第8話 聖獣さん達が希少素材を採取しました

 崖を登り移動を再開します。

 そこで不意にしらたまさんが、これまで向かっていた方向を逸れて、違う方向へと駆けていってしまいしました。何かあったのでしょうか?

 ちまきさんと二人でその後姿を追って行くと、しらたまさんが一心不乱に地面を掘り起こしていました。

「わっふわっふ」

 そちらに近づいて、しらたまさんが前脚で掘っている部分を覗いてみたところ、地中に何やら黒い塊のような物がありました。その謎の物体に鑑定を掛けてみます。

「え、トリュフですか!? しかも、最高級神薬の素材になるのですか!?」

 鑑定で出た結果に驚いて、つい大きな声を上げてしまいました。

 何としらたまさんが掘り当てたのは、神薬の調剤に使う希少素材だったのです。これは天界特有の素材ですね。

 ただ、物がトリュフであるのには違いないので、薬の材料としてだけではなく、料理の材料としても使用出来るようです。

 どうやらしらたまさんは遠くから匂いを嗅ぎ取って、トリュフの在り処を敏感に察知したようです。

「しらたまさん、凄いです!」

 更にその後はちまきさんまで、最高級の神薬の素材となる苔を見つけ出してしまいました。

 鑑定によるとこちらも天界特有の素材で、ごくまれに木のうろに生える代物だそうですが、滅多に見つからない希少品だそうです。

 地中のトリュフもそうですが、木のうろに生える苔も、山を歩いているだけでは普通は見つけられない希少品です。それを的確に探し出してしまえるなんて、お二人とも私よりずっと採取の才能がありますね。

「ちまきさんも凄いです!」


 お二人の協力もあって、珍しい素材をいくつか採取できました。それと普通の山菜や薬草も、いつもよりも多めの量を確保出来てほくほくです。

 目標量を余裕で上回ったので、三人でお弁当を食べ終わった後は、休憩を挟んでから聖樹都市に帰還しました。そして採取課の買い取り窓口に行くと、今日もハニャさんが窓口の担当でした。

「こちら、しらたまさんとちまきさんが見つけて下さったんです」

 最高級の神薬の材料となる貴重品なので、トリュフと苔は他の採取物とは分けて提出します。

「おや、珍しい貴重な素材を見つけたんだね。凄いね二人とも。お手柄だ」

 ハニャさんも目を見開いて驚いています。それからしらたまさん達に微笑んで、その手柄を褒めて下さいました。

「神薬に使う素材は、聖気の内包量が多いからね。おそらくは、しらたまくんもちまきくんも、聖気が一か所に大量に集まっている場所を感知したんじゃないかな。聖獣は聖力の扱いに長けているから、聖力の感知も得意なんだろうね」

「そうだったのですね」

 お目当ての素材を匂いで探し当てているのかと思ったら、どうやら聖力を感知する事で探し当てていたようです。聖獣さんならではの方法だったのですね。


 流石に最高級素材だけあって、数は少なくとも高額・高ポイントです。買い取り額が普段の平均買い取り額の何倍もの額になりました。

「お二人が見つけた分の素材の報酬は、お二人がそれぞれ受け取った方がいいのではないでしょうか?」

 会計を分けて受け取る事も出来るので、私はそう提案します。

 貴重な素材を見つけられたのはお二人の功績なのですから、私がその分の報酬を受け取るのは筋違いだと思うのです。

「聖獣も神ポイントを使えるから、君達の役に立つと思うよ」

 ハニャさんも賛成し、報酬を受け取ってはどうかと勧めて下さいます。ですがしらたまさんもちまきさんも、揃って首を横に振りました。

「うにゃーにゃ」

「わふーん」

 お二人の様子から、「特に困っていないので」というようなニュアンスを感じます。

「ですが、ポイントでスキルを取得したりステータスを強化したりすると、今よりもっと強くなれたり、生活が便利になったりするんですよ?」

 神ポイントを具体的にどう使うか、お二人ともわかっていないのではないかと、私が言葉を重ねて説得すると、少しだけ迷う表情になります。

「ふにゃにゃー」

「うおん」

 お二人は「どうしましょう?」と言いたげに、お互いの顔を見合わせて首を傾げています。


「それなら、ミモリくんも含めて三人で山分けすればどうだい?」

「わん!」

「にゃん!」

 私達の様子を見ていたハニャさんの出した折衷案が気に入ったのか、お二人は揃って大きく頷きました。

「……それで良いのでしょうか?」

 やはり私だけが得をしているようで、申し訳なさがあります。

「二人ともそれで納得しているみたいだし、いいんじゃないかな」

「それならせめて、私の採取した物も含めて、均等に三等分という事でお願いします」

 希少品以外の普通の採取物の方も、お二人の協力のおかげで、いつもより多めに確保出来ています。なのでこちらも合わせて報酬を三等分にするという事で納得する事にしました。

 そして結局、報酬の内、聖獣さんにとっては持ち運びが不便なお金の方は私が預かって管理して、日々の生活に必要な物を買うのに使う事になりました。

 そして神ポイントの方は、各自で管理という形で落ち着きました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る