第1章9話:魔法の練習2

とりあえず水魔法を試してみよう。


さっきと同じ要領でいいんだとすると、難しくはない。


私は火球があらわれるのをイメージしたときと同様のイメージで……


手のひらの上に水球が現れるイメージをした。


すると。


(おお……!)


水球の生成に成功する。


魔法って面白い!


私は興奮で、心がワクワクした。


もっといろいろ試してみたい。


この水球……凍らせたりできないかな?


とりあえず、やってみよう。


……結果。


できない。


なんでだろ?


火や水とは違うのかな?


うーん。


とりあえず。


(チョコレート的な思考をしてみようか)


たとえば。


水を凍らせようと思うんじゃなくて。


チョコレートを凍らせると思ってみよう。


チョコレートを凍らせるといえば。


チョコアイス。


ああ。


チョコアイス、食べたいね。


食べたい。


食べたい。


ぬおおおおおおおおおおおおおお!


「……!」


私は、魔法をイメージした。


すると。


水球が、氷の塊へと変化する。


まるで透明感のあるクリスタルのような氷が、手のひらのうえに浮かんでいた。


(やったー! よくわかんないけど成功した!)


氷魔法だ!


今回の実践で、一つの教訓を得たね。


チョコレートは全てを解決するということ。


さすがチョコレートである。


と、そのときだった。


「な、なにしてるんだ? セレナ?」


クレアベルが、驚いた様子で尋ねてきた。


私は言った。


「あ、ごめんなさい。暇だったから、いろいろ魔法を試してました」


「そうか。……それ、氷か?」


「え? えっと、はい」


「まさか、氷魔法を習得したのか?」


「たぶんそうだと思います」


氷を生成できたんだし、習得した、と言ってもいいよね?


するとクレアベルが、本当に驚いたように言った。


「氷魔法は、私でも習得できないような魔法だぞ?」


「え……そうなんですか?」


「ああ、訓練で習得できる水魔法や火魔法とは違い、氷魔法は、よほどセンスがないと習得できないとされている」


クレアベルいわく。


氷魔法は上級魔法の一つであり、魔法における高い素質がないと使えない。


実際に、習得している人間も限られるという。


ちなみに氷は冷たい飲み物を造ったりするのに用いられるため、氷魔法が使えることは、一芸になるし、カネになるのだそうだ。


「それを、こんなあっという間に習得してしまうなんて、お前は本当にすごいな」


「褒めすぎですよ。習得できたのは偶然です」


私は答える。


実際に、ウソでも謙遜でもない。


本当に偶然、習得できただけだ。


いわばチョコレート魔法によるゴリ押し。


それでなぜ習得できるのかも、正確に分析できていない。


「偶然であれ、なんであれ、習得できたのなら実力さ」


クレアベルは微笑み、述べる。


「以前から思っていたことだが……お前には、天賦てんぷの才が宿っているのかもな」


「天賦の才……」


「ああ。神様から与えられた才能のことだ。お前には他者より抜きんでた何かがある。薄々感じていたことだが、今はっきりと確信したよ。私は、お前の将来が本当に楽しみだ」


「えっと……あはは」


苦笑いをする。


チョコレート魔法の意外性に助けられているだけで……


私に才能なんてないと思うよ。


たぶん。




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