第26話 《孵化する絶望の卵》



明るい通路だ。


今までとは打って変わって、白い煉瓦れんがの壁に大きな窓が奥まで並んでいる。


外に景色は無い。

バルバトス艦内の窓の様に、陽光だけが差し込んでいる。



右手で杖をつき、辛うじて動く様になった左手にフォスから貰った崩壊因子の球体を

抱えて何とか前進した。



通路は長く、最奥がまるで見えない。

アニマの内部構造なんて想像もつかないが、この何処かにパーマがいるんだ

・・・・奴に会わなければならない。



一歩、また一歩と進む度に、弱気の虫に襲われそうになった。

そんな場合ではないのに、この絶望をくつがえせずに押し潰されてしまう想像をして

しまうんだ・・・



『・・・・・くそ』



アニマのリコフォスに、アニマのリコフォスが同期したらしい。

それは、想定された最悪な事態が既に始まりつつあるという事だ。

無限に増大できるその能力を発揮して、瞬時に人類を押し潰す・・・・


その前に新生アニマを消滅させなければならない。



・・・・出来るのか?


バルバトスは健在らしいが、今のおれ同様、辛うじて生きている状態かもしれない。

アル、ヘリコ、シアン、ニャンぷく・・・それにデュシー島ではぐれたY子と

ウェルシュ・・・・・


あいつらは・・・・・・・


・・・いかんいかん!


信じてやらにゃいかんと、自分に確認したばっかりじゃないか・・・!



しかし・・・この長すぎる通路がおれの体の消耗を付け入るように強調し、

静寂が助長して、後ろ向きな思考をじんわりと引き出して来る・・・・



その時だった!



ズドンッッッ!!!



と通路が大きく揺れ、壁や床に大きな亀裂が走った・・・!!


『・・・・・っ!!』


おれは壁にもたれて何とか姿勢を保つ。


何が起きたのか・・・・その疑問はすぐに解消された。

・・・・床に黒いペンキが現れ、そこからLEVEL4のアニマが五体出現した。


『・・・・・来たか』



アウロラの少年フォスがリコフォスを抑制すると言っていたが、恐らく

難航したのだろう・・・・過去最大の危機だ。


おれは床に座り込んで吸引レールガンを取り出し、構えた。



『ここまで・・・か・・・!!』



顔面に赤の球体を光らせて、奴等は剣を抜く。



おれは・・・・もはやどう足掻いても逃れられない死を覚悟した・・・




ドドドドオォォッッ!!!!



『うわっっ!!!!』


その瞬間、アニマの左側の壁が爆発し、その爆煙を振り払うかの様に巨大な光の柱が

三体のアニマを飲み込んでいった・・・・!!


左下から右上を突き抜けた巨大な光は通路に風穴を開け、外部の白い異空間を

露出させた。そして左下の穴から影が飛び込んできた・・・・・!



その影は瞬時にアニマに飛び掛かり、一瞬で残り2体の首をもぎ取ってしまった。



『・・・・!!!!』


『ぁ・・・あ』



『Y子っ!!!』


そう、それはY子だった!!

今の光はY子の光粒子砲だったんだ・・・!!


「・・・はぁ・・・はぁ」


「・・・みつけ・・・ました」



その姿は普段のY子とは大きく様子が違っていた・・・


服はボロボロで、全身が血にまみれていた。


『・・・Y子!?』

『おまえ、大丈夫か!?』


壁に手をつけて立ち上がり、Y子の元に向かおうとした。


Y子は早足でこちらに歩み寄り、おれの体を支える。



「生きていてよかった・・・・」


「遅れてすみません。時間が掛かってしまいました」


「増強されたアニマの軍勢が・・・・」


「・・・!」



おれは思わずY子を抱き締めた。

あらゆる神経の糸がゆるんで、今一番会いたかった奴についしがみついて

しまったんだ・・・・Y子の細い腕が、優しく背中を包んでくれた。


・・・胸の中にあった恐ろしいもやが晴れていく。


『おまえ・・・!』

『ボロボロじゃないか・・・!!』


「貴方だってボロボロです」


『よかった・・・!おまえが無事でよかった・・・・!』



「わたしは死にません・・・貴方が生きている限り」



Y子の声は穏やかだった。

全身怪我だらけで消耗しているのに・・・・


『・・・あっ!』

『・・・・すまん!』


『おまえ、怪我してるのに・・・』


はっとした。全身を怪我してる奴に・・・・

・・・それによりにもよって、Y子を抱きしめるなんて・・・


「いいんです」


『い、いや、すまん』


「・・・・」


『・・・・』


おれは離れようとしてパッと手を上げたが、Y子はくっついたままだ。



「・・・・」


『Y子?そろそろ・・・』


「ろみおーーーーーーーーっ!!!!」


バキボキゴキッッ!!


