第28話 お茶会当日です
服を買った後は、当日までいつもと変わらぬ日々を過ごしました。そしてついに本日、お茶会の当日になりました。
お茶会は午後からなので、午前中はモリエルさんは手土産として手作りクッキーを焼き、箱に詰めて用意したようです。私はお花屋さんに行って花束を買ってきました。
手土産はあってもなくても良いと教えられましたが、招待を受けて手ぶらというのも落ち着かなくて、無難な物を用意したのです。
そろそろハニャさんが家まで迎えに来てくれる時間になるので、着替えを済ませて準備を整えます。
私は明るめの水色のワンピースです。襟や袖口に白いレースがついているのが可愛らしくて気に入っています。それに踵の高めの白い靴を履き、銀の首飾りを合わせています。
モリエルさんは白いシャツに灰色のズボン、刺繍入りの緑色のベスト、そして深紅のタイと灰色の靴を合わせています。
しらたまさんとちまきさんはいつものように翻訳道具の首輪をしているだけで、他は何もつけていません。
呼び鈴が鳴って、扉を開けるとハニャさんがいらっしゃいました。待ち合わせ時間にぴったりです。
本日のハニャさんの服装は、青いシャツに白いジャケット、白いズボンです。お洒落な恰好ですがネクタイをしていないので、畏まった印象は受けないですね。ですが眼鏡がいつもの黒縁ではなく、ノンフレームでキリッとした形の眼鏡に変わっています。なるほど、眼鏡の種類を変える事もお洒落の一環になるのですね。
「こんにちは」
「こんにちは、ハニャさん。今日はよろしくお願いします」
「こんにちは。よろしくお願いしましゅでしゅ」
「わおん!」『よろしく!』
「にゃーお」『おねがい!』
「用意は出来ているかな?」
「はい、このまま出掛けられます」
「じゃあ行こうか」
挨拶を交わして玄関から外に出て、ハニャさんに先導してもらってハンプタン様のお宅へと向かいます。
ハンプタン様のご自宅は、こっそりと想像していたような王様が住むような立派なお城でも、貴族の住むような大豪邸でもありませんでした。木と石で作られた二階建ての邸宅はこじんまりとしていて、そこまで大きくなかったのです。
まあ、天界の建物は空間術によって、見た目と中身がまるで違いますから、外観は参考にならないのですけどね。
ただ、庭園はとても大きくて、丁寧に手入れされた色とりどりの花に溢れていました。とても素敵なお庭です。
「いらっしゃいませ。ようこそお越しくださいました。お待ちしておりましたわ」
建物の前で出迎えて下さったのは、カールした薄い紫色の髪をゆったりと結い上げて白い生花を髪飾りにした、ふくよかな女性でした。
その垂れ目は深い紫色で、左側の目元に小さな泣きぼくろがあります。肌は色白です。服装はゆったりとした萌黄色のドレスで、お腹の部分を細い紐で巻いていますね。
彼女を表すには、嫋やかな貴婦人という言葉がぴったりでしょう。
前世では太っていてはいけないという風潮がありましたが、美しさの基準というのは、地域や時代によってどうとでも変わっていくものです。
目の前の貴婦人は同性である私の目から見ても美しく、嫋やかで魅力的と思える方でした。
(人物図鑑の顔写真で事前にお顔を確認していましたが、この方がハンプタン様ですね)
招待主を確認して、私は深く頭を下げます。合わせてモリエルさんも一緒にお辞儀しました。
「本日はお招きいただきありがとうございます。ご招待に預かりました神薙美杜です」
「こちらこそ、招待に応じて下さってとても嬉しいですわ。わたくしの名はハンプタン・レビデスです。どうぞよろしくお願いしますわね」
「天使のモリエルでしゅ」
「わうんー」『しらたまだよー』
「にゃにゃおーん」『ちまきはちまきなのー』
「担当官として同行しました、ハニャ・イブセルです」
それぞれが名前を告げます。ハニャさんも含めて全員がハンプタン様とは初対面ですからね。挨拶と自己紹介は大切です。
「今日はお庭のお花が見ごろなので、東屋にお茶の準備をしていますの」
ハンプタン様がそう仰られて、彼女が先導して皆で庭園にある東屋に移動します。いよいよお茶会の始まりですね。
おっとりとした方に見えますが、この方は一体どんな用件で、私達を招待したのでしょうか。
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