第二十四話 金の門
朝食に作った卵焼きの香りが漂う中、僕は眠っているミキに声をかける。
「ミキ!朝ごはんできたよ!」
海の門の攻略で疲れたのか、ミキはいつもよりぐっすり眠っているようだったので、先に起きた僕が朝食作りを担当した。
「ふぇ……?もうそんな時間?」
ミキは信じられないという様子だった。
「私、ぐっすり眠っちゃって……」
「大丈夫だよ。先に顔洗っておいで」
「うん!」
ミキはバケツに水を汲み、顔を洗い始めた。
今日の朝食はレタスとトマトのサラダに、白米と卵焼きだ。そして飲み物は、レモンラッシー。
僕は二枚の皿へ食材を乗せ、いつでも食べ始めることができるよう準備した。
「ごめん!今終わった!」
「じゃあ、食べようか!」
僕たちはそれぞれ手を合わせ、「いただきます」と言った後食べ始めた。
いただく命と食材に感謝を忘れずに。
まずはレモンラッシーを飲む。レモンラッシーとは、牛乳にレモン汁を入れ攪拌したものだ。簡単に作ることができる飲むヨーグルトと言えばわかりやすいだろう。
僕はそこからサラダをパクっと一口。そこへ卵焼きと白米。モグモグと噛んだらレモンラッシーを飲んで胃に流し込む。これが意外にも美味しく癖になるのだ。
「ごちそうさまー!」
「ごちそうさまでした」
僕たちは、ほぼ同時に朝食を終えた。
片づけをしながら、次の門の話を始める。
「次は”金の門”だよね?」
「うん。昨日の夜、ガイドブックをざっくり読んだけど、「金貨や金の像が大量にあり、ありとあらゆる物が金だらけで人気の門」って書かれてたよ」
「金だらけかぁ」
金貨一枚でも相当な価値があるが、金の山や金の海、持って帰られるわけはないが一目でも見たい気持ちはわかる。観光者の間で人気があるのも無理はないだろう。
「でも、門の塔の中じゃ金貨があっても意味ないよね~」
「確かにそうだね」
ここではお金を使うことがない。店がないので買いたくても買うことができないのだ。
僕たちは身支度を済ませ、金の門の前までやってきた。
観光ガイドブックにも載っていた通り、とても長い列が出来ていた。
「うわぁ。すごい人」
「みんな金が好きなんだねぇ」
僕たちは列の最後尾に並んだ。並んだ途端また後ろに人が、そしてまた後ろに……と列はどんどん伸びて行く。
「本当にすごい人気なんだね」
「入るまでに日が暮れちゃいそう」
僕はミキと話ながら列に並んでいる人を観察する。
並んでいる人にこれといった共通点はなく、老若男女様々だ。観光のついでに見ておこうという考えの友達連れが大半だなといった印象を受ける人がほとんどだが、一部他人を疑うような鋭く睨む目線でキョリキョロしている人が数人居た。
僕はヒソヒソとした声でミキに話かける。
「何人か怪しい人がいるね」
「私も思った。なんか挙動不審だよね」
「金貨狙いの人もいるだろうし、盗人がいてもおかしくないな……。持ち物には注意しよう」
「そうだね」
門の塔では”他人の持ち物を盗む”行為は禁忌だ。盗むと途中退場となってしまうためやる人はいないだろうが、そんな禁忌を全く知らずに入ってくる観光客もいる。警戒は怠らないようにしよう。
「それにしても……あと何時間くらいで入れるんだろうね」
列は進んではいるが、進み具合は牛歩のようだ。先は長い。
「そうだ。コウがバーオボに居た頃の話聞かせてよ」
「僕がバーオボに居た頃?」
「うん。七日間講義のとき忙しくてあまり聞けなかったし、今ならいいタイミングでしょ?」
「まぁ、確かに。それにこのままボーっと待ってるだけもね。でも、僕がバーオボに居た頃って言っても、病気が治るまでは寝たきりだったからなぁ」
僕は8歳までずっと寝たきりだった。当時は少しなら立って歩くことはできたが、10歩ほどが限界だった。あまり無理をしすぎると熱を出してしまうので、とりあえず安静にしているしかなかった。
「そんなに重い病気だったの?」