『ぎゃーーーーっっ!!!』




――30秒後、Y子はおれの怒りの拳骨によって肋骨粉砕級の抱擁を解除した。


『バカかーーー!!!』

『おれを殺す気かっ!!』


「い、痛いですね・・・」

「愛情をシェイクスピアで表現しただけなのに・・・」


『ジュリエットはゴリラじゃねーんだよ!!』

『シェイクスピアに謝れ!』


・・・だが、まあ何となく安心するよ。こいつのアホは。



『・・・それで、ウェルシュは無事か?』

『バルバトスはどうなってる?』


とりあえずポケットからハンカチを取り出して、見るに忍びないその

血に濡れたカオを拭いてやりながら聞いた。


「ん・・・」

「・・・ウェルシュは無事です。」

「貴方が異空間に飲み込まれた直後、わたしとウェルシュはバルバトスを救援し、

 ウェルシュはバルバトスの守護に、わたしはボスの救出に分散しました。」


「バルバトスは私が別れた時点では無事です。」


『・・・そ、そうか。』

『でもおまえ、よくここまで来られたな・・・!』


「戦場はアニマの異空間で歪みきっていますから、ウェルシュのゴッドハンドで

 アニマの異空間に強制的に穴を開け、わたしはそこから侵入してボスを探し

 ました。」


「初めは現行アニマの追撃に足を取られましたが、やがて新生アニマの

 戦力まで発生した為、何度も囲まれてしまい・・・この通り。

 美少女が血でびっしょびしょうじょです。」


『おまえな・・・よくそんな状態でアホ言えるよな。』

『でもギリギリで本当に助かったよ・・・』


「この空間だけ他の空間よりもセキュリティが強靭で異質でした。」

「無数に発生しては消える異空間を闇雲に探すよりはとダメ元で干渉してみた

 ところ、貴方の生体反応を感知したんです。」


「この空間にアニマが攻撃を加えて無理矢理侵入した事で空間が脆弱化し、

 わたしも力業で簡単にここへ介入する事が出来ました。」



『は・・・はは・・・流石だな。』


Vブイ!」



あらゆる恐怖や、身を引き絞る様な緊張が一気に去り、最強の援軍を得た事で

気力が沸いてきた。


『行こうY子。』

『あとはパーマを探さないと・・・!』


杖をついて歩き始めると、Y子も隣に続く。


「パーマ?」


長い通路を渡るまでの間、おれがここで得た情報をY子と共有する事にした。

一つ一つの情報を整理しながら、説明するおれの言葉をY子は無言で聞き続けた。



『・・・・パーマは、確かに裏切ったかもしれない。』



『だが、おれはまだあいつの本心を聞いていないんだ・・・・』


「・・・・それで・・・貴方はパーマを許すのですか?」


『・・・わからん。』

『けど、何も判らないままあいつを死なせる訳にはいかないだろ?』


「・・・・」


「この話は少し保留としましょう。」

「作戦を変更するにも、まずは外へ脱出してからが望ましいです。」


「今は・・・貴方の手に持っているその球体が気になりますね」



『説明した通りだよ。今の新生アニマは、現行アニマと中身が同一の存在で、

 そのアウロラの化身のフォスって少年から貰ったのがこの自己破壊因子

 なんだが・・・』



「それは,言い換えればアウロラの瞳のコピーとも言えますね。

 貴方は現在、アニマの半身を持ち歩いている様なものです。」


『・・・っ、そう言われるとそうかもな』


「ともなれば、この新生アニマの“リコフォスの瞳”は何がなんでも

 貴方をここで殺しておきたいと考えているでしょう。」


『・・・・そうだな』


『この状況はかなりピンチだ。フォスがリコフォスを抑制してくれて

 いるらしいが、ここはアニマの内部だからな・・・抑え込まれていても

 手を伸ばしたら直ぐに届きそうな距離にいるって事だろう?』


「そうなります。」


「この空間も案外・・・・」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッッ!!!



