第22話 高1 ・ 1月②

3学期が始まって、また水曜日にいつもの4人でお弁当を食べていた。


ちなみに、悠里とはちゃんとユイカや晴子と同じ関係に戻っている。

ふう。


「ねえ、金吾のお姉ってどんな女子大生なの?」

巫女のバイトで女子大生と仲良くなったユイカが俺を見つめた。


「うん?お姉は寝坊して昼から大学に行ったり、

バイトしたり、下僕どもと宴会したり、だね。

ああ、週末は軟派サークルのスキー旅行に行くって言ったな。

・・・おいおい、遊んでばかりだよ。」


「やっぱり楽しそうだね、大学って!

で、下僕って、あの引っ越しの時の男子?」


「そうそう。相変わらず平等に取り扱っているみたい。」

「弟が弟なら、姉も姉だな・・・」


ユイカが一応、声を小さくしてくれたので難聴系主人公をきどってみた。

「うん?何か言ったか?」

「べっつに~。」


時が経過して、金曜日の早朝。


今日の夜から、全国的に10年に一度の寒波到来っていう天気予報をみて、

お姉は「やった!新雪だ!」って喜び勇んで下僕の車に乗り込み、

信州へ出かけて行った。


そしてその日の放課後、いったん家に帰ってから

我が最寄り駅に3人の同級生が降り立った。


熊谷悠里!木岡ユイカ!菅野晴子!


一昨日、いつもの4人でお弁当を食べているとき、

お姉がスキー旅行に行くってつい話してしまったら、

ユイカが俺の家でのお泊り会を、勝手に、勝手に、勝手に、計画したらしい。


俺に承諾を得てから進めろや!


言えないけど・・・


「雄太郎がいると、2対2で襲われちゃう。きゃ~!」

っていう理由で女子3名になったそうだ。


「3人で襲っちゃおうかな~?」

ユイカが意味深に俺を見つめると、晴子が肯いてペロリと上唇を舐めた。

自分の家なのに、いたたまれないわ!


10年に一度の寒波襲来ってことで、

大雪になったら電車が動かなくなるぞって脅かしたら、

2泊分のお着かえセットを用意してきやがった。


なんてこった!


悠里がクリスマスにプレゼント交換した手袋をしていて嬉しかったよ。


もちろん、俺も悠里からプレゼントされたニット帽をかぶっていたけどな。


悠里と微笑みあっていたら、凄い殺気を感じた!

晴子が指をポキポキ鳴らしていた。


「面は止めときな!ボディにしな、ボディに!」

ユイカの言葉に肯いた晴子にボディを殴られて、悶絶したよ。


スーパーで4人分の夕、朝、昼の食材、1日分のお菓子とジュースを購入して

我が家、狭い2LDKのハイツに到着した。


「あ~、綺麗に片付いているね~。」

悠里とユイカは買ってきた食材を冷蔵庫に仕舞い始めたのだが、

晴子は一目散に俺の部屋に突入していった。


だから、俺の承諾を得てから入れや!


晴子は俺のベッドにうつ伏せとなって、すーはーと深呼吸していた。

「うにゃ~、金吾の匂いがする~。」


「止めて!男子だって、臭いって言われたら死にたくなるんだからね!」

「うんうん。いい臭いだよ~。」


「なんか、漢字が違っている気がする・・・

おら、ここは俺のテリトリーだ。降りろ。」


「ちぇっ、ケチ~。

・・・ねえ、二人で寝るなら別にいいよね?」


「ぐはぁ!おま、悠里とユイカがいるのに、ダメに決まっているだろ!」

俺の焦り具合をみて、晴子のニヤニヤ笑いがどんどん大きくなっていった。


「あらあらあらあら。私と二人っきりなら、別にいいんだぁ~。

金吾のえっち~。うりうり。」


背中に凄まじい殺気を感じて恐る恐る振り返ったら、

悠里が般若のようになっていて、思わず悲鳴をあげてしまったよ。


我が家なのにな!