「うん。でも原因不明で……。お医者様から渡された薬を飲んで安静にしているしかなかったんだ」
「そうなんだ。でも今ではすっかり元気になったんだね」
「うん。どういうわけか急に治ったんだ。お医者様もびっくりしていたくらい」
「そんなに急だったんだ。不思議だね」
「うん。そのあと母さんを探しにいくためにアルバイトして貯金して……」
「学校とかは行ってなかったの?」
「行ってなかったよ。勉強は家ですればいいし、学校に行く時間をアルバイトに充てたかったから」
「そうなんだ。アルバイトって前に言ってた牧場の?」
「うん。あとはヨーゼフさんっていう母さんの知り合いが喫茶店とバーをやってたから、そこでも働かせてもらってたんだ」
「あ!だから料理上手なんだ」
「僕、料理うまい?」
「とっても上手だよ!」
料理はあまり自信がなかったが、身近にいる人に褒めてもらえると嬉しいものだ。
「でもコウのお母さん、本当にどこに行ったんだろうね」
「うん……」
僕は胸元に仕舞ってある”あのペンダント”を取り出した。
「それは?」
「母さんが発った日、僕の枕元に置かれてた物なんだ。母さんの形見なんだけど、今はお守り代わりにしてるんだ」
ミキはペンダントをまじまじと見る。
「綺麗な青色だね」
「うん」
「不思議なペンダント……。ちょっと魔力を感じるような」
「魔力?」
「うん。本当に少しだけど」
ミキはペンダントを裏返したりして、よく観察をしている。
「この裏側の薔薇の刻印は?」
「母さんを象徴する刻印なんだって。イズルザス帝国の姫だったとき”紅薔薇の姫”っていう二つ名を国王から授かったとかなんとかで」
「それで薔薇の刻印が……」
僕はミキからペンダントを受け取り、胸元へと仕舞う。
「一度コウのお母さんに会ってみたいなぁ」
「母さんに?」
「うん。元お姫さまで、魔法騎士で……。そんな人なかなかいないもん。もちろん、コウの友達としてもだけど、一人の女の子としてコウのお母さんとお話してみたいの」
ミキと僕の母さんが会うことになったら……。入る隙が無くなりそうだなと思う僕であった。
少しずつ列は進んでいき、僕たちは真ん中あたりまできていた。
「だいぶ進んできたね」
「うん。ここまで来たら……」
僕はここで金の門を見る。
「本当に金ぴかだね……」
ミキもここで金の門を見た。
「眩しいね……」
金の門の門は、全てが金色で出来ている。装飾などはないが、金色なので派手さはピカイチだ。そして遠くにいるときにはあまり思わなかったが、大きさもかなりある。
「門も結構大きいね」
「うん。大きいし、金ピカ……」
前に並んでいる人たちが減っていくにつれ、その門はとても大きく感じてくる。
あともう少しで僕たちの順番が回ってくるタイミングになったとき、金の門の前に立つ門番の姿が見えた。
「金の門へ入っても……亡者になるな……」
手には長い柄のついたオレンジ色に弱く光るランタンを持ち、相変わらずボロボロのローブを着たその門番はそう言った。
「たぶん金貨を見てお金に目をくらませるなってことかな」
「だったら大丈夫じゃない?」
次に、僕たちは金の門の詩が書かれている板金を探す。
「あ、あった」
ミキが指さす方向へ目をやると、その板金は金色にピカピカと輝いており、いかにも金の門の詩が書かれているであろうことがわかった。そして、金の門の詩を読む。
金の山 金の海 金の土
すべてが金の世界
登れ 泳げ とっていけ
金の者になれ
金の門の詩は全ての物が金でできていることを詠っているのだろうか。見渡す限りが金の世界……、早く見てみたくなった。
目の前の門が大きくなり、とても眩しい。僕もミキも少し目を窄めてしまうほどだ。
そして、いよいよ僕たちの順番が回って来た。
「やっとだね……」
僕たちは金色に輝く門を押し、中へ入った。
中はいつもの通路……と思いきや、通路の壁、天井、床、ありとあらゆる面が金色で輝いている。