Y子の言葉を遮る様に、激しく通路が振動した!


『リコフォスの攻撃か!!』



ズゴオオォォォッッッ!!!!


激しい音と衝撃が走り、なんとおれ達の目の前の通路が突然天井から潰れ、

消滅してしまった!!そして崩壊した通路の先に別の空間が展開され、その

入口が稲妻を帯びながら通路の大気を吸収していた・・・!!



『何が起こったんだ!?』


「敵の異空間による強制介入です・・・!」

「・・・・この先に強力な兵器の反応があります。」


『通路はもう出口には続いていないんだな・・・・?』


「・・・・そうですね。」

「この空間の半分はあの異空間に押し潰されて消滅しました。」

「ここは既に敵の空間に侵食されて、リコフォスの空間と化した様です。」


『・・・・進んだら危険だな』



しかし後退も留まる事も許されなかった。

床が突然動き出し、前方の異空間に引きずり込まれたのだ!


『うぉあーーーーっ!?』


先の異空間にペッと吐き出され、おれとY子は30mほど下の地面に着地した!

・・・・・正確に言えば着地したY子がおれをキャッチしたのだが。




『こ、今度は何なんだ・・・・!』


空間の真ん中には、全長10mはある白い卵の様な物体が5mほど宙に浮いている。

周囲を見回すと、空間の色が写真のフィルムの様に反転を繰り返しており、

テレビ画面を走るノイズの線が辺りを泳いでは消えていた・・・・




「・・・・見つけたぞ・・・森川まさゆき」




・・・・巨大な卵から声が聞こえてきた


『・・・・何だあれは』


卵の上に黒い液体が染み出て人を形作った。

やがて黒が色褪せて人の色を帯びる。


・・・老人だった。白い蝶ネクタイ、黒いダブルブレストジャケット、

白い手袋に、白い革靴。金髪の長い髪を後ろに流してこちらを見下ろした。



Y子がおれの前に出た。



「・・・ようこそ、アダムの聖櫃へ」

「ここはリコフォスの領域・・・そしてキミの旅の終着点だ」



『お前は誰だ』



「私はリコフォスの瞳の代弁者。そして同時にリコフォスの瞳そのものだ」



フォスと同じ存在か。フォスはアウロラの瞳の代弁者だ。

つまりこいつこそが敵の本丸とも言える・・・!!


『・・・・お前が』


おれが口を開くのと同時に、Y子の光粒子砲がくうを貫き老人の頭部を吹き飛ばした!

破裂音と共に老人の頭頸部が液体となって周囲に飛び散る・・・!!


『わ、Y子・・・!!』

『お前・・・・!!』



「・・・・・無駄だ、イヴよ」


『!!!』


首を失った老人の傷跡から黒い液体が湧き出て、瞬く間に元の頭部を

再生してしまった・・・・!!


「私は影に過ぎない。アウロラの相手で忙しいのでね。」


「・・・だが直ぐに終わる。アウロラは破壊性に乏しいからね。

 アウロラはもはや、もう一つのアニマと同期したリコフォスの敵ではない。

 こうしてキミをここへ追い詰める事が出来たのがその証明だ」


くっ!相変わらずの劣勢か・・・!

だがここでY子のブラックホールを使う訳にはいかない・・・

アニマを異空間に閉じ込めてしまわなければ、ブラックホールで地球そのもの

が消滅してしまう。


それにまだパーマも何処かに居る筈だ・・・!


