第23話 武術大会2

 アルティの対戦相手はときめき王女様の攻略対象のアレクサンドルだった。お互い剣術を使うようで剣と剣の争いになるようだった。


「君のことは知らないが勝たせてもらう」

「それはこっちの台詞よ」

「これよりアルティ・ジンとアレクサンドル・デマの試合を始めます。開始」


 双方剣を抜き衝突する。辺りに火花が散った。


「俺は勝たせてもらう。シリウスより強いって証明するんだ」

「シリウスならもう負けてるじゃない。ルークにでも勝つつもり?」

「そうだ」


 剣と剣が離れてまた交わりあう。そんな状況が何回も続きお互い体力が削られていったようだ。


「はあ、はあ。これで最後だ。赤龍真剣」


 アレクサンドル側が何か技を使った様だ。赤い龍のようなものが剣に纏われている。アルティの元に飛んでいくが、アルティはぎりぎりで躱し自分も技を放つ。


「青龍真剣」


 アルティはアレクサンドルに斬り込みアレクサンドルは倒れた。


「勝者、アルティ・ジン」

「どうだった。勝ったよクリス」


 アルティの目線は観客側のクリスに向けられている。クリスはさっきから声援を送っていた。クリスの目は嬉しそうだった。こうしてアルティとアレクサンドルの試合は終わった。それから、たくさんの相手を俺は倒していきマチルダとの試合になった。それまでのは倒すまでがほぼ一瞬で終わるのであまり盛り上がらなかったが、今回は少しは長引くだろうか。


「ルーク、私は君とせいぜい互角にはなれるように頑張ってきた。全力でやらせてもらう」

「いいぞ。せいぜい楽しませてくれ」

「これより、ルーク・ジルベルトとマチルダ・アロンダイトの試合を始めます。始め」


 俺は開始早々土属性の初級魔法ストーンバレットをマチルダと同じくらいの速さで放った。土の塊が弾丸の如く飛んでいく。マチルダはそれを瞬時に結界魔法を張って防いだ。


「これくらいは防ぐか。もっと早くやってみたらどうかな」


 俺はマチルダが結界魔法を張っているのをいいことに音速のストーンバレットを放つのだった。マチルダの結界にひびが入っていった。マチルダは結界魔法をさらに張りながらストーンバレットを放つ。土の塊が弾丸の如く飛んでいくが、それを俺は分解して魔力として吸収した。スキル魔力吸収の賜物だった。


「そんなこともできるのか。なら、あれを見せないとな」


 そう言ってマチルダは土属性の中級魔法ストーンランスをこれまた銃弾のような速さで放つ。だからと言って俺に効くわけでもなく結界魔法ですべて防いだ。そして、俺は相変わらずストーンバレットを放ち続けている。趣向を変えようと思って火属性を混ぜてみる。マチルダの結界はその熱によってあっけなく壊れた。そこをマシンガンのような俺の魔法がマチルダを打ち抜いた。数発当たったのを見計らい俺は魔法を止める。


「あちち、降参だ」

「勝者ルーク・ジルベルト」


 マチルダは早々に降参した。少しは俺の試合でも盛り上がっただろうか。観客は声援を送っていない。だが、まじまじとこちらを見ていた。その中に父アーサーと母マルティの姿があった。


「ルークはやはり強いな。そう思うだろうマルティ」

「そうね、あなた。あの強さなら国も相手できそうだわ」


 家族は俺が強いことを実感しているようだった。俺は試合を終えてエレンのところに行った。


「ルーク、お疲れ様」

「ありがとう。エレンも試合があるんだろ。頑張れ」

「ありがとうルーク。頑張るよ」


 俺達は隣に座りながら会話する。そうして、エレンも今度の試合も問題なく勝った。そうして、勝ち残っていたアルティとエレンの試合になった。


「エレン、貴方が相手でも私は全力でやるわよ」

「私も勝ちたいから勝たせてもらうよ」

「アルティ・ジンとエレン・フォン・ミレルアルカの試合を始めます。始め」


 先に動いたのはアルティだ。剣を抜きエレンに斬りかかる。が、エレンは結界魔法で防御した。アルティは斬撃で結界魔法を突破しようとして、普段より感覚を研ぎ澄まして斬りかかった。結界は崩れるがエレンは火属性の中級魔法ファイアーランスを放った。炎でできた槍がアルティの脇腹をかする。アルティは身体能力と技能でエレンの攻撃を躱していた。ガーゴイルでさえもう一撃で倒せるエレンのファイアーランスを躱すのは見事だった。エレンは結界魔法を張り直しファイアーランスを何発もアルティに向かって放った。だが、避けきれないものはアルティは斬撃で消し去った。


