第二章:忍び寄る影と囁き

 閉ざされた部屋の扉が開かれる瞬間は、アルバートにとって新たな謎への入り口であった。

 地元の鍛冶屋の助けにより、かつては固く閉ざされた錠前が外され、

 重い扉が開いたとき、そこからは埃っぽい空気とともに、過去の時代の残り香が漂ってきた。

 室内は、まるで時間が止まったかのように静まり返っており、アルバートはゆっくりと中へと足を踏み入れた。

 部屋の中央には、古びたヴァイオリンが並べられており、それらからはかすかな音楽の残響が感じられるようだった。

 壁沿いには本棚があり、そこには何十冊もの日記が整然と並んでいた。

 アルバートは手に取った日記をパラパラとめくりながら、伯爵の人生に触れた。

 恋愛、喜び、悲しみ、そして失われた愛。

 日記の中で、伯爵が若い女性と激しく恋に落ちたこと、その女性が突然の非業の死を遂げたことが記されていた。

 それ以降のページには、伯爵の心の闇と、亡き恋人への憧憬が連綿と綴られていた。

 夜が更けるごとに、アルバートは伯爵の心の内をより深く理解するようになった。

 そして、ある夜、再びその音楽が聞こえ始めた。

 今度はよりはっきりと、まるで部屋の中で誰かが演奏しているかのように。

 アルバートは心臓の鼓動を抑えながら部屋に向かうが、そこには誰の姿もない。

 ただ、ヴァイオリンの持ち手が温かく、最近使われた痕跡があることに彼は気づいた。

 静寂の中、アルバートはふと薄ら笑いを耳にする。

 それは部屋の隅から聞こえてきたようで、アルバートは恐怖を感じながらも、その音の源を探した。

 しかし、そこには何も見つからず、ただ、亡き伯爵とその恋人の過去だけが、部屋に漂う哀愁とともに残されていた。

 アルバートは、この謎を解き明かすためには、日記を最後まで読み進め、屋敷が隠している秘密の全てを暴かなければならないと決意する。

 彼は不穏な囁きと影に怯えながらも、真実を求めてさらなる調査を続けるのだった。

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