『・・・お前は、アニマが人類であるっていう証明が欲しいんだろ!』

『だが人類を滅ぼしたところでアニマの性質は変わらん!こんな事はやめろ!』



「・・・・キミはまだ解っていない様だね」

「人類としての“正しさ”というものは、正しい故に正しいのではない」

「勝者となり、生き残る時、初めて正しさが宿るのだ。」


「人類はその様に歴史を積み上げて来た。」



『詭弁を言うなっ!』

『なら人類は常に正しいってのか!間違う事があるから人間だろう!』



「間違いなど問題ではない。のちに残る人の結論がある限り正しさは続くのだ。

 そして古き正しさは過去となり、歴史となる。それが代謝であり、故に

 常に人類は正義の存在である。」


「その正義の“共存”こそが人類本来の姿ならば、アニマはその全てを

 内包した存在。故にアニマは人類なのだ」



『何が内包だ・・・!そんなのはただの無理心中じゃないか!!』

『お前が言っているのは理不尽な強者の理論だ!』



「人は生きている限り、常にその存在は強者による体現なのだよ」


「そして私は今、現にこうして生きている。人類の回答としてね」

「それが認められないのならキミは何故、アニマが産み出したαアルファ

 人としてKINGSへ迎え入れた?」


「キミはアレを人であると認定した。そう、それでいい。」

「その瞬間アレは人となったのだ。それがキミの正しさだ。」

「その想いをキミが守り抜けばいい。」



Y子が口を開いた。


「・・・・単一と重複のパラドックス」


「しかしそれなら尚の事、アニマに人の証明など不要の筈。」


「それなのにアニマはその証明を求めた。」

「・・・・人はそんなものを必要としません。何故なら人には、自らを

 人と認めてくれる他者がいるからです。」


「人の証明を欲しがる事は、それ自体が共存を失った事の証明です。

 ・・・リコフォスの展開は、単なる孤独な言葉遊びの迷妄に過ぎない。」



「まるで他人事の様だね、イヴ。」


「お前はこれから生まれるアダムの反存在としてアウロラによって産み出された。」

「・・・お前の存在は、それそのものがアニマを人類たらしめる確かな証拠として

 ここに在る。」



『・・・ど、とういう意味だ?・・・Y子』


「・・・・・・」




――「聞いちゃ駄目だよ、森川まさゆき・・・・!」――



フォスの声だ!


『フォス!』


―「リコフォスの言葉は所詮、システムレトリック的な詭弁の領域を出る事はないんだ」―


―「今の言葉の応酬も、過去に無限に繰り返してきた自問自答の反復に過ぎない」―



―「・・・やつの言う通り、ぼくがリコフォスを抑制するにはどうやら

  力が足りないみたい・・・でもまだ対抗はできる・・・!」―


―「キミはアニマの討伐を急いで・・・!!」―



「・・・・アウロラよ、自己崩壊因子を手放したお前を消去する事など、

 私にとっては多少厄介な害虫を駆除する程度の事なのだ。抵抗など無意味だ。」


―「そうかな。」―


―「リコフォス、おまえを足止めして時間を稼ぐこと位は出来る筈さ。」―



「ほぅ、どうするのかな?」


―「・・・・こうするんだ」―



すると、老人の頭上に巨大な映像が映し出された。

そこにはリコフォスの老人が映っている。

・・・しかし場所は違う様だ。此処を映している訳ではない。



―「おまえの本体の位相を捉えた。」―

―「その映像に写されているのは正真正銘おまえの本体のはず。」―



「・・・・・それで、どうしようというのだ」


「私のセキュリティを突破する攻撃を仕掛けるのか?」

「・・・既に防戦で手一杯のおまえには不可能だ。」



―「・・・・そう、ぼくにはね・・・・」―



『・・・!!!』

『あれは・・・!!』



映像の老人の背後に、ナイフを手にした男が突然出現した・・・!

そして男は躊躇なく老人の首を掻っ切ってしまった!!


・・・・そう、パーマだった!!



「・・・・・!!!」


すると映像の老人とこちらの老人は動きをリンクさせて膝をついた!

真っ黒な血が吹き出る・・・・・!



―「姿なき道化・・・切り札 ジョーカーさ。」―



「・・・だが無駄だ・・・私を殺したとしても、リコフォスは無限に私を再生

 させる事が出来る。私はおまえと同様、駒なのだ。森川まさゆきを消去する

 為の媒体に過ぎない・・・無限に再生する事が出来る」



―「・・・そう。」―


―「たとえおまえの本体を討ち滅ぼす事が出来たとしても、リコフォスはまた

  おまえを生み出すだろうね・・・・だから毒を盛らせてもらったよ。」―



「・・・・貴様・・・・」


―「おまえの本体を切り裂いたファントムのナイフには、自己破壊因子を模した

  特殊性ワームを仕込んでおいた。おまえを触媒にしてリコフォスに直接

  ダメージを与える神経毒さ・・・・!」―


ついに老人はその両手をも地につけた!