みんなで宿題をしたあと、悠里が晴子をアシスタントとして夕食をつくってくれた。

見栄えはいいし、その上、めちゃくちゃ美味しかったよ。


「うま、うま。」

と言ってテーブル一杯に並べられた料理をひたすら食べ続けていたら、

「さすが男の子だね。」

って感嘆されたよ。


後片付けは俺とユイカがすることになって、

その間に、悠里と晴子がお風呂に入っていた。


先にお風呂に入っていたユイカはもこもこのパジャマを着ていて、

そのユイカと並んで、洗い物をしていたら、いい匂いがする!


「ふふふ。ねえ、いま、アタシにトキメいているだろ?おおん?

緊張しているのがバレバレだよ。」

「・・・まあ、超貴重な姿、見せてもらっているからな。」


「だね。悠里と晴子がどんな格好なのか楽しみだね~。

で、当然、金吾はブーメランパンツ一丁になるんだろ?」

「ボディビルダーとちゃうわ!」


先に揚がってきた晴子は、ゆったりとしたネグリジェを着ていた。

俺の目の前でわざわざ、モジモジしながら思わせぶりに、

胸にあるファスナーを上下させやがる。


谷間なんて全くないから、ドキドキなんてしないんだからね!


「ちゃんとドキドキしてくれてありがと・・・」

心の中で呟いたハズなのに、こんなセリフを呟かれて

ドッキ~ン!ってしちゃったよ。


最後は悠里で、普通のパジャマの上にカーディガンを羽織っていた。

なで肩で、袖が長いから、すっごく可愛い!


「可愛い・・・」

つい呟いてしまったら、左右にいたユイカと晴子に詰められた!


「はあ?なんで、悠里だけ褒めるんだ?あん?」

「コラ!ウチらは可愛くないんか?おう?」

「いや、もう二人ともヤカラだから!」

「「だれがヤカラやねん!!」」

「ぐはぁ!」


女子三人がリビングに集合したら、三人のお風呂上がりの

シャンプーなんかの匂いがもう、蠱惑的すぎてヤバい!


これ、なんか口走ったり、イヤしいボディタッチしちゃいそう!


気分を変えるべく、カーテンを開けてみたら、雪がしんしんと降っていた!

「雪だ!凄い!」

口走ってしまったら、女子3名がわっと近寄ってきた。


「ホントだ!」

「積もるかな!」

「楽しみだね~!」


右に悠里、左にユイカ、後ろには俺の両肩に手を置いている晴子が

密着してきて、余計にくらくらしちゃったよ。


その後は、桃鉄大会が始まって、ハイツなので、小さな声で大騒ぎして、

お菓子を食べて、ジュースを飲んで、またバカ騒ぎして。


深夜2時にようやくお開きとなって、女子3名はリビングで寝ることになって、

俺は自分のベッドにもぐりこんだ。


リビングで女子がおしゃべりしているのがわかるんだけど、

なに話しているんだろう・・・


★★★★★★★★★★★★★


「起きろ~。」

鼻をつままれ、ビックリして飛び起きた。


「わあ!悠里!そうだ、おはよう。」

笑顔の悠里がいた。ちゃんと化粧もしているみたい。


「おはよ!朝ごはん、出来ているよ。ユイカが作ったんだよ。」

「・・・食べられる?」

恐る恐る尋ねてみたら、「失礼ね!」って笑われた。


顔を洗ってリビングに行くと、テーブルに和食が並んでいた。

ごはん、茄子と豆腐の味噌汁、玉子焼き、ほうれん草の胡麻和え。

見栄えは上々だ!


「どうだ!」

ユイカが自信満々に柏手を打って両手を広げた。


「な、ん・・・だと。」

「ユイカ、一人で作ったんだよ。」


「う、嘘だろ?」

「もう、ええわ!バカは放っておいて、いただきま~す!」

「「「いただきます。」」」


玉子焼きを食べてみたら、甘くないタイプだったけど、

火加減、塩加減ともにバッチリだ!


