリスが上機嫌でぴょんぴょんと飛び跳ねる。


元気な妹だ。


私は和やかな気持ちになる。


「ま、まあ百歩ゆずってお菓子だとして……」


クレアベルがそう前置きしてから、尋ねてくる。


「それがどうして魚をあみになる? なぜ菓子でりょうができるんだ?」


「チョコレートは全てを解決するからです!」


「え?」


「チョコレートは、偉大なのです!」


と私は力説する。


「そ、そうか……お前の菓子は、偉大なんだな」


とクレアベルは言う。


さらに続けた。


「……まあ、お前みたいな天才の考えることはわからん。理解しようとした私が間違いなのかもしれんな」


クレアベルは、考えるのを放棄したように、笑う。


私は、天才じゃないと思うんだけどなぁ……。






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