第32話 天界の人口を調べてみます
お茶会が終わってから数日経って、7月に入りました。しらたまさんとちまきさんと出会って、翌日にモリエルさんが孵ったのが6月半ばでしたので、もうそれから半月になりますね。
ちなみにこの世界の天界は、自然発生したのではなく意図的に創造されたからなのか、暦や時間がキリの良い数字で構成されています。
一年は十か月、一か月は五十日、一週間は十日、一日は二十時間、一時間は百分、一分は百秒となっています。
そもそもこの世界は浮遊大陸や浮遊島で構成されているのですから、地球とは法則が違うのですよね。空に太陽や月や星に相当する物はあれど、似て見えるだけであって、同じ物ではないのです。
そんな世界なので、前世との違いに戸惑う事も多いですが、タブレットに内蔵されている暦や時計を参考に、日々を過ごしています。
最近はいつもの採取生活を続けつつ、隙間時間には皆で揃って、色々な動画を見ては感想を言い合ったりしながら過ごしています。
ハンプタン様から依頼を受けた動画投稿を引き受けるかどうか判断するには、まずはしらたまさん達に、動画とはどういう物なのかを知ってもらわなければなりませんからね。
そうして様々な動画を見てみると、この天界では前世ほど、動画が飽和していないように感じます。動画の絶対数が少ないのです。ジャンルも多くありません。動画に馴染みのない方が多いのでしょうか?
前世では動画配信者とは、よほどのきっかけがなければ埋もれるのが当たり前で、個性的で面白い内容でなければろくに見てもらえない、厳しい世界のイメージでした。ですがこちらではまだ開拓されていない分野のようです。
こちらではそんなにも、動画を見る人が少ないのでしょうか。あるいは地球とは人口の規模そのものが違うのかもしれません。
「そういえば、天界の人口ってどれくらいなのでしょうか?」
気になったので、タブレットで天界の総人口を調べてみました。
その結果、今この世界の天界で暮らしている神族は現在約三千万、天使さんは約五千万、聖獣さんは約二千万くらいだそうです。
ただし聖獣さんの場合は、都市や街で暮らしている分だけが登録されており、それ以外の野生の聖獣さんの数は集計されていないとの事です。なので総数では、聖獣さんの人口はもっと多くなるはずです。
「人型の住人は、神族と天使さんを合わせても、全部で八千万ですか。二万年も続いている世界なのに、人口の増え方が緩やかですね」
寿命、病気、怪我といった要因で生き物が死亡して人口が減少するリスクのないこの世界ならば、もっと大勢の人が暮らしているのではと思っていたのですが、こうして数字で見ると、前世と比べて随分と人が少なく感じますね。
世界の中心である聖樹都市の中で暮らしているから、これまでは人の少なさを感じなかっただけなのでしょう。
天使さんの人口が神族よりも多いのには訳があります。
まず第一に、神族は見習いで一人、下級で二人、上級で三人までを上限に、天使さんと契約できるという決まりがあります。
すべての神族が天使さんとの契約を望む訳ではないですが、身分が高くなればその分だけ、多くの天使さんと契約できるようになっているのです。
そしてそれらの他にも天使さんは存在します。
特定の個人に仕える契約をした天使さん以外にも、毎年一定数の天使さんが、フリー契約の状態で卵から孵るのです。
そういう天使さんは、誰にも仕えずに独立して仕事をする事もあれば、自ら仕える相手を見定めて契約を持ち掛ける事もあるそうです。
神族と天使さんの契約とその継続には双方の合意が必要ですので、神族が最初に契約を交わして卵から孵した天使さんであっても、場合によっては契約を解除してフリーになるケースも存在するようです。
天使さんは神族に仕える種族とはいえ、個性があり人権もある種族なのですから、契約先と合う合わないというのはどうしても発生するのですね。
神族の場合は聖樹の実から年に百人ずつ確定で増えていくのが基本となります。ですが他にも、不老不死ゆえに確率は低いですが、女性もしくは両性の方の人型のお腹に、命が宿って、子供が生まれる事もあるそうです。
そういった子供は、神族同士は勿論、神族と天使、天使同士でも生まれる可能性があります。
性別的には無性の方は無理ですが、男性、女性、両性の方は子供を作れる可能性がある訳ですね。
また、一度性別を定めても、変えたくなった時点でポイントを使い随時変更可能ですので、実質すべての人型が子供作り可能となる訳です。あくまでも可能性としては、ですが。
一方で聖獣さんは、聖気の塊から生れ落ちるという特性からか、種族全体に性別がなく、子供を産む機能はないのだそうです。ただ性格的に何となく性別が偏っている個体はいるとの事です。
(こちらの世界の事はまだまだ、調べてみないとわからない事がいっぱいですね。こちらに来てからまだ半年とちょっとなのですから、わからない事が多くても当たり前なのかもしれませんが)
「それにしても、以前、神族は全員が前世持ちだと習った気がするのですが……。両親の間に生まれてくる子供さんも、前世の記憶を持っているのでしょうか?」
これもまた気になったので調べてみたところ、聖樹の実からではなく、人型のお腹に宿る場合は、神気を長く受け取らないといけない関係で、妊娠期間が十年にも及ぶそうです。
まずそこにびっくりしました。十年も大きなお腹で過ごすって、妊娠された方はとても大変なのではないでしょうか。
そう心配して更に調べてみると、どうやら人間の妊娠出産とは原理がまるで違うらしく、お腹は膨れないそうです。妊娠中、お腹の中にいるのはあくまでも魂と神気の塊だけで、外に出てから改めて、新たに器を与えられるのだとか。
なので出産方法も違うのだそうです。
そして肝心の記憶ですが、これは生まれてから五十年ほど経ってから、前世の記憶が戻る仕組みになっているのだそうです。
「人生の途中で急に前世の記憶が戻るなんて、最初から記憶がある状態の私達とは違って、戸惑ってしまいそうです……」
記憶が戻る事によって、今の両親と気まずくなったりしないのでしょうか。他人事ながら心配になってしまいました。
それとも、五十年も親子として過ごしてからなら、例え別の人格の記憶が蘇っても然したる問題もなく、双方共に受け入れられるものなのでしょうか。
正直、私がもしそうなったならと仮定して考えてみても、想像がつきません。
それに、そういった経緯で生まれた神族の子供さんは、期間限定とはいえ前世の記憶がない状態で過ごすのですから、前世の記憶のない神族も、ある意味「いる」と言えるのではないでしょうか?
とはいえ、創造神であるアンカーシェ様が、天使さんや聖獣さんはそうではないのに、神族だけはすべて前世の記憶持ちと定めたのは、それが必要と思ったからこそなのでしょう。
こちらの世界の家族の在り方がどうなっているのかは気になるところですが、私があれこれと考えても仕方ないのでしょうね。
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