第27話 高2 ・ 6月
たくさんの★、レヴューありがとうございます。
お陰様で、週間16位になりました。
この後は、夏と秋に幼なじみたちの話があり、冬に終わる予定です。
高2になった金吾くんたちをお楽しみください。
また、作者のフォローをいただきました。ありがとうございます。
2/10 16時から異世界ファンタジー
「親に、勇者パーティの仲間に、巫女である恋人に、
捨てられた俺は魔王と魔物の大群をたった一人で殲滅した。
そして俺を捨てた奴らに復讐するべく、旅に出た。」
を投稿します。
笑うところは全くないと思いますが、もしよければお読みください。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
6月、体育祭が行われ、俺は1年の時と同じく、1500メートル走に出ることになった。
次の次なので、入場門に向かっていると、
誰かを捜している悠里がいて、俺に気づくと笑顔になって手を振ってくれた。
「金吾、頑張ってね。」
「ありがとう、がんばるよ。」
悠里が差し出してくれた手にバチッとタッチすると後ろから声がかかった。
「悠里、他のクラスの奴より、同じクラスの俺を応援しろよ。」
ゴールデンウィーク前に悠里にフラれたってガセネタが流れた梅谷紘一が立っていた。
「うん。梅谷くんも頑張ってね。」
梅谷を応援する悠里の言葉に、やっぱりムカムカした。
「ああ。7組のために頑張るよ。」
悠里に応えてから、梅谷はわざわざ、俺の前に立ちふさがった。
「梅谷って走高跳のエースって聞いたような気がするけど。」
「そうだよ。」
「走高跳って短距離の方が・・・」
梅谷は俺の言葉を遮り、自信満々な笑顔を浮かべた。
「1500メートルだって得意だよ。
勉強だって、スポーツだって、全部、勝ってみせるさ。」
・・・そういやこの前、話しかけられたんだ。
5月の中間試験が終わった直後だった。
「鮫島って中間試験どうだった?平均何点だった?」
友達でもないのに、何なんだって思いながらも、
他人に誇れる数字だった(悠里には負けたけど)ので、教えることにした。
「はちじゅう・・・」
「俺は96点だったんだぜ!」
勝ちが分かると俺の答えを遮り、ふふんと鼻で笑い立ち去って行ったんだ。
何なんだ、あいつは!
雄太郎によると、今回も成績は学年トップで、
しかもクラスではリーダー格として普通に頑張っていて、
雄太郎もユイカも悠里も普通に仲がいいらしい。
なのに、俺に対してだけは・・・
つまり、悠里を狙っているからだ、くそっ。
腹が立ったので、梅谷の野郎に嫌がらせをすることにした。
「なあ、悠里、俺はこの1500メートルで1位になるからさ、
体育祭終わったらご褒美デートしようよ。」
真正面からのお誘いに悠里は驚きの声をあげた。
「ええっ!」
「何言ってる?終わったら7組で打ち上げがあって、
悠里は打ち上げに来るって決まっているんだ!」
「一人くらい、キャンセルしてもへっちゃらだろ?
仲がいい友達が1位になったら、祝福してくれるよな!」
「じゃあ、俺が1位になったら、俺とデートしてくれ!」
「ええっ!」
梅谷も誘いやがったから、冗談でしょうって、悠里は俺たちの顔色をうかがうけれど、俺も梅谷も悠里を見つめたまま、じっと答えを待った。
「・・・今日は打ち上げに行きます。約束は破れないからね。
あと、デートは無し。無しだからね!」
そう言って、アワアワしながら悠里は逃げ去ってしまった。
正直、勝ち目しかない!って思っていたから物凄くがっかりしたよ。
でも、梅谷も露骨にがっかりしていた。
コイツ、少人数でも遊びに行ったことがないのに、
どうしてそんな自信満々なんだろうな。
1500メートル走の集合場所にはもう一人、知っている奴がいた。
1年の時、俺と悠里に絡んできたバスケ部のイキリ野郎榎本貴斗だ。
2学期の中間試験のまさに直前、榎本は、俺が夜木紗季に、
悠里が松久保琢磨に、入学式の日にフラれたことを暴露しやがったんだ。
だから、榎本が、悠里にフラれたこと、俺に1発でやられたことを暴露し返してやった。
その後の半年、榎本はクラス内でボッチになっていたけど・・・
それに、榎本は去年、リレーに出ていたハズ。
俺に復讐に来たのか?
