第13話 天使さんと山を歩いてみます
午後からは、モリエルさん用に注文した商品の受け取りです。
大きな家具は部屋まで運んで設置して貰います。小さな荷物は玄関で受け取って開封です。
天使さん用の服も届いたので、早速モリエルさんにはお着換えして貰います。
クリーム色のシャツに、淡い緑のオーバーオールを合わせています。とっても可愛らしいくてお似合いです。金髪のふわふわ巻き毛にエメラルドのような深い緑の瞳と相まって、絵本の住人のようにメルヘンです。
通販の受け取りをすべて終えた後は、食料品や雑貨といった細々とした物のお買い物に皆でお出かけしました。
あらかじめ私の記憶がインストールされているとはいえ、モリエルさん自身としては、生まれて初めてのお出かけであり、お買い物となります。記憶で知るのと直接見て感じるのとは、また別なのでしょう。楽しそうにあれこれと見て回っていました。
「生地にトマトとバジルとちーじゅを乗せるでしゅー」
「マヨネーズとコーンとチーズ、鳥の照り焼きを乗せたピザも作りましょう」
今日の夕飯は、手作りピザに挑戦です。
その他は、ミネストローネ、サラダ、ゼリーといった品目を合わせてみました。
昼食の時も思いましたが、二人で一緒に作ると作業を分担できて手早く作れますし、お話をしながら作れるので、一人よりも楽しいですね。
「チーズがとろとろで美味しいです」
「あちあちでしゅー」
「うにゃにゃにゃーっ」
「わふわふんっ」
出来立て熱々のピザの美味しさは格別です。皆で夢中になって食べました。
その後は片付けも二人で分担して終わらせます。
お風呂はまず、しらたまさんとちまきさんを私とモリエルさん二人掛かりで洗い上げて、ドライヤーで乾かします。その後、私達が順番に入る事にしました。
全員のお風呂が終わると、居間のソファーに座って、麦茶を飲んで一息つきます。
「明日はどうしましゅか?」
「そうですね……、モリエルさんはどんな仕事についてみたいですか? まだ決まっていないのでしたら、明日は試しに、私達と一緒に採取に行ってみますか?」
「はいでしゅ。一緒に行ってみて考えるでしゅ」
「ですが、もし採取が向いていないなら、無理をして続ける事はないですよ? モリエルさんが楽しんで出来る仕事を探せばいいんですから」
「はいでしゅ。自分が楽しいおしごと、やってみたいおしごと、しゃがしてみるでしゅ」
……そんな訳で、明日は全員で採取に行ってみる事にしました。
翌日、朝食を食べてから山へ出発です。
いつもなら出来合いのお弁当をお店で買うのですが、今日はモリエルさんがお弁当を作りたいとの事で、二人で皆の分を手作りしました。飲み物も用意して準備万端です。
聖樹都市から転移陣で移動して、山の中を採取しながら歩きます。今日もしらたまさんとちまきさんの聖気センサーは好調で、高価な薬草やキノコなどをちらほらと見つけて下さいます。
ただ、初参加のモリエルさんの調子は今一つのようです。
「……僕にはさいしゅ、向いてないでしゅ」
モリエルさんが背中の羽をパタパタ羽ばたかせながら、困ったように眉を顰めます。
「そうですね。綺麗な羽が草や枝だらけになってしまいましたね」
私はその羽についた葉や小枝を丁寧に取り除きながら苦笑します。
山の中はわりと木が多いので、空が開けたところ以外では、モリエルさんが飛ぼうとすると、木の枝が羽に当たってしまうのです。
背中に羽がついているのはしらたまさんとちまきさんも同じですし、お二人の方が長毛の分だけゴミもつきやすいのですが、お二人は小柄で獣姿だからなのか、体にゴミが絡まっても気にした素振りを見せません。
一方でモリエルさんは、羽にゴミが絡まるのが、どうにも気持ち悪く感じるようです。
更にモリエルさんの場合、五歳くらいの小さな幼児の姿をしているので、歩く歩幅が小さくて、私達のペースについてくるのが辛いのです。
これはすぐに気づいて歩くペースをゆっくりに落としたのですが、私達の足を引っ張るのが切ないようで、モリエルさんはしゅんとしてしまっています。
初の山歩きで疲労も大きいようですし、今日は早めに切り上げましょう。
「これからゆっくり、向いている職業を探していけばいいんですよ。私も職業が決まるまでかなり時間がかかりましたし。モリエルさんも焦る必要ないです。それに家事を手伝って下さってるだけでも充分助かっていますしね」
「はいでしゅ。ゆっくり考えるでしゅ」
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