「うわっ!眩しい……」
僕たちは手や帽子を使い、できるだけ目元を暗くする。そうしないと前を向いて歩けないからだ。
「金ピカなのはいいけど……ここまでだと目がしんどいだけだよ……」
ミキは呆れているようだ。
呆れるのも無理はない。一面金ピカだといくらゴージャス好きでも飽きるし、持て余すだろう。
コツコツと足音を鳴らしながら眩しい通路を進んでいく。すると出口が見えてきた。
「出口の先は暗いといいけど……」
「たぶん眩しいだけだよ……」
僕予想は的中。出口の先はまたも眩しい世界だった。
「通路よりも眩しいね」
「サングラスを買っておくんだったよ……」
ダミアンさんのお店に攻略者向けサングラスが並べられていたことを思い出した僕は、この時とても後悔していた。
それにしても見渡す限り金の世界だ。遠くに見えるのは金の山、その横には金の海、目の前は金の地面。空も、雲も、太陽も、揺れる草木や花も、何もかもが金で出来ていた。
少しずつだが金の世界に目が慣れてきた僕たちは出口を探し始めた。
詩や門番の話を思い出しながら推理をしていく。
「亡者になるなと、金の世界がどうこうって内容だったよね」
「うん。門番の話は忠告に聞こえるけど、詩は……」
金の門の詩は、明らかに人を騙すよう作られたと僕たちは感じ取った。
「金の門で金をとるとどうなるんだろうね」
「うん……」
金でできた地面を歩いていく。すると、遠くに見えていた金の山が目の前にきていた。
「結構大きいね……」
金の山へと近づくにつれ、木が多くなってくる。どうやら森に入ったようだ。木も一本一本全てが金で出来ており、金の木の森となっている。森へ入ったはずなのに、全てがピカピカと光っており、眩しい。
「ねぇ。ミキ。あの木……」
僕はあることに気づく。ある一本の木に木の実が生っているのだが、その実が金貨そのものだったのだ。
「木の実が金貨?じゃあ、この木は金貨が生る木なの?」
ミキも大変驚いたようだった。
「……これ、食べられるのかな」
ミキは間を置いたあとそう言った。僕はその言葉に吹き出した。
「ミキ……本当に食いしん坊だなぁ」
僕はツボに入ってしまったのか、笑いが止まらなくなった。
「もう!そんなに笑わないでよー!」
ミキは少し紅潮させながら言う。
金の森に僕の笑い声が少しこだまするのだった。
僕たちは少し歩き、金の海へとたどり着いた。
「これ海水なんだよね……」
海水は外の世界と同じように透明なのだが、金の空の色を反射しているのだろうか、黄金に輝いて見える。
僕は海水を少し手で掬い、少し口に含む。
「しょっぱ!これ海水だよ」
やはり外の世界の物とほとんど差異がない。まるでそのまま持ってきたかのようだ。
海水の次は、手で掬った砂を観察した。
「すごいや。砂も全部金だよ」
「この砂だけでもお金持ちになれそう」
川なんかで砂金を集める話がよくあるが、砂金集めをしている人がこれを見たら泣くだろう。本当に全てが金で出来ているのだ。
すると、海の中から何かがトコトコと歩いてくる。
「カニだ!金で出来たカニだよ!」
僕は少し興奮しながらミキに声をかける。
「コウ!この貝殻も金でできてるよ!」
どうやら金の門にいる生物も全身が金で出来ているらしい。
金、金、金……。ここまで何もかもが金だと価値なんてないのでは?と錯覚するほどだった。
「ねぇねぇ。ここに来るまでに思ったけど、私たちの前に何十人かこの門に入ったよね?」
「うん」
「誰か一人でも見かけた?」
ミキは突然寒気がするようなことを言い出す。
だが、思い返しても人っ子一人と見かけなかった。
「言われてみれば……誰も見かけてないね」
「だよね……。どこに行ったんだろう?」
「ちょっと歩いて探してみる?」
僕たちは金の海から離れ、別の場所へと向かった。
少し歩くと、今度は林のような場所へとたどり着いた。