それとも、純粋に勝負を挑んでくるのか?
16人がスタートラインに並んだ。
俺は運悪く、大外スタートだった。
ピストルの音とともに飛び出したのだが、
先頭でカーブに入ったのは榎本だった。
2番手は梅谷、3番手が俺だ。
くそっ。
後ろ15人はやる気がないのか、実力がないのか飛ばしていない。
1500メートルはしんどいからね。
早くも勝利の行方は3人に絞られてしまったか。
抜く際に周回遅れがいたら邪魔なので、
早いうちにスピードアップしてみたら、
梅谷は腕を少し横に振り、さらに少し外に膨らんで邪魔をしてきて、
抜くことができなかった。
くそっ、セコイ奴め。
俺は今も2日に1日、5キロから10キロを全力で走っている。
また、一定のペースで走る日があれば、
別の日はスピードを激しくアップダウンさせながら走っている。
まあ、トラックを走ることはないけどな。
ストレートの度にスピードアップしてやって、まずは梅谷とスタミナ比べだ。
1周200メートル、3周目で梅谷の息が荒くなってきた。
4周目のストレートでぶち抜こうとしたら、梅谷の野郎、
よろけたフリをして、体を寄せてきやがった!
ふふん!
もっともっと大回りして、野郎をぶち抜いてやったよ。
一瞬だけ、梅谷と目が合って、その負けを認めたカンジに溜飲が下がったよ。
そして、先頭の榎本を追いかけていく。
あと1周の鐘が鳴らされた時、俺は榎本の後ろぴったりに追いついていた。
榎本の息は荒くなっているけど、
俺も序盤のスピードのアップダウンが効いて、膝にきていた。
それでも、絶対に勝つ!とスピードを上げたんだけど、
榎本の野郎も負けじとスピードを上げてきやがった!
くそっ!
しんどい!
抜く!
榎本!
勝つ!
最後の直線になって、ようやく榎本と並んで全力でゴールテープまで駆け抜ける。
「金吾~!」
「頑張れ~!」
「勝て~!」
雄太郎、悠里、ユイカの声が聞こえたから、足がもうひと踏ん張りしてくれた。
2位に落ちた榎本はくそっと呟いて、俺から離れていった。
・・・なんだよ、榎本。正々堂々と勝ちに来てやがったよ。
「おい、鮫島!こんなことで俺に勝ったと思うなよ!」
捨て台詞を吐いた梅谷紘一は大きく遅れた3位だった。
「・・・別に、誰にだって得意、不得意があるだろ。」
「足の具合が悪くなっただけだからな!」
「そうか。ひどくないといいな。」
俺に抜かれてやる気が失せただけのくせに。
まあ、どうでもいいけど。
我が3組でも打ち上げが企画されていて、直之に誘われたんだけど、
やっぱりカラオケだったから逃げ出したよ。
家に帰って二人分の夕食を作っていたら、ラインが入っていた。
悠里だ!
『1500メートル走、1位、おめでとう!\〈^_^〉/
大接戦だったから、叫んじゃったよ。
でも、もうあんなこと、人前で言ったらダメだからね!
絶対にダメだよ!
約束してくれるなら、代休の月曜日デートしてあげる。』
ぬはははは!
ごちそうさまです!
おい、梅谷、このラインをスクリーンショットして送ってやるよ!
