第9話 天使さんが孵りそうです
今日の夕ご飯は豚肉のしょうが焼きと千切りキャベツ、白飯、お豆腐となめことネギのお味噌汁、デザートにプリンです。
今日のプリンはトロトロで柔らかいタイプです。硬いタイプのしっかりした食感のプリンも好きですが、柔らかいタイプも好きです。どちらも違う良さがありますよね。
しらたまさんもちまきさんも、美味しそうに食べて下さって良かったです。
私は料理がそれほど得意ではなく簡単な物しか作れないので、お二人に申し訳ないです。もっと手の込んだ美味しい料理を作れたら良かったのですけど。
夕飯の片づけとお風呂を終えると、寝る前に余った時間で、お友達のエマさんに通話で連絡を取ります。
エマさんは私の同期で、戦士職に就いた人です。
以前、私が戦士の職業体験をした際に知り合ったのがきっかけで、今も交友関係が続いています。
彼女は今、新人戦士恒例の行事として、人界に降りて魔獣討伐の体験合宿をしている最中だそうです。
エマさんからは近状として、ファンタジー色の強い人界の様子や、魔獣と戦闘した際の感想などをお聞きしました。
私からは、同居人となった聖獣さん達をいずれ紹介したいといったお話して通話を終えました。
地上に存在する魔獣とは、魔界に住む悪魔の手先であったり、地上で濃い魔力が凝った土地に生まれたりする、魔力を持った動物のような存在だそうです。
人界においては人を襲い人類の生存圏を脅かす、恐ろしい存在でもあります。
神族全体の思惑として、自分達の暮らす天界直下の人界が乱れているのは戦略的によろしくないので、戦える神や天使を人界に派遣して、魔獣や悪魔を討伐して貰っているのです。
エマさんは今回が初の人界任務だそうです。これまでは見習いとして天界で戦闘訓練を重ねていたのですが、ついに実戦投入という訳ですね。
勿論、見習いの初任務なのですから、頼りになる先輩が付き添って、フォローに回って下さるそうです。
それでも魔獣相手に戦闘なんて、何があるかわかりません。
エマさんは前世でも軍人さんだったそうですから戦いには慣れているというのですが、それでも怪我などせずに無事に帰って来て欲しいです。
お友達の無事を祈って、そろそろ寝ようと思います。おやすみなさい。
おはようございます。今日も朝から良い天気です。
洗面所で顔を洗って、しっかりと目を覚まします。
そして朝食の用意でも……と思ったところで、居間のクッションの上に鎮座している天使さんの卵が、わずかに発光しているのに気づきました。
「っ! 卵が光っています! もうすぐ生まれるんですね!」
天使さんの卵は、孵化間近になると光を放ち始め、徐々に光が強くなっていくのだそうです。今はわずかな光を放っているだけですが、この後はもっと強くなっていくのでしょう。
「光を放ち始めたら、その後は数時間で生まれると聞きました。それなら今日は採取のお仕事をお休みして、天使さんが生まれるのを見守りましょう」
折角私達のところに来て下さるのです。誕生の瞬間に一人きりにならないように傍に居たいです。
採取課は基本的に自分でスケジュール調整が可能ですので、体調不良や急用の場合などは、自分の判断で仕事を取り止められます。
不測の事態が起こった時には救助に向かえるように、仕事に出る前に、採取前にどの地域に行くか、いつ頃帰還する予定かを連絡してから出掛けますが、今日のようにお休みにする場合は、特に連絡せずとも問題ありません。
「しらたまさん、ちまきさん、天使さんの卵がもうすぐ孵りそうです!」
「わんっ!?」
「にゃん!」
寝起きで寝ぼけ眼だったお二人も、卵が光っているのを見て、興奮して飛び上がります。
ちまきさんは卵に近づいて、鼻を寄せてふんふんと匂いを嗅ぐ仕草をします。しらたまさんは新しい仲間の誕生を喜んでか、部屋中を凄い勢いで駆け回ります。
私はお二人が少しは落ち着くのを待ってから、今朝の朝食作りです。
今日の朝のメニューはハニートーストにベーコンエッグ、レタスとミニトマトのサラダ、ヨーグルトとオレンジジュースにしました。
こんがり焼いたトーストに、お皿に零れるのも気にせずに、蜂蜜をたっぷりと掛けるのがコツです。
卵の経過が気になって落ち着かない様子のお二人でしたが、食事は美味しそうに食べて下さいます。
それでも食べ終わるとすぐに、忙しない様子で卵が置いてある方へと駆けていってしまいました。天使さんの誕生まで、すぐ近くで見守っていたいのでしょう。
私も出来るだけ急いで片づけを終わらせて、見守り隊に加わりました。朝起きて光に気づいた時よりも、輝きの強さが増しているようです。
天使さんの卵は普通の鳥の卵とは違い、卵の殻が徐々に割れて孵るのではなく、光が強くなると一気に卵が天使さんへと変化するそうです。
この様子だと午前中の内に、天使さんが誕生するでしょう。とても楽しみです。
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