第24話 魔族

 俺達はデートで公園に行く最中、緑髪緑目の男に出くわした。


「そこのお嬢さん、ちょっと遊ばないかい」

「いいです。私にはルークがいるので」

「つれないなあ。なら実力行使ってことで」


 緑髪緑目の男は真っ黒い玉のような魔法を放つ。俺は結界魔法で防御した。今のは闇属性魔法だろうか。闇属性魔法は普通の人間が扱える魔法ではなかった。普通は火風水土の魔法が普通の人間に使えるのだが、普通の人間に使えないのが光属性と闇属性魔法は何故か使えない。こればかりはイメージで何とかならないらしい。そんな魔法を使ってくるこの人物は何者だろうか。


「ほう、君が噂の魔道士か。ちょうどいい。君たち魔王復活に興味はないかい?」

「興味はあるがいきなり攻撃してきてお前は何なんだ」

「おーっと自己紹介がまだだったね。僕はタロン・エスメラルダ。魔王様に仕える魔族だよ」

「ルーク、魔族は危険だよ。一旦学園に報告しに行こう」

「それはさせない。何のために僕が動いてると思ってるんだ。決めた、君達は生け捕りにする」


 そう言って魔族の男タロンは闇属性魔法を放つ。今度は槍型の真っ黒なものだったが、俺も反撃を開始した。俺は光速で土属性の初級魔法ストーンバレットを放つ。敵は威張り散らしていたが今の一撃で吹っ飛ばされた。


「カハッ」

「魔族の実力はこの程度なのか?」

「貴様、何者だ」

「何者ってさ、俺はただの学生だよ。連行されてもらおうか」


 俺はタロンに手錠をかける魔法をかける。土属性だが、相当な衝撃がない限りびくともしない手錠だ。そういう魔法を使えるようになったのだ。ちなみに土ということで名前の無いダンジョンに使われていた魔法を無効化する石の構造にしてあるためかけている人間は魔法を使えなくなる


「デート、終わっちゃったね」

「今日はこんなんだしまた明日でもやろう」

「貴様等に明日が来ると思っているのか?」

「負けたお前がそれを言うか」

「こんな手錠、僕の魔法で」


 タロンは魔法を使おうとするが使えないことに気付いたようだった。


「くそっ、僕に何をするつもりだ」

「まず、エレンを連れていって何をしたかったんだ?」

「誰が言うか」


 タロンが反抗した時、俺は土属性の初級魔法ストーンバレットを撃つ。光の速さで飛んでいった土の塊はタロンの腕をへし折った。そして回復魔法を放つ。こうして魔法を撃っているが、何故俺のは手錠によって無効化されないか、それは手錠の構造を俺の魔力を無効化しないようにしているからだ。


「次は何回お前を痛め付けようか」

「ひっ、魔王様の復活のためです。復活には魔女の依り代が必要なんです。その体を通して魔王が復活するんです」

「魔王について知っていることを全て教えろ」


 俺はタロンから魔王についての情報を引き出す。復活する魔王は女でユーライアというらしい。魔族は人間と元は同じでそれは魔王もそうだそうだ。魔族は人間が進化した形でいわゆる新人類のようだった。そうして人間が魔族に変わろうとした過程で勇者が神によって召喚され、魔族達は封印されたらしい。魔族を束ねるのが魔王で、魔王は復活すると人間を魔族に進化させていくようだ。因みに魔族には赤髪や青髪、緑髪などの人間では珍しいような髪色が多いらしい。


