第11話 高1 ・ 8月
世間はお盆休み真っ只中の頃、俺は海の家でアルバイトに励んでいた。
真面目に学校に届け出ていて、土日祝日と、お盆の3日間は働くのだ。
つかの間の休憩時間をもらったので、スマホをみてみると、
ラインで須藤からお誘いがあって、木岡と熊谷さんとなんだか盛り上がっていた。
『来週水曜日、みんなでお泊りに行かないか?
摩耶山のロッジで、夜はバーベキュー。
メンバーは俺たちのほか、松尾、小笠原、菅野、大塚の8人』
『(・∀・)ニヤニヤ 小笠原が純に告白するんだな。』
『きゃ~!行こう、行こう!』
『(。´・ω・)?バレタ』
『バレバレだよ。』
『うん、バレバレ。』
『バーベキュー、花火、肝試し、トランプ大会・・・他、何をしよう?』
『王様ゲーム。ポッキーゲームでもイイぜ!』
『須藤は一人、テントで夜を過ごすって。』
『許して。』
どうやら、同じクラスのお調子者小笠原誠人が、
同じクラスの、男子へのボディタッチが多くて、
スカートの丈が短い大塚純に告白するようだ。
で、小笠原が仲のいい須藤に企画を頼んだ。
アウトドア派の小笠原を目立たせるためメインはバーベキューにして、
泊りなら女子にはテントよりロッジだよねって探してみたら、
運よくキャンセルが出た8人定員のロッジが予約できたそうだ。
そして、須藤が俺たち3人を誘い、
大塚純と仲のいい学級委員の菅野晴子、
男女を同数にするために同じく学級委員の松尾進を誘ったようだ。
松尾、小笠原、菅野、大塚とあんまり話したことはないけれど、
紗季や榎本と仲がいいグループではないので、悪感情もない。
楽しそうだ!
『おい、サメ。』
木岡からキラーパスが飛んできていた。
『あ、はい。喜んで。』
『喜んでね~じゃね~か。』
『あ、喜んでます!』
★★★★★★★★★★★★★★★★
最寄り駅で先に俺、須藤雄太郎、小笠原誠人、松尾進の4人がそろって待っていた。
小笠原誠人は、背は普通、クラスのお調子者で下ネタが大好物みたい。
だけど、悪口やクラスの女子の批評をしないので愛されキャラで通っている。
松尾進は学級委員の眼鏡ののっぽさんで、固めの性格をしている。
小笠原はにやけた顔で須藤に話しかけた。
「須藤、サンキューな。いやあ、昨日は楽しみで眠れなかったよ。」
「ふっふっふ。ちゃんと考えてきたから、頑張れよ。」
「お~、友よ!」
小笠原はワザとらしく感嘆し、須藤と肩を組んだ。
それを白けた様子で見ていた松尾だが、思い出したかのように声をだした。
「そういえば、この中で、カノジョ、カレシ持ちはいるのか?」
「いいや。男子も女子も誰もいないぜ。」
「ふ~ん。そうなんだ。」
気のない素振りで答えた松尾だが、気合が入ったような気がした。
電車が到着し、駅から女子4人が出てきた。
まず、本日の主役、大塚純の格好に目を奪われた。
白いTシャツはアニメのキャラがプリントされていたが、
そんなことはどうでもよくって、その胸がすんごく盛り上がっていて、
さらに丈が短くって、ぎゅっとしまったウェストとおへそがチラリチラリ除いていた。
下はデニムのパンツだったが、これがまた、丈が異常に短かった。
真っ白っくて、細すぎず、超魅力的な太ももが大胆に露出していた。
まぶしい!
「荷物、持つよ!」
小笠原が顔を真っ赤にしながら、大塚が持っている花火や食材が
入っている手提げカバンをひったくっていた。
「行こう。こっちだよ。」
そして、大塚をエスコートしながら、先頭を歩き始めた。
ここから1時間くらい、山の麓まで歩いていくのだ。
「ありがとう!まこっちゃん、気が利くね!」
大塚もまんざらじゃないカンジで小笠原に笑顔を見せていた。
おおっ!これはイケルんじゃあ?
「熊谷さん、持ってあげるよ。」
学級委員の松尾進が熊谷さんの手提げカバンを掴んだ。
あれっ?松尾は同じく学級委員コンビを世話するんじゃないの?