うん?あれ?連絡先知らないや。残念。
★★★★★★★★★★★★★
月曜日、ポートアイランドにある動物園に行くことになった。
まずは、ワンちゃんとの触れ合いだ。
悠里は寝っ転がっている大型犬をわしゃわしゃと撫でていた。
「可愛いね~、いい子だね~。
・・・ねえ、金吾。ワンちゃん、飼ってよ。」
「無理だよ。自分で飼いなよ。」
「いじわる。
・・・しょうがない。写真、撮ってくれる?」
「はいはい。」
ふにゃりと笑う悠里がナデナデしたり、抱きしめたりする写真を撮った。
ワンちゃんと触れ合う悠里はいつもより幼いカンジで可愛かった。
飼育員さんが通りかかるとワンちゃんたちがついて歩くのを見て、
羨ましそうにしているのも可愛かった。
次は猫ちゃんとの触れ合いだ。
悠里は丸くなって寝むっている猫ちゃんを優しく撫でていた。
「可愛いね~、いい子だね~。
・・・ねえ、金吾。猫ちゃん、飼ってよ。」
「無理だよ。自分で飼いなよ。」
「いじわる。
・・・猫ちゃん、抱きしめてもいいのかな?」
「えっと。ダメみたいだね。」
「・・・しょうがない。じゃあ、私の膝に乗るように誘導してよ。」
「悪いけど、無理。」
「金吾って役立たずでしゅね~。じゃあ、写真、撮ってくれる?」
「はいはい。」
ふにゃりと笑う悠里が色んな猫ちゃんをナデナデする写真を撮った。
その次はウサギさんだ。
悠里はじっとしているウサギさんを慎重に撫でていた。
「可愛いでしゅね~、毛がほんとに、細くてサラサラで気持ちいいでしゅね~。
・・・ねえ、金吾。ウサギさん、飼おうよ。」
「だから、無理だよ。自分で飼いなよ。」
「いじわる。
・・・しょうがない。写真、撮ってくれる?」
「はいはい。」
またまた、ふにゃりと笑う悠里がウサギさんをナデナデする写真を撮った。
★★★★★★★★★★★★★
それから色んな動物を見て回って、お昼ご飯の時間になった。
「金吾、入場券おごってくれてありがとう。」
「いやいや。俺が誘ったんだから。」
「その代わりに、お弁当を作って来たよ。」
待ち合わせ場所でこのやり取りはしていて、
繰り返しになるんだけど、やっぱり甘酸っぱいわ。
「やった!割り勘よりお弁当の方が嬉しいよ!」
「美味しくできているといいけど・・・」
「なんで?今まで、悠里のお弁当はぜ~んぶ、美味しかったよ。」
「大げさだよ。でも、ありがとう。じゃあ、食べようか!」
木目調の楕円型のお弁当箱が3つ、机の上に並べられた。
「2つは金吾だよ。」
蓋を開いたら、色鮮やかなおかずが並んでいた。
玉子焼き、ハンバーグ、ひじき煮、春雨サラダ、アスパラベーコン。
最高に美味しかったよ。
昼からは、フクロウをビビりながら、腕に載せたり、
ラクダの大きさに驚きながら乗ったり、
アザラシに可愛いと言いながらおやつを与えたりと触れ合いを満喫した。
悠里は大興奮していたんだけど、態度に表すと動物たちが驚いちゃうから
必死で我慢している様子が可愛らしかった。
俺は雄太郎に負けないくらいの名カメラマンになったと思う。
だって、可愛い悠里をたくさんスマホに閉じ込めたから。
触れ合いといえば、モモンガを見ようと施設に足を踏み入れたら真っ暗闇だった。
モモンガは夜しか活動しないからね。
ほんの少しの灯が頼りなんだけど、暗いから悠里にそっと近寄ってしまった。
「飛んだ!飛んだよ、金吾!」
「ホントだ!シュパッと飛ぶのな!」
肩を寄せ合いモモンガを見ていると、手の甲がぶつかって、
つい悠里の手を握ってしまった。
悠里ははっと少し驚いたようだったけど、
その手はもつれ合いながら恋人繋ぎと変わっていった。
もう、嬉しくって、嬉しくって真っ暗闇なのに光輝いたかと思ったよ。
まあ、外に出たらすぐ手を離しちゃったんだけどね。
最後にショップに行って一つくらいお土産を買おうかと厳選していた。
悠里は結局、キーホルダーをじっと見ていた。
俺はその後ろで、お姉への貢物のクッキーを持って待っていた。
「ねえ、金吾。この猫ちゃんのイニシャルのキーホルダー、買おうよ。
・・・お、お揃いで。」
キーホルダーを見つめたまま悠里の声が聞こえた。
恥ずかしいのだろう、耳まで真っ赤になっている。
「おす。じゃあ、Kを取ってくれる?」
「ん。」
後ろから伸ばした俺の手のひらに可愛い猫がKとなっている
キーホルダーが置かれた。向こうを向いたままで。
しばらく、悠里は目を合わせてくれなかった。
そのあと、電車に乗って帰ったんだけど、並んで座っているとき、
以前は体が触れないように気を張っていたけど、
今は知らない隣の人と触れるくらいならって
持たれあっていて、またまた幸せを感じたよ。
手は繋がないよう必死に我慢しているけどね。
そして、別れ際。
「これ、プレゼント。」
「可愛い!大事にするね!」
猫が描かれたボールペンを渡すと、悠里は子どもっぽく喜んでくれた。
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