―「森川まさゆき!急いで!」―


―「これはリコフォスを抑えつける為の一時的なワームウィルスだ。」―

―「今からアウロラの全てのプログラムをアニマの質量圧縮に費やすから

  その間に《アダムの聖櫃》を破壊してほしい!!」―


『な、何なんだよ《アダムの聖櫃》って・・・!』


―「あの卵さ」―

―「あの中にはアニマの造り出した究極生命体アダムが眠っている!」―

―「あれを解放されたら手に負えないよ!」―


・・・だーー!もう訳がわからん!

知らん単語と理屈を突きつけられても頭がショートするだけだっつーの!



「ボス。アニマは元々地球サイズの質量を持つ存在です。」

「それを圧縮させてこの地球上に時間跳躍して現れたんです。」


「そのアニマがリコフォスの暴走によって、今急速に膨張しています。

 こうなったら私の異空間ではこの新生アニマを包み込む事は出来ません。」


「だから、リコフォスに毒が回ったこの隙にアウロラの力でアニマを再び圧縮し、

 異空間に閉じ込めてブラックホールを発動させます。」


「その間にあの卵からアニマの産み出した《アダム》が出現する筈です。

 その前にあの卵を・・・聖櫃を壊してしまうんです。」



『・・・・その《アダム》ってのは・・・』



「・・・・無駄だ・・・・!」


『!!!』


卵の上の老人は、周囲に巻き起こった激しい黒き稲妻と共に立ち上がった・・・!


稲妻は激しく暴れ狂う龍の様に周囲を駆け巡り、四方へ駆け抜けていく!

まるで雷撃の嵐だ!!


―「・・・うっ・・ぐあっ!!」―


『フォス!?』


そして上方の映像を見上げると、老人を仕留めたパーマの体も黒い雷撃に

包まれて空間ごと爆発し、異空間の外に吹き飛ばされてしまった!!


『パーマっっ!!!』


映像は消滅してしまった・・・!


『フォス!おいフォス!!』



雷撃はこちらにも襲い掛かる!おれはY子に引っ張られて横に大きく躱わし、

何とか雷撃に打たれずに済んだ・・・!



「確かに、これは痛い隙を突かれたものだ。」

「しかし、たとえリコフォスが毒に侵されようともアダムを呼び起こす事は

 可能だ・・・・アダムは既にリコフォスとの接続を絶っている。」


「・・・アダムはまだ不完全ではあるが、キミ達を消し去る事は容易だろう」



『ぐっ!!』

『よく判らんが、危険な存在を生み出されてたまるか!!』


『Y子!光粒子砲で頼む!!!』


「了解です・・・!!」



Y子は予めチャージをしていたのだろう。

おれの呼び掛けに答えた瞬間、間髪入れずに巨大な光のエネルギー弾を放った!!



ドゴオオオォォォォッッ!!!!!


強力な光と衝撃波を放ち、老人諸とも巨大な爆発に飲み込まれた!!


『・・・・・・どうだ!?』



周囲の煙が晴れ、《アダムの聖櫃》はその健在を現した・・・!

なんと、Y子の光粒子砲をまともに受けのに、その表面が軽く焦げた程度で

破壊には至っていないのだ・・・!!



『そ、そんなバカな!!』

『今のは確実にいつもの光粒子砲よりも威力が強かったのに・・・!!』


「・・・あのリコフォスの老人は、聖櫃と一体化した様ですね。」


『一体化だって!?どういう事だ?』


「アダムはまだ未完成です。」

「その本来の能力に満たない現在のアダムは孵化するにはまだ早すぎる・・・

 だから卵と一体化して無理に目覚めさせるつもりです。」


『その・・・アダムってのは一体何なんだ?』

『“究極生命体”って言ってたな・・・・強いのか?』


「・・・・KINGSの兵器はアニマの兵器を模倣して生み出されました。」

「言ってしまえばアレは本場アニマの究極的兵器です。」


「強いかと言われれば・・・・・まさにとでも言っておきましょう。」



『・・・きゅ、究極・・・』



・・・・地響きが鳴った・・・・


ビキビキと卵に亀裂が入り、卵が鼓動を打ち始める・・・!!


やがてその亀裂から青白い光が漏れ出て、その光に照された周囲の異空間にも

亀裂が走った・・・!




――瞬間、卵の殻が完全に崩壊し、凄まじい衝撃波で周囲の異空間も硝子の

様に砕け、おれとY子も吹き飛ばされてしまった!!



広域に巨大な赤子の泣き声が響いた・・・・



アダムが生まれてしまったのだ・・・・!!



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