単勝オッズ1倍台の馬の複勝に全財産ぶっ込んで負けたギャン中女子大生先輩を居候させることになった
新原(あらばら)
第1話 ぶっ込み失敗
【た す け て】
大学1年もぼちぼち終わりが見えてきた2月中旬の日曜日。
自宅マンションの一室でゲームをしていた僕のLINEにそんな切実な4文字が届いたのは、午後4時くらいのことだった。
送り主は、同じゼミの1個上の先輩である藤田
はて、どうしたのだろうか。
「もしもし、由希さん?」
気になった僕は、LINE通話をかけた。
すると、
『あ……ゆーくん?』
由希さんが元気なさげな声で応答してくれた。
『ヤバいよゆーくん……あたしマジでヤバいかも……』
「何かあったんですか?」
『……前が壁になって……届かなかった』
「え?」
……前が壁?
「前が壁ってなんですか……?」
『最後の直線でさ……あたしの希望を乗せたお馬さんがどん詰まって4着フィニッシュだったんだよ……』
「あー……競馬の話ですか」
由希さんはギャン中だ。
一番好きなのは競馬であるらしい。
「ダメだったんですか?」
『ダメだった……コイツは鉄板だろって思った単勝オッズ1倍台の馬の複勝に厚く賭けたら4着だった……』
複勝って、一番当たりやすい馬券だっけか。
買った馬が3着までに入れば当たりなんだよな。
でもそれが外れてしまったらしい。
「単勝オッズ1倍台の馬って、要は一番人気ですよね? そういう馬の複勝オッズって基本1.1倍じゃないですか? 旨味ないところに賭けましたね」
『だって……鉄板だと思ったんだもん……』
「でも4着だったんですよね?」
『うん……前が壁で終わった……』
由希さんは盛大にため息を吐き出していた。
『クソ……なんであのジョッキー最後インに入ったのかな……外ぶん回せば絶対届いたはずなのに……』
恨み節をブツブツ呟いてるな……。
「ちなみにどれくらい賭けたんですか?」
『……200万』
「え」
『貯金全部ぶっ込んだ……』
「すみません、バカですか?」
ハイリスクローリターンにもほどがある。
1.1倍に200万って、当たっても20万の利益にしかならない。
いや、たかだか1分か2分預けて20万の配当が来るのは間違いなく美味しいんだけどさ、でも外れた場合のリスクがデカ過ぎる……。
で、そのデカ過ぎるリスクを真っ当に食らってしまったバカが通話口の向こうに……。
『うわあああん……あたしが去年せっせと溜めたバイト代全部吹っ飛んじゃったよぉ……』
「ご愁傷様です」
『これでネカフェ暮らしのお金もなくなったからもうおしまいだぁ……』
この人競馬にお金を注ぐために契約してたマンションを解約して今はやっすいネカフェでホームレスしてたんだよな……。
『助けてゆーくぅん……』
「…………」
しくしくと木霊するギャン中の嗚咽。
自業自得過ぎて同情はしないけど……どうっすかな。
まぁ、由希さんは可愛いから来て貰えるなら来て貰ってもいいか……。
「じゃあ……路頭に迷うくらいならお待ちしてます」
『――やったー! 好き好きゆーくん愛してるー!』
「ちなみにここまで来る電車賃はあるんですよね?」
『あ……ないや』
……迎えに行くことになった。
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