第1章7話:クレアベル視点

<クレアベル視点>


セレナとアイリスに教育を始める。


最初は、腕立て伏せや腹筋で身体づくりをさせようとした。


が……2人ともロクにできなかった。


筋トレをするための筋肉が、そもそも無かった。


だからまずは、少し重い荷物を運ばせたり、ランニングをさせたり……


めちゃくちゃ軽い石のダンベルでトレーニングさせて、基礎筋肉を身に着けさせることにした。


そして。


1ヶ月後―――


2人はようやく、まともに腕立て伏せや、腹筋、背筋ができるようになった。


そこからは一気に筋トレの幅も広がって……


3ヶ月が経つころには、


腕立て伏せ50回、


腹筋200回、


背筋200回


……などを、連続で出来るようになった。


これぐらい身体が出来上がってきたなら、もう剣術を教え始めても大丈夫だろうと判断する。


クレアベルは、2人に木剣を持たせた。


剣術の基本を教える。


「剣は、腕で振るのではなく、背中で振る。特に、重心と体幹を意識して、剣を振ってみると、力が効率的に伝わるぞ」


「じゅーしん? たいかん?」


アイリスが首をかしげる。


……しまった。


また、わかりにくい言葉を使ってしまったと、クレアベルは反省する。


昔、クレアベルは軍で隊長をしていたことがあったので、難しげな言葉遣いが板についてしまったのだ。


しかし。


「ふむ、なるほど」


とセレナは理解し、納得している。


そして、腕だけでなく全身を使って剣を振る動作を、試行しはじめていた。


(やはりセレナは、賢いな)


クレアベルは、薄々感じていたことだった。


セレナの知能の高さ。


子どもだとは思えないほど利発で、物分かりが抜群に良い。


まだ7歳なのに、既に大人のような落ち着きと良識を持っている。


クレアベルがアイリスの前で、難しい言葉や、難しい概念をついペラペラと口にしてしまうのは、セレナには普通に通用したからでもあった。


セレナを基準に考えると、いろんなことがおかしくなってしまう。


(自分が子どもだったころに比べると、段違いだな)


クレアベルの7歳時なんて、もっとヤンチャだった。


いや、15歳ぐらいまでは荒れてたかな。


血の気が多く、ギラギラして、力を持て余していたように思う。


16歳からは軍に入ったので、品性や態度を鍛え直されたが……


「ふっ!!」


セレナが勢いよく剣を振る。


コツを掴んだか、さっきより安定した素振りになっている。


クレアベルは微笑んだ。


(セレナには間違いなく、抜きんでた才がある。将来、どんなふうに育つか楽しみだな)


セレナの将来性を予期して、クレアベルは期待に胸を膨らませるのだった。



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