その林の木々を良く見ると、あの金の森で見かけた金貨の生る木が数メートル間隔で生えていた。まるで人の手で植えたかのようだ。
「ここは金貨の生る木の群生地か、畑なのかな?」
だが、ここの金貨の生る木は一本一本に手入れが行き届いており、いかにも野生という雰囲気ではなかった。
「ねぇコウ、あれ見て……」
ミキが声をかけてきたので目線をやると、そこには金で出来た人型の像が立っていた。
「これも金で出来てるね。見たところ男性みたいだけど」
人型の金の像は、あごに沢山の髭を生やした身長170センチ前後のヒューマニ族の男性だ。今にも動き出しそうなくらい精巧な作りである。
「でもこんな場所になんで……」
ミキの言う通りだ。何かの建物の前や美術館の中ならともかく、とても不自然な場所に立っている。
そして、不思議なポーズをしていることも気になる。
「なんか……。今からこの生ってる金貨を採ろうとしてるポーズだよね」
その像は、右手を上げており、目線は生っている金貨へ向けられている。金貨を収穫している最中に金の像にされてしまったかのようなポーズだ。
「ねぇ!ミキ!あっちにも像があるよ!」
少し離れた場所に同じような像が二つ並んでいた。だが、最初に見つけた像とは性別も身長も種族も異なる。
「こっちの像はドガール族の男性だね。隣はヒューマニ族の女性……」
この二つの像はカップルなのか仲間なのかはわからないが、両手には沢山採ったであろう金貨が山ほど積み上げられていた。
「コウ。これはあくまでも私の想像なんだけどさ……」
「うん」
「この生ってる金貨を採ると金の像になっちゃうとか……」
「そんなのあるわけ……!」
「でも、虹の門を思い出してよ。それとナナパ先生の話」
そうだ。ここは門の塔の中。人を”門の肥やし”にして魔力源にする門が存在する場所だ。
そのために人を金の像にして吸収していても不思議はないのだ。
「……」
「金の門は早めに抜け出したほうが良さそう。出口を探そう」
僕たちは出口を探すことにした。
金貨を採ると金の像になってしまうようだったので、一先ず金貨の生る木が沢山生えている場所からは離れた。
だが、出口どころか手がかりすら見つからない。
「ちょっと空を飛んでみるよ」
ミキはそう言って箒を取り出し、ゆっくりと上空へと飛んで行った。
「何か見えるー?」
僕は上空にいるミキへ声をかける。
ミキは飛びながら360度見渡したあと、ゆっくりと降下してきた。
「さっき居た金貨の生る木が沢山あったとこの近くに建物っぽいのが見えたよ!」
「あそこを通ることになるのか……。仕方がないか。生ってる金貨には触れないように進もう」
僕たちは来た道を引き返し、先ほどの金貨の生る木が沢山あった場所へと向かった。
出来る限り木には近づかないよう注意し、周囲を警戒しながら奥へと進む。
さっき見つけた像以外にもいくつか金の像があった。どの像も金貨を手に持っていたり、生っている金貨に触れようしているような物ばかりだった。
「かなりの人数が金の像になったのかな」
「うん……」
僕たちは警戒しながら歩みを進める。
すると、空に金色の雲が立ち込めてきた。雲行きが怪しい。
「ねぇ、雨が降ったらどうなるのかな?」
「ミキはどうなると思う?」
「……金の像になっちゃうとか?」
「でも、海水を触ったときなんともなかったよ?」
「じゃあ、大丈夫かな」
僕たちは雲行きを心配しながらも、奥へと進む。
「あ!建物が見えてきたよ!」
「私が見たやつだ!」
金貨の生る木たちの間から建物が見えてきた。
そして、雨が降り始めた。パラパラと水滴を落とした後、サーッという音を鳴らして雨は降る。
「傘をダミアンさんのお店で買っておいてよかったよ」
僕たちはダミアンさんのお店でそれぞれ買った傘を開く。傘の表面や柄を伝って、水滴が落ちてくる。その水は透明だった。
「雨も普通の水なんだね」
