第25話 高2 ・ 4月
4月になって始業式。
どこのクラスになったのか、友人たちはどこのクラスになったのか、
掲示板を見ていたら、突然、腕を掴まれた。
「うぇ~い!金吾は俺と同じ3組だぜ。早く行こうぜ。」
サッカー部のウェイ野郎、大堀直之だった。
「おい、ちょ、待てよ!」
そのまま引きずられ3組に入ってみたら、1年3組同級生が大堀しかいない!
マジか!
ラインで情報収集だ!
『俺、3組。みんなは?』
『残念だったな!俺、ユイカ、悠里、7組!』
『なんで、俺だけ!』
『お前、理系。俺たち文系。分かっていただろ?』
『忘れてた。そうだった。俺、みんなと同じクラス、期待していたよ・・・』
『バカ』
『バカ』
『バカ』
スマホを茫然と眺めていたら、さわやかな挨拶が聞こえた。
「みんな、おはよう!これからよろしくね!」
さわやかな笑顔を浮かべた松久保琢磨が一人で入ってくると、
女子たちの歓声があがって、またかよってゲッソリとした。
結局、我が2年3組に1年3組の同級生は大堀直之、松久保琢磨だけだった。
まあ、直之とは半年前から仲良くなっているんだけどね。
水曜日、雄太郎、悠里、ユイカに誘われたから弁当を持って2年7組を訪問した。
4つの机が合体され、雄太郎、悠里、ユイカが座っているけど、
さらに一人、男子が座っていて、机に弁当を置いている!
誰?なんで?俺はどうしたらいいの?
困惑していたら、悠里が気づいてくれた。
「金吾、こっち!」
「・・・おう!」
困惑していたから、ゆっくりと近づいて行った。
「おい、だから早く退けよ!」
雄太郎が不機嫌な声を出すと、座っていた男子はいやいや立ち上がった。
「ちえっ、俺も仲間に入れてほしいのに・・・ケチだなぁ。
なあ、そう思うだろ?」
奴は俺の目を見ながら言った。
「・・・さあ?どうだろう。」
そいつは身長185センチくらいか、鉛筆のように細長かった。
メガネをかけていて、真面目系のなかなかのイケメンだった。
「早く自分のクラスで友達つくれよ。」
俺に小声で嫌味をいいながら、自分の席に戻っていった。
「・・・なに、あれ?」
「ああ、この学年で成績トップ、陸上部の走高跳のエース梅谷紘一だよ。
・・・俺たちのグループに入りたくてしょうがないらしい。
それはともかく、今日はダメだって言ってるのに、聞かないんだよ。」
「金吾、来週からは走って来なよ!もっと早くね!」
放課後、雄太郎に呼び出された。
クラスが違うとこうなるんだって新鮮な気持ちだった。
「おい、梅谷は悠里を狙っているぞ。」
「えっ?」
「悠里は可愛いし、カレシいないんだ、当然だろ?で、どうすんだ?」
雄太郎は冷たい目で俺を見据えた。
「・・・どうするって。悠里が決めることだろ?」
「ふん!どうなっても知らないからな。」
困惑しつつも、今まで通りの答えを呟くと、
雄太郎は一言吐き捨てて去っていった。
★★★★★★★★★★★★★
新学期早々に実施された実力テストの結果が帰って来たので、
いつものコンビニで悠里と待ち合わせした。
1年の時、中間、期末、実力と6度のテストがあって、結果3勝3敗だった。
とりあえず、ハーゲン代は俺が支払って、イートインに座って、
せ~ので、成績表を見比べた。
俺・19位、悠里・25位。
「やった!勝ったよ!」
「うそ!凄い!19位って凄いよ!」
「まあよ!」
1学年300人弱いて、1年の最初の頃は互いに80番くらいだったんだけど、
ついに20番以内、来たよ!
「金吾はどこの大学狙っているの?」
「まあ、神大だね。無理だと思うけど。」
「無理っぽいけど、行きたいよね。わかる。」
「この学校から行く人いるのかな?」
「浪人入れて1人いるか、いないか、らしいよ。」
「圧倒的な1番じゃないとダメってことか・・・」
「同じクラスの梅谷くんが圧倒的な1番だったみたい。」
この前、絡んできた、悠里を狙っているアイツか?
「えっと、走高跳の人だったっけ?」
「うん、そう。生徒会長も狙っているんだって。」
とりあえず、心の中で叫んでおこう、落ちろ~!
「・・・へ~、そうなんだ。」
「うん。やっぱり推薦に有利だからって。
ちなみに、晴子も推薦狙いで生徒会に立候補するって言ってたわ。」
「晴子もなんだ。ちなみに、推薦ってどこに行けるの?」
「関関同立とか、毎年1人ずつ行ってるそうよ。」
「マジか!知らなかったわ!」
「私も。昼休みに、梅谷くんが色々教えてくれたんだけど、
クラブの部長とか、生徒会じゃないとそこらは難しいみたい。
だから、生徒会を一緒にやろうって誘われたんだけど・・・」
結構、ぐいぐい来ているな。
しかも、悠里は嫌がっていないみたい。
「・・・どうするの?」
「う~ん、推薦って魅力的だけど、生徒会は、あんまりやりたくないかな・・・」
「そうなんだ・・・」
不安の黒雲がむくむくと沸いてきていた。
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