美の秘訣

美の秘訣

　コラーゲンは経口摂取だと意味が無いとされているが、医食同源、口に入れた栄養成分が全くの無意味だとは思えない。

　だから今日も、居酒屋でマグロの兜焼きを注文し、目玉を、その奥のコラーゲンを味わう。

　常連のオジサマたちも、若いグループも、引いているのが分かる。

　店を出たあと、少し路地で待つ。

　先ほどの若いグループの女子が一人になるのを待ち、声をかけた。

「ねえアナタ、美容に興味は無い？」

　急に声をかけられたせいか驚いたようだが、こちらが同性だと分かり呼吸を整えた。

「さっきはすいませんでした」

　私が目玉を食べていた時の反応を言っているのだろう。

「慣れてるわ。それにアナタは乗らなかったでしょ？」

「でも…」

「いいのよ。アナタはそれだけキレイなのよ。心が」

「ありがとう、ございます」

「だから、外見も美しくなってほしいと思うのよ」

　彼女は、居酒屋でのお酒も手伝って、ほのかに顔が赤くなっている。

「この先に私のお店があるの。あ、お店と言ってもエステサロンよ。そこでお肌の状態とか見させてほしいと思って。どうかしら？」

　こくり、と彼女はうなづいた。

　翌日。

　ゴミ置き場に死体が遺棄されていた。

　司法解剖の結果、生きたまま目をえぐられ、皮を剥がれ、血液さえも絞り取られたと分かった。

　その晩。

　居酒屋でマグロの兜焼きを注文する、真っ赤なワンピースの女が居た。

「アナタも、美しい私の一部になれて嬉しいでしょ？さあ、たんとおあがりなさい」