「やるねアルティ。ならこれはどう」


 エレンは火属性の上級魔法ヘルインフェルノを放つ。これは俺が教えたが、この大会でエレンが使うことになるとは思ってもみなかった。


「何この炎。さすがにやばいわね」


 そうして、アルティは斬撃で魔法を切ろうとするが、流石に上級魔法は斬り切れなかったようでアルティが、飲み込まれそうになったところでエレンが止めた。


「降参よ。強くなったわねエレン」

「勝者、エレン・フォン・ミレルアルカ」


 エレンはアルティに勝った。そして俺はエレンを出迎えに行った。


「エレン、よくやった」

「ルークのお陰だよ」


 そうして、俺達は決勝まで勝ち残った。次は最後の試合で俺とエレンの試合だ。


「決勝戦です。ルーク・ジルベルトとエレン・フォン・ミレルアルカの試合を始めます」

「ルーク、私も強くなったからね」

「ああ、全力でやってくれ。俺はエレンとは戦いたくないんだけどな」

「大丈夫だよ。ちゃんと加減してくれるでしょ」

「分かった。加減する」

「始め」


 エレンは火属性の上級魔法ヘルインフェルノを放った。灼熱の炎の渦がこちらを襲うが当然のように結界魔法で防御する。エレンのヘルインフェルノと俺のヘルインフェルノでは俺のの方が威力が高い。だが、上級魔法だ。まともに食らい続けたら俺でも怪我をする。俺は土属性の初級魔法ストーンバレットを銃撃くらいのスピードでエレンに掠らせ続ける。だが、エレンは素早く結界魔法で防御するのだった。


「これはルークに使おうと思って覚えたわけじゃないけど」


 エレンはそう言って魔力低減の魔法を使う。俺の魔法の威力が下がった。これくらい気休め程度に過ぎないだろうが、それでも少しの差が戦いに影響を与える。これを使ったのはいい判断だろう。俺はストーンバレットのスピードを上げる。土の塊がエレンに飛んでいく。エレンの結界魔法にはひびが入りだした。そうして、結界を砕いた時、エレンが上級魔法ヘルタイフーンを放った。水属性最強のこの魔法で結界代わりと同時に俺にダメージを与えにいったのだろう。だが、俺の結界魔法はびくともしない。俺はストーンバレットの速さを音速にしてエレンの横にかすらせた。


「降参します」

「降参があったのでルーク・ジルベルトの勝ち」


 今回は観客が盛り上がった。今までの淡々とした試合ではなく上級魔法が飛び交う凄い試合だったからだろう。こうして、俺は武術大会を優勝し、エレンは準優勝になったのだった。武術大会の成績は成績に反映されるらしく優勝と準優勝は特に高い点になるらしい。そういった意味でこの武術大会は良かった気がする。授業の成績はどうなっているか分からない。だが、成績が一年の締めくくりであるこの大会で良くなるのは良かった。終わりに表彰あるらしいので終わりを待った。そして、表彰される時間が来た。


「ルーク・ジルベルトさん優勝おめでとうございます」


 そうして、俺は金メダルをかけられた。


「エレン・フォン・ミレルアルカさん準優勝おめでとうございます」


 エレンには銀メダルがかけられた。そして、他の3位の二人には銅メダルがかけられていた。そうして、表彰が終わった後、俺達は2人で放課後を過ごす。


「今日は頑張ったからカフェ行こう」

「毎日行ってるけどなあそこ。まあ、いいけど」


 俺達はデートをしにカフェに行った。ステンドグラスの光が綺麗なところである。俺達は歩いて行き、そこに着いた。俺はコーヒーを頼みエレンは紅茶を頼んだのだった。


「ねえ、ルーク。ルークが本気で戦ってたらどうなってたんだろう」

「全員一発で死んでるよ。そんなことは流石にできない」

 

 事実の話だ。。俺は自分で言うのもなんだがこれまででとても成長している。俺はメタトロンを倒すスピードも最初に比べるとてつもなく上がっては最速で30分でできるようになっている魔力吸収だけで敵を倒すこともできるようになった。魔法の威力も最初のころと比べたらけた違いに高くなっているし、もっと魔法でいろいろできるようになった。


「まあ、そうだよね。ルークが本気になる戦いなんてない方がいいと思う」

「魔王と戦ったらどうなるか分からないけどな」

「魔王か、復活しなければいいのに」

「お待たせしました。紅茶とコーヒーです」


 俺達はそれぞれの飲み物を口にする。コーヒーは苦く香ばしかった。エレンの紅茶も香ばしい香りを放っている。


「ルークは私を守りたいって言うけど、そこまで私が狙われることってあるのかな」

「魔女狩りには狙われてたじゃないか」

「それはそうだけど、ルークが勝てそうにない相手が狙ってくるほどのことがあるのかなと思って」

「伝承の件があるからな。魔王が魔女狙ってくる可能性はあると思う」

「ルークが、それから守ってくれるのはありがたいけどどうしてわたしって魔女なんだろう。やっぱり悪役令嬢だから?」

「分からない。でも何があってもエレンは俺が守る」


 俺はエレンの手を握る。


「その気持ちは嬉しい。でもルークもどこまで強くなればいいのか分からないんじゃない?」

「そうだな。強くなって置いて損はないと思うし、これからもどん欲に頑張り続けるけどな」

「そう。私のために、ありがとうねルーク」

「何かデザート頼むか」

「うん。今日は何にしようかな」


 メニューを見てデザートを決める。今日はモンブランにした。話しながらお互いの飲み物を交換し合ったりして時間が経ちモンブランがやってくる。それを2人で分けて食べながら俺達は魔王についての話をしながらイチャイチャした。魔王の復活が本当に近いことをこの時の俺は把握のしようもなかった。



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