第2話 譜面台

桜の花びらがはらはらとちっていく。仮入部期間だが、すでに入部届を出した1年生が10名いた。

クラリネットパートにも入部届をだした1年生の穂香がいた。

「千春先輩のSaxソロ素敵でしたよね~、クラリネットであんな音色出せたらなー。」

1年生の穂香が真紀の顔をのぞきこんでくる。

「そうか、穂香ちゃんは、定期演奏会聴きにきてくれてたんだね」

「そうです。本当は別の中学校行く予定だったんですが、四中が全国大会出場して、こちらへ決めたんです」

「そうだったんだー、じゃあ、全国へいってなかったら、穂香ちゃんはうちにこなかったんだね?」

「先輩、いじわるはやめてくださいよ。」

「まーまー、もし私も穂香ちゃんと同じ立場だったら、そうしてたかもなー」

「由紀ちゃんも全国大会めざしていたの?」

「小学校は、県大会まで行ったけど、疲れてこちらへきました」

「由紀先輩、コンクール目指しじゃなかったんですね!」

「さっ、練習はじめよ!」

「きりかえうまー、さすが部長!」

穂香と由紀の笑顔がはじける。教室は4月にも関わらず蒸し暑く、汗がにじみ出てくるようだった。

クラリネットを鳴らすリードを口にくわえ、楽器とつなげる。

今日の楽器の状態はどうか、楽器は素直で体調が悪いとすぐにご機嫌ななめになる。

タ~りらりらりらりっ、由紀の柔らかいクラリネットの音が響く。

由紀のクラリネットは講師の先生に将来は音大へ行くようすすめられる程の腕前だ。音色技量ともに、誰もが認めるクラリネット奏者だった。

「ではパート練習はじめまーす」

今日は由紀がパート練習当番だった。

「じゃあ32小節から・・」

「由紀先輩・・」

ガシャンという音とともに、譜面台が倒れ、由紀は真紀の身体へ倒れこんだ。

真紀はとっさに、楽器を置き、由紀を受け止めた。

「由紀・・」

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