第1章6話:教育

歳月が流れる。


クレアベルのもとで、すくすくと育った私は、7歳になった。


山小屋にある鏡を見る。


私は黒髪セミロング・黄色の瞳をしている。


全体として日本人っぽい見た目だ。


一方、アイリスは5歳になった。


クレアベルゆずりの赤髪と、黄色の瞳である。


なお、髪型はショートヘアだ。





ちなみに年齢についてだが……ある重要なことがわかった。


なんと、この異世界では、魔力を持つ人間は5000年以上も生きるらしいのだ。


つまり寿命は5000歳。


長寿というレベルではなく、寿命なんて有って無いようなものである。


私も、もちろん魔力を持っているので、5000年以上の寿命というわけだ。


まあ、寿命で死ななくても病死や戦争で死んだりすることもあるし……


盗賊や魔物も存在するので、決して死亡率が低いわけではないだろうけどね。






―――さて。


ある日。


春の終わりごろ。


晴れた日の昼。


私たちはクレアベルから、山小屋の裏手の空き地に呼び出された。


我が家の裏庭は半径50メートルぐらいの、土の広場になっている。


クレアベルは言った。


「今日から、お前たちにさまざまな教育をおこなっていこうと思う」


「教育……?」


私は首をかしげた。


クレアベルはうなずいて、言った。


「現在は戦乱の時代だ。お前たちはこれから、いくさや、魔物がはびこる、この厳しい世界で生きていかなければいけない。そのために必要な知識、戦闘技術などを、お前たちに教えたいと思う」


クレアベルは一拍置いてから、続けて告げる。


「ついでに、この山での生活に必要な、狩猟、漁労、採集などの技術についても教授しよう。私たちは自給自足が基本だからな。最低でも、私の力を借りずとも、独力で生活できるぐらいにはなってもらうぞ」


「ん~~、よくわかんない!」


と、アイリスが難しい顔つきで言った。


クレアベルは肩をすくめ、苦笑する。


「さすがに話が難しすぎたか」


そりゃそうだ。


狩猟とか漁労とか、5歳児のアイリスには、言葉の意味すらわからないだろう。


私は指摘する。


「お母さんは、普段から使ってる言葉も難しいですよ」


私は、もう異世界の言語を難なく操ることができるようになっていた。


ちなみにクレアベルのことは「お母さん」と呼称している。


私は告げた。


「アイリスは結構、理解できてないことが多いです」


クレアベルは頭をかきながら、言った。


「反省しておこう。……しかし、そういうお前は、私の話をよく理解できてるように思うが」


「……」


私は前世の知識と教養があるからなぁ……。


もちろん完全に初見の言葉には対応できないが、脳みそが21歳相当なので、クレアベルの使っている言葉も、なんとなく意味が推測できるだけだ。


ちなみに、私が転生者であることは、クレアベルにも、アイリスにも伝えていない。


「とにかくだ」


と、クレアベルは一つ咳払いをしてから、言った。


「"生きるために必要なことを学んでもらう"のだ。こういう言い方ならアイリス、わかるか?」


「うん、わかるー!」


と、アイリスが元気よく返事をする。


クレアベルは微笑んでから、


「じゃあまずは、身体づくりからだ。運動、訓練をして、筋肉と魔力を鍛えよう」


そう告げた。


私たちに、訓練メニューを伝えてくる。


この日から、私たちの訓練と教育が始まったのだった。




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