第2話 起死回生へ
――府中競馬正門前駅。
30分くらいかけてその駅の改札口にやってきた僕は、金髪ボブカットの可愛いギャルが壁際に座り込んでいるのを発見した。
ので、
「――
と声を掛けた。
すると、
「あ……ゆーくん」
ギャン中女子大生こと由希さんが、めっちゃ元気なさそうに僕を見上げてきた。
200万の損失がスリップダメージのように精神を蝕んでいるのかもしれない。
「200万、残念でしたね」
とりあえず気を遣って励ましておこう。
「いや……210万」
「え?」
「200万じゃなくて、210万負けてるの……」
「……ん? 正式には210万ぶっ込んで負けた、ってことですか?」
「ううん……200万取り返そうと思ってまだかろうじて口座に残ってた10万を最終レースの三連単に1点賭けしたら追加で負けた」
「ギャン中の鑑過ぎる……」
負け分を取り返そうとして更に傷口を広げるのはさすがだ。
「……由希さん、さすがにもう自重しましょう」
「でもまだアコムの口座にお金が……」
「それは手を出しちゃダメ!」
消費者金融を頼ろうとすな!
「ったく……さあほら、とりあえず寄り道せずに僕の部屋まで帰りますよ」
「うん……」
由希さんは壁に立てかけていたリュックを背負う。
ネカフェ暮らしのホームレスだから荷物はそれで全部らしい。
そんなわけで、僕が電車賃を出して移動を開始。
「あ、パチ屋……」
僕が1人暮らし中の街に降りたところで、由希さんが駅前のパチンコ店に目を……。
「ねえゆーくん、ガイアがあたしに囁いてるよ……競馬のみならずパチスロも打てって」
「おいこら!」
パチ屋に向かおうとする由希さんの手を引っ張って制止!
「離してゆーくん! 210万を取り返さなきゃいけないの!」
「パチスロで210万なんて無理ですから! 大体資金ないでしょ!」
「ゆーくん……(うるうる)」
「たかろうとすな!」
……可愛い皮を被っているだけのどうしようもないギャン中め。
こんなんだから僕以外の知人全員に距離置かれてるんだよ……。
「1000円だけ……1000円だけでいいから……!」
「……1000円だけですか?」
「うん……」
引き続き、うるうるな瞳が僕を捉えてくる……。
はあ……僕はなんだかんだ結局、これに弱いんだよなぁ。
「じゃあまぁ……1000円だけなら」
「――ありがとー!!」
こうして由希さんはパチを遊び始め――
「――きちゃー! 俺に力を貸せ! ユニコォォォォォォォォォーン!!!」
……機動戦士の台が回りに回って、なんか最終的に3万ほど勝つことになった。
ギャン中の底力すげえ。
「――やったー! まさかの資金ゲットー! あ、1000円返しとくね♪」
「あ、はい……」
外に出たところで、由希さんは換金した約3万をすぐに最寄りのATMに入れていた。
「ひひひ、これで今夜の競馬資金も出来たぞー!」
「……まさかナイターもやるつもりですか」
「あたぼうよ! 一発逆転ファイナルレースで200万取り返すんよ!」
本当にどこまでもどこまでも、この人はギャン中だなと思った……。
そんなわけで帰宅後、僕らは土佐の国の競馬ライブを眺め始めることになる。
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