第28話 高2 ・ 7月

7月の水曜日。

いつもの4人で弁当を食べるべく、7組に向かった。


新生徒会長になった梅谷紘一から挑戦的な視線を受けた。

落ちろ~!って祈ったんだけど・・・残念。


そんでもって、まだ、悠里のことを狙っているらしい。

先月、デートしたことを自慢してやりたいわ。


4人で弁当を食べているとユイカがそう言えばって尋ねてきた。

「金吾、大学生は夏休み2か月くらいあるの?

お姉さんはどう過ごしているんだ?」


ごくごく自然に問われたので、何の気なしに答えてしまった。

「7月20日くらいから2か月休みらしい。

去年はバイトが多かったけど、確か、軟派サークルの合宿とか、

下僕どもと日本海ツアーとかに行ってたな。」


ユイカがニヤリと笑みを浮かべた。

「ふふふ。じゃあ、その時は金吾の家で宿題合宿だね!」


「し、しまった!謀ったな!」

「嬉しいくせに!ほんとに、わざとらしい。」


ユイカとの恒例のやり取りに、雄太郎が慌てて乱入してきた。

「おい、金吾。今回は俺も行くからな。

俺無しでユイカと夜を共にって、

そんなことしたらお前でも、殺すぞ。」


「おいおい。この前は隣の部屋で寝ただけだぞ。」

「パジャマ姿を見たんだろが、ゴラ~!

俺より先に、見やがって!

並んで洗い物したんだろうが~!

俺より先に、ユイカの手料理喰いやがって~!

う~!」


俺を嚙みつかんばかりに睨みつける雄太郎の耳元に、

ユイカが口を近づけていった。

「アンタはもっと凄い姿、見たでしょ。」


「いや。まあ。そうだけどよ・・・」

雄太郎は真っ赤になって、うつむいてしまった。


いやいやいやいや、俺と悠里に聞こえないようにしてくれよ~!

いや、雄太郎が初々しくって面白いんだけどさ。


生々しいんだよ!


夏休みになってすぐ、お姉が下僕どもと日本海海遊びツアーに出かけたので、

俺の家で合宿が行われることになった。

いつもの4人で夏休みの宿題を集中してやることになったのだ。


最寄り駅に迎えに行くと、やはり雄太郎がスマホを見ながら待っていた。

「おっす。」

「おう、今日はよろしくな。」

「イチャイチャ、禁止だからな。」


「別にいいじゃん。

俺たちがイチャイチャしたら、お前らの関係だって一気に進むぜ。」

「いやいや、自分の家で他人がイチャイチャするなんて嫌すぎるだろ?」


「むむむ。確かにそうだな・・・

しょうがない。ほどほどにしておくぜ。」

「イチャイチャするんか~い!」


時間通りにやってきたユイカにも

「イチャイチャするんじゃないぞ。」

って釘を刺した。


ちゃんとブスッっと刺したんだけどな。


俺ん家の台所で、雄太郎とユイカが並んで夕食を作っている。


互いの家に行って、親には挨拶済だけど、料理を一緒にするのが初めてらしい。

二人ともあんまり料理をしないので、段取りが悪く、見ていていらいらする。


それに俺が監視していなければ、すぐ、イチャイチャし始めやがる。


1時間近く前に一番風呂に入った悠里が上がってきた。

「・・・まだ、出来ていないんだ。」

隣に腰かけた悠里が俺の耳元で囁いた。


お風呂上り特有の甘い匂いがたまらない。


「すぐ、脱線して、イチャイチャしようとするんだ。」

「初めての二人での料理だからしょうがないかな~。」

「俺の家じゃない所でやってほしかったわ。

それに、ユイカの料理だよ?

俺は悠里の料理が食べたかったよ。」


囁き声だったのに聞こえてしまったらしく、

ぐりんと雄太郎とユイカの顔がこっちに向いた。


息ぴったりで、怖い。


「悪かったな!」

「ユイカの料理をバカにするんじゃねえ!」

「はい。すいません。」


夕食が終わって順番にお風呂に入っていった。


その間、残された3人は宿題を頑張っていた。

夜遅くまで4人で、桃鉄で勝負してから、俺は雄太郎と寝ることになった。


電灯を消すと、雄太郎が話し出した。

「なあ、金吾。俺がユイカと付き合えたのはお前たちのお陰だ。

感謝しているんだぜ。」

「それは雄太郎が頑張ったからだろ。」


「それはそうだけど、一番大事なのはきっかけで、それはお前がくれたんだ。

だから、お前たちも上手くいってほしいんだ。」

「ありがとう。」


「お前は悠里のこと、好きなんだろ?

悠里だって、お前のことが好きなんだぜ。

分かっているだろ?」

「・・・そうかな?うん、そうだったら嬉しいなって思っている。」


「だろ?もう、決めろよ。お前から行くんだ。

じゃないと、悠里に告白してくる奴がいっぱい現れるぞ。

もしかしたら、タイミングが悪くて、弱っている悠里がつい靡いちゃうかもしれないぜ?

分かっているのか?

悠里みたいないい子がお前を気に入ってくれることは、

もうないかもしれないんだぜ?」


「そうだよな・・・

悠里は紗季みたいなことはしない、大丈夫だって思う。

だけどさ、2年前の俺に、

「紗季は高校で出会った奴に一目ぼれして、お前はフラれるぜ。」

って伝えたら絶対に信じないよ。絶対に。

だけど、それが起っちまったんだ。

まだ、怖いんだよ。あんな目にあうのが。」


俺は心の奥底にこびりついて離れない思いを雄太郎に伝えた。


「悠里がそんなことするワケないだろ?

・・・まあ、お前が信じられないんだったら、しょうがないけどさ。

でも、そんな女に二人続けて出会うなんて、ジャンボ宝くじの1等より難しいと思うぜ。」


「俺はジャンボ1等当たるから!」

「おうおう、それは信じているんだ。都合がいいんだな。

はあ。

まあ、後悔ないように頑張るんだぜ。」

「ありがとう。お休み。」


★★★★★★★★★★★★★


次の日、近所の公園で4人の戦士が向き合っていた。


鮫島金吾!須藤雄太郎!木岡ユイカ!熊谷悠里!


4人はおもちゃ屋さんで買った大きい水鉄砲を構えていた。


3人すべてが敵、水道栓で水を補充、勝ち負けは無し、

時間は10分というルールだ。


スタートするとやはり、雄太郎とユイカがキャッキャッ言いながら撃ち合い始めた。


ならばと俺は悠里を狙って、悠里は俺を狙って撃ち合った。


顔に当たると意外と衝撃があって、鼻や口に入ってあわわってなってしまった。

俺たちもキャーキャー言いながら撃ち合ってみんなびしょびしょになってしまった。


当然、ラッシュガード着ていたから、エロイ格好には成らなかったけど、

ビショビショの悠里ついでにユイカも珍しくて可愛かった。


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