「うん。早とちりして損しちゃった――」と、ミキが言った瞬間、ミキの傘の一部が金色に染まった。
僕たちは一瞬何が起こったのかわからず、傘から上空を覗く。
すると、雨の水滴で揺れた木から生っている金貨が落ちてきていた。
僕は咄嗟に傘で身を隠し事なきを得たが、傘の一部が金色に染まった。そしてその染まった部分が心なしか重くなった。
「ミキ!ここも危険だ!建物へ急ごう!」
僕たちは出来る限り傘から体を出さないよう注意しながら、駆け足で奥に見える建物へと向かう。
上から降ってくる金貨のせいで傘は金色に染まっていき、どんどんその重さを増していく。持っているのも辛くなるほどだ。
「うぅ~重い~!」
「ミキ!頑張って!もうちょっとだから!」
僕はともかく、ミキにはとても重く感じるだろう。ましてや走りながら重くなる傘を持たなければならないのだ。足も腕も悲鳴をあげている。
ミキが発見した建物が目の前に見えてきた。僕たちは最後の力をふり絞り、建物の中へと滑り込んだ。
「これで金貨の雨は……」
どんどん重くなる傘を持ちながらかなりの距離を全速力で走ったため、僕たちはぜぇぜぇと声を出すほど息切れしていた。
ふと持っていた傘を見ると、全面が金色に染まりピカピカと輝いている。
「もうこの傘は使えないね……」
「うん。重すぎて傘にならないや」
二つの金色の傘を放置し、建物の入り口から外を見る。雨はまだ降っているようだった。
そして僕たちは信じられない光景を目の当たりにする。
「ねぇ、あれ……」
「うん」
木の近くにあった一つの金の像の雨水に晒された部分が溶けていたのだ。まるで金色の液体のようになっている。
「やっぱり人に危険な門なんだね」
「うん。傘をさして正解だったよ」
僕はもう一度傘に目をやり、少しだけ感謝の念を送った。
僕たちは建物の奥へと進む。この建物の内部も全て金で出来ており、ピカピカで眩しい。
目を窄めながら歩みを進めると、目の前に階段が見えた。
「ねぇ!コウあれ!」
ミキが指さした方向へ目をやると、そこには門が聳え立っていた。出口のようだ。
「これでなんとか……」
僕は大きなため息が出た。安泰のため息だ。
僕たちは10段ほどある階段を上り、門を開ける。
門の先はあの金ピカのあの通路だった。
「早く抜けよう!もうこんなとこイヤ!」
「そうだね」
僕たちは門を閉じ、金ピカの通路を速足で歩き始めた。
「もう金の門なんてこりごり……」
「でも、次は”銀の門”だよ?」
「……いやぁぁぁ!」
ミキの絶望に満ちた叫び声が通路中に響き渡る。
「もう早く戻ってご飯食べて寝よ!今日の事思い出したくない!」
ミキと僕は先ほどよりもスピードを上げ、出口へと向かう。
いつもよりリズムの早い足音が響く中、出口が見えてきた。
ミキは勢いよく門を開け、両手を大の字に開き、そこへ飛び込む。
「戻ってきた~!」
少し控えめな声をあげるミキだった。
僕はここでマップを開く。”金の門”と記された場所に星マークが付いていた。これで”金の門”はクリアだ。
「コウ!ちゃちゃっとご飯食べちゃうよ!」
ミキは僕に催促する。
「そうだね。すぐ食料取ってくるよ」
明日は”銀の門”の攻略だ。金の門のような危険な門なのか。全く予想がつかない。
銀の門のことを考えながら、食料棚から玉ねぎやニンジンなどを拝借する。
「今日はカレーがいいかな。少しだけ具を大きく切ろう。そしてスパイスは控えめにして、優しい味に……」
僕はふと母さんを思い出す。母さんも金の門をクリアしたのかな。もし金の門で像にされて溶けていたら……。僕は首を横に振り、ネガティブな想像を消し飛ばす。
魔法騎士で一度門の塔をクリアしている母さんがあんな場所でヘマをするわけがない。
僕はカレーを作ることに思考を集中させ、ミキの元へと向かうのだった。
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