「あ、ありがと。」
小笠原に続いて、松尾が歩き出すと熊谷さんは小走りで松尾に並んでいった。
「じゃあ、行くか。」
毒気を抜かれた須藤が、
木岡が差し出しているカバンを受け取って、並んで歩き始めた。
俺は学級委員の菅野晴子としばらく、見つめ合ってしまった。
「ええっと、菅野さんの制服じゃない姿がまぶしいわ。」
「まぶしいのは、純の太ももでしょ?釘付けだったよね?」
「あわわ!つい、吸い寄せられちゃったんだ・・・」
「ふふっ。鮫島くんも男の子だったんだね。」
「あ、はい。荷物、持ちます。」
菅野さんにニヤニヤ笑われてしまった。
菅野さんは学級委員で、面倒見がいい、ポニーテール女子だ。
「鮫島くんはこの夏休み、なにしていたの?」
「休日はバイト、平日は休んでいたね。」
「いつもと逆ね。宿題は終わったの?」
「終わった、終わった。暇だったからね。
菅野さんは夏休み、何していたの?」
「クラブと、友達と遊ぶのが忙しかったわ。
この前は、中学の時の友達と久しぶりに集まってね・・・」
話好きで、楽しい話ばかりで、他人の悪口を言わないので好感度が高かった。
暑いさなか、1時間ほど歩いてようやくキャンプ村に着いた。
ロッジは2階建てで、1階は広いリビング、お風呂、8畳の和室があって、
階段を上がると左右に扉も壁もなく、6畳くらいの屋根裏部屋?ロフトがあった。
「2階は女子ね!」
「なんでだよ!半分ずつだろ!」
「いやよ!」
「男子が隣にいたら、襲われる!」
「寝起きの顔なんて、見せられないし!」
「須藤、死ね!」
木岡の決定に反発した須藤が滅多打ちにあっていた。
須藤が助けてほしそうに男子を見渡すけど、みんなそっと視線をそらしていた。
すまん!
「いやあ、暑かったから疲れたな。バーベキューまで、どうする?
休憩するか?」
学級委員の松尾進が眼鏡をくいっとしていた。
「もう、しょうがないな~、のび太くんは。
じゃじゃーん、水風船~!」
それを引き取ったのは同じく学級委員の菅野晴子。
「水風船~?」
のび太ちっくにわざとらしく繰り返した俺に、菅野は満足そうに肯いた。
「これをぶつけ合って遊べば、涼しくなるんだよ~。
ねえ、2チームに分かれて、ぶつけ合おうよ。」
「いいね、楽しそうだね!」
菅野が楽しそうに提案すると、女子たちから賛成の声があがった。
ああ、濡れネズミになるから、もう1セット、着替えを用意しておけって言ってたのね。
男子4人が外でそわそわと待っていた。
Tシャツ女子に水風船をぶつけて、水浸しにするんだから!
須藤なんて、エロ妄想しているのが丸解りだ。
「おい、須藤、顔がエロイぞ。」
忠告してあげたが、須藤の表情は全く変わらないまま、反論してきた。
「うるせい!お前らだってそうだぞ!」
「そんなことないよ!」
否定した俺の肩を松尾が叩いて、かぶりを振った。
えっ、マジ?俺ってエロイ顔してんの?
ヤバい!
「お待たせ~。」
濡れて素肌に張り付くTシャツ、透けて見えるブ・・・。
ラッシュガード着ていやがる、ちっくしょ~!
「残念だったね~、エロ男子ども!」
木岡がケラケラと笑っていた。
俺、熊谷さん、松尾、菅野さんの学級委員コンビチーム対、
須藤、木岡、小笠原と大塚さんのニューカップルチームとなった。
「勝敗はどうするのさ?」
俺は発案者の菅野さんを見つめた。
「え~っと、女子がたくさんぶつけられた方が負けね。
男子には盾を渡しているんだから、ぶつけるんじゃなくって、
女子を守ることを優先するんだよ。」
なんだか、あやふやだけど、まあいいかって思いながら、
盾として渡された鍋蓋を見た。
水風船を併せて100個用意して、4対4で向き合って準備完了だ。
「じゃあ、ウチの合図で始めるからね~。
敵は本能寺にあり~!」
なにその掛け声?
って思ったら、敵チームの女子二人、
木岡と大塚さんが後ろから、味方の須藤と小笠原に水風船をぶつけた!
なんで?
って思っていたら、背中に水風船をぶつけられた!
「冷たっ!」
慌てて振り向いたら、味方のはずの菅野が悪魔の笑みを浮かべていた。
「あべしっ!」
菅野に水風船を顔にぶつけられた俺は悲鳴を上げながら、逃げ出そうとした。
水でびしょびしょの顔を手で拭くと、目の前には
やっぱり悪魔の笑顔を浮かべた熊谷さんが水風船を構えていた。
「裏切ったな、くま!たわばっ!」
また、顔面に食らってしまい、別方向へ逃げ出すと、
今度は須藤が待ち構えていた。
「雄太郎、お前もか!」
悲壮感たっぷりなセリフを吐いた。
「死ね!」
「ひでぶっ!」
っと女子にも男子にも、裏切られ・雑魚死、ムーブを満喫してから、
敵味方関係なくぶつけまくり、さらにまた、ぶつけられまくっていると、
ほんの3分ほどで100個の水風船が無くなってしまった。
みんなずぶ濡れとなっていて、面白すぎて、みんなバカ笑いしていた。
※ゴミはスタッフがすべて回収しました。
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