「そして、魔王様は復活して我々を助けて下さる。我々を封じ込めた勇者を決して許さないだろう」

「それだけ聞くと人間が悪いように思えるが」

「だろう。だから、お願いだから協力してくれないか」

「そのためにエレンの体を乗っ取られるなら俺は全力でお前らの計画を潰すぞ」

「魔王様は体が消失して魂だけの状態だ。復活の時期は僕ら魔族の封印が弱まる頃と決まっているんだ。そこの魔女でなくてもいい。誰かを依り代にしなければいけないんだよ」

「それは、誰かの人生を終わらせてもなのか」

「人間のほうが僕らを殺していただろう今さら何が悪い」

「こいつを学園に引き渡そう」

「そうだね。私だったとしても私以外だったとしても人の人生を終わらせるなんて酷いことして許される訳がない」

「待ってくれ、お前は希望だ。魔女と仲がいいなら分かるだろう希少な髪色への差別を。希少な髪色は魔族の先祖返りなんだ。魔族は差別されてきたんだよ」

「それがどうした。やり方が汚いお前達を信用出来ない。それにエレンが魔族でも俺は愛してることに変わりはない」

「ルーク。ありがとう」

「ちっ、今に分かるだろう。魔王が復活したほうが僕らにとって良いと」


 俺達はタロンを連れて学園に向かった。アベルが見回りに来ていた。


「先生、こいつ魔族みたいです魔王復活のために動いてるらしいですよ」

「何だって!ありがとうルーク君、こちらで連行させてもらうよ」

「離せ、貴様、まだ分からないのか」

「犠牲が出るような計画には乗るつもりはない」

「お前の隣の女も魔族の癖に」

「ん、どう言うことルーク君?」

「あいつの戯れ言です」

「分かった」


 タロンは無事連行されたのだった。俺達は学園で別れ別々の寮で休むのだった。その後、いつものようにカイルの愚痴を聞かされた後、眠りについた。寝ている間に夢を見た。


「貴方があの子を守ってる子ね」


 草原で長く艶やかな深緑の髪の赤い目をした美女に声をかけられる。


「貴方は誰ですか?」

「私は魔王ユーライア。ルーク君、貴方に伝えたいことがあってこうして夢に出てきてるの」

「何ですか」


 俺は魔王と聞かされたものの、タロンから聞いた話もあり、魔王が必ずしも悪ではないという認識ができていてそう聞いたのだった。


「私は他の魔女の体を借りてまで復活したくはない。でも封印されてる同胞は解放したい」


 夢の風景が変わる。それは人間の勇者によって封印され、泣きわめく子どもや女性などの弱い人の映像だった。その子どもの中にタロンらしき人物がいた。


「あなたはこれを見てどう思いますか?」

「解放してやりたい。でも、どうして人間は魔族を封印したんだ?」

「貴方方が魔女狩りと呼んでいる組織、あれには元となった組織があります。教会です。あれは魔族を人類の敵として祭り上げ神に 魔族の生け贄を捧げました。それによって神が協力し、私達を封印したのです」

「それは神って言えるのか」

「貴方が声を聞いた存在はその神です。彼らは生け贄を捧げたら見返りにそんなことをする奴らです。映像を見せましょう」


 そこには神と思われる存在が集まって人間の動きを観察し娯楽として楽しんでいる姿があった。神託でステータスが分かるのもゲームっぽくするためのようだった。


「貴方に命令する権利は私にはありません。ですが、どうか同胞を救って下さらないでしょうか」

「エレンに危険があるなら俺は出来ない。でもこれだけの命見捨てられない」

「大丈夫です。神にとって私の復活こそが娯楽、他は今は気にしていないようです」

「分かった。それで、封印されてる場所はどこなんだ?」

「シルヴェニア王国の教会の地下です」

「じゃあ、その封印解いてやるよ」

「ありがとうルーク君」


 そうして魔王ユーライアとの夢での会話が終わった後、俺は目覚めた。


「おうルーク目覚めが良さそうじゃないか」

「おはようカイル」


 俺は起きて授業の用意をするが、夢で起きたことを考える。あれは夢だったがあまりに鮮明に記憶が焼き付いているし、夢の中での約束もある。俺は神託に行くと見せかけて教会の地下に封印されている魔族を解放しようと思った。時間は授業の時間になった。


「ねえ、ルーク、夢見たんだけど」

「俺もだ。魔王ユーライアが出てきた」

「私も。教会の地下に封印されてる人達がいるんでしょ」

「俺もそれを聞いた。封印を解きに行きたいんだが」

「そうしよう。可愛そうだし」


 俺達はそうして教会に向かった。そこで正面から入らず地下までの穴を外部から開けてその封印がある場所に向かったのだった。明らかに何か封印しているような鎖のかかった空間があった。その鎖を俺は魔法で解いた。そこから一気に人が溢れ出す


「私達は、ここは」

「封印、解いてやったぞ」

「「「ありがとうございます」」」

「ありがとうございます。ところで今は何年ですか?」

「シルヴェニア歴128年だけど」

「シルヴェニア歴?一体何年まで飛んだって言うんだ」

「飛んだってどう言うことです?」

「魔王様が言っていたんです。この封印を受けている間は年もとらず時間だけが進んでいくと」

「封印を解いてくれる人を待ってるように言われたの」


封印が解かれた後は溢れるように魔族が出てきた。一体何人封印したのだろうか。魔族と言ってもほぼ人間と変わらない、神が赤かったり青かったり緑色だったりするが、人間となにも変わらないと思った。


「こんなにいるとは思わなかった」

「凄い量だねルーク」

「貴様等そこで何をしている」

「やべ、見つかった」

「私達が会話で応じてきますご安心を」


 青髪ピンク目の男が応じた。教会の人物が説得され去って行った。


「凄いな。ここまでやるとは」

「私はターガ・ブリュナーグ。魔王様には封印を解いてくれた人についていくように言われています」

「そうなのか。この人数を」


 とは言ってもその数は100人位だった。


「これで全員なのか?」

「勇者によって殺されたのが大半です。あいつ等に何人殺されたことか」

「勇者か、完全に悪役は勇者だな」


 俺は昔の友神威が召喚されるのが心配になる。魔王が復活してからなのかは分からないが召喚すると神は言っていたし、勇者としてならばどのような形で魔王と敵対するのか。魔王は悪い人間ではない気がする。俺は神に対して疑心を抱いていた。


「貴方の名前をお聞かせください。魔王様に代わるリーダーとしてお支えします」

「俺がリーダー?そんな柄じゃないけどな。俺はルーク・ジルベルト。期待には出来るだけ答えたいが出来ないこともあるかもしれない」

「お嬢さんの方は名前は?」

「私はエレン・フォン・ミレルアルカ。魔族には魔女ってことで魔王の依り代にするために狙われたけど。ここの人はそんなことはしませんよね」

「しませんね」

「大丈夫だよお姉ちゃん」

「するわけ無いだろ誰だそいつ」

「タロンっていう奴だった」

「タロンか奴ならやりかねないな」


 ターガは深刻そうに頭を抱えるのだった。



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