「どうだ!」

「ま、ま・・・さか。う、美味い。」


「こら!いつまでやってんだ!」

ユイカに怒られてしまった。


いや、でも、マジで、意外だったんですもの!


★★★★★★★★★★★★★


朝8時を過ぎて、4人できゃっきゃ言いながら外に出た。


一面銀世界で10センチくらい積もっている!

もう、神戸市内でこんなに雪が積もっているの、初めてみたよ!


「すご~い!」

積もった雪を踏みしめる度に歓声を上げながら、

すぐ近くにある小さな公園にたどりついた。


「じゃあ、雪合戦始めようか。今回は全員が敵だよ。」

晴子は俺、悠里、ユイカを順番に睨みつけた。


「はい、敵は本能寺にあり~!」

女子3人が一斉に俺に雪玉を投げつけてきた!


ですよね!


わかっていましたとも!


「あべしっ!」

「たわばっ!」

「ひでぶっ!」


当てられるたびに大げさな悲鳴を上げて、大きなリアクションをした。


そして、女子3人に雪玉をぶつけ返したけれど、たちまち雪玉が尽きてしまった。


なんてこった!


立ちすくむ俺に、女子3人が最後の2つの雪玉を両手に持って、

悪い笑顔を浮かべてにじり寄ってきた!


「ま、待て!話せばわかる!」

「問答無用!」

女子3人が飛びかかってきた!


「助けて!ぎゃ~!やめて~!」

顔にぶつけられ、背中に、腹の中に放り込まれて、

最後は顔に雪を擦り付けられた。


昨日の3人で襲っちゃおうかな~ってこういうことだったのね!


いじめられっこムーブをもっと楽しみたかったけど、

体に直接、雪玉は冷たすぎて、マジでギブアップしてしまったよ。


近所の子どもたちがやって来たので、帰ることにした。


「つべたい・・・」

「「「あ~、楽しかった。」」」

「もう、ヤダ・・・」

「「「また、やりたいね!」」」

「ほんと、勘弁してください!」

「来年の冬はスキーに行こうか?」

「「いいね!!」」


家に戻って、俺だけ着かえて、今度はトランプ大会だ。

七並べをして、性格の悪さを総動員して3連勝してやったよ。

大ブーイングを食らったけどな。わはは!


昼食はたこ焼きパーティだ。


晴子の仕切りでたこ焼きを次々と焼いて、色んな味を試していく。

ソース、しょうゆ、だし汁、辛子、チーズ、マヨ、そしてそれらの合わせ技。


そしてお約束のたっぷりワサビルーレット。

晴子が匠の技で作ったたこ焼き8個。

その中で1つだけ、ワサビ大量にイン。


うむ。まったく分からん!


悠里、ユイカ、俺、晴子の順番で1個ずつ、食べていく。


なんてこった!

残り2つとなってしまった!

どうしよう?


「もう、こっちでいいよね?ね!」

ユイカが右のたこ焼きに楊枝をぶっさして、俺の口元に押し付けてきた。


「あちっ!おい、ちょっと待て!まだ、決心が」

「男の子だろ!さっさと逝けや!」

「また漢字が違う!」


しゃべっている途中に、口の中にねじ込まれてしまった!

むしゃ、むしゃ、うん、ソース味が正義!


んん?

ビリビリ、来た~~~!!!


口の中で、雷落ちまくりやないか~い!


「おぢゃ、おぢゃ、おぢゃ!」

お茶で流し込んだけど、まだ、まだ、まだ、舌が、舌が、舌が~


「ぎゅうじゅう、ぎゅうじゅう、ぎゅうじゅう!」

冷蔵庫まで走って、牛乳をコップ1杯、2杯、また一気飲み。


「やだでだ・・・」

「「「あはははっははっははは!」」」

三人が笑い転げて苦しそうだった・・・


いや、女子が食べなくてよかったんだよ?

だけどさ、もう少し、ワサビの量、減らしてくれよ・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る