第16話 魔女狩りの殲滅

 俺は次の日、冒険者ギルドに来ていた。そして、魔女狩りを殲滅する依頼を受ける。


「この依頼でよろしいですね。推奨ランクはAですが」

「大丈夫です。居場所が分かるんですよね」

「はい。依頼書の場所に行けばアジトがあるようです」

「そうですか。ありがとうございます」


 俺はアジトの場所を確認する。依頼書通りだと町で前に襲われたところ辺りにあるようだ。俺は依頼を受けると、走ってその場所に行く。10分くらいして、そこに着いた。そこは広い家だった。豪邸とも呼べそうなその庭は広く、そこから侵入した。


「敵襲。ルーク・ジルベルトと思われます」


 監視の目は付いていた。庭に数十人くらいの黒装束の男たち現れる。そいつらを全て土属性の初級魔法ストーンバレットで一瞬で倒した。俺は屋敷の中に入っていく。屋敷の中は広いが、気になる物があった。


「これは......」


 緑色の液体で薬漬けにされた容器に入った人間の女性がところどころに置いてあったのだ。これは全部魔女なのだろうか。


「いたぞ捕まえろ」

「そう簡単につかまると思うか?」


 俺は屋敷の部屋から出てくる数人の人間達を土属性の初級魔法ストーンバレットで打ち抜く。銃のような速さのその石は人間を殺すのには充分だった。


「グハッ」

「こい、つ......」

「あの世で後悔してればいいさ。魔女狩りに入ったことを」


 俺は部屋を回る。実験台にされていた緑髪の魔女らしき女性の標本があった。それは白い液にまみれており犯されたのは明白だった。


「こんなところが存在してるのかよ」


 俺は実験台にされた魔女らしき女性たちを見ながらその惨状に怒りを募らせた。俺は生きている人間を探す。探して生きている奴がいたらストーンバレットを片っ端から打っていった。その中に一人、髪色が紫色の紫目の髪の長い女性がいた。縄で手足を縛られていて猿轡もされている。この女性は魔女なのだろうか。俺はその女性の拘束を解いた。拘束されていた手足は紫色になっていた。


「ありがとうございます。私は魔女ではありませんよ」

「はいはい。で、どうしてこんなところに?」

「夫が私を売り渡したんです。あの人のことは許せません」

「普通こんな場所に売り渡すかよ」

「私は今まであの人のことを信じてましたが、あの人自身が魔女狩りに入っていたみたいなんです。そういえは自己紹介がまだでしたね。私はフランドール・キリマンジャロです。結婚した時の苗字は名乗りたくありません」

「そうですか、俺はルーク・ジルベルト。ここを殲滅しに来ました」

「ここを殲滅してもあいつらは新たな拠点を作りますよルークさん。さっき主要な人物が抜け出していきましたし」

「そうなのか。厄介だな」

「一応聞きますが、何故こんなところに殲滅に来たんですか」

「守りたい幼馴染が魔女だからです」

「そうですか......それは確かに深刻ですね。でも主要な人物はこの国から出るとも言っていました。この町で襲われる確率は少なくなると思いますよ」

「あいつらは放っておけない。こんな実験を何度もしているような組織がいていい筈がない」


 俺は見たもので怒りを奮い立たせる。ここで行っても何もならないが、魔女狩りは確実に殲滅しなければならないと思った。


「最後に主要な人物を見たのはいつですか?どこに行くと言ってました?」」

「ハモンド王国です。そこへ馬車を走らせていました。もう遅いでしょう」

「ありがとうございます。俺はそこには行きませんが冒険者ギルドに伝えます」

「それがいいでしょうね。ルークさん。解放してくださりありがとうございます」


 俺は屋敷の中を回り生きている人物がいないことを確認しフランドールを連れて冒険者ギルドに向かった。


「そうなんですか。ハモンド王国に主要な人物が向かったと。ギルド長に話してきますね」

「あいつらは殲滅してきました。屋敷の中に行けば分かります。そこでどんな実験をしていたのかもわかると思います」

「行きたくないですね。でも冒険者を向かわせますので」


 俺はフランドールを連れていたが、彼女には帰る場所も家もない。俺は金貨1枚を彼女に渡し、それで宿を探すように言った。彼女は納得して宿を探しに行ったのだった。そうして、報酬の金貨10枚を貰った後、俺は名前のないダンジョンを普通に攻略して学園に戻った。今回はより早く攻略できたと思う。メタトロンも強かったが前ほど切羽詰まっていないので倒せた。因みに神様の声は今回はしなかった。


「ルーク、今日も頑張ったんだね」

「ああ、俺は魔女狩りを殲滅してきた」

「どんな感じだった」

「酷かったよ。人が何人も実験に遭ってた。エレンはそんな奴らに渡さないから安心してくれ」

「ルークはそんなことしないって分かってるから。大変だったね」

「今日はどこでデートする?たまには変えてみないか」

「そうだね。展望台に二人で行こっか」

「いいな。俺もそこに行くことに賛成で」


 俺達は座学に入り、たわいもない話をしながらも授業を受ける。そして、昼休みがやって来た。俺達は噴水でデートした。


「ルーク。今日も格好いいね」

「エレンも可愛いよ」


 俺達は抱き合いながらいつものようにキスを何分もした。そうして、座学を受け、時は放課後になる。俺達は町の展望台、つまり一番高い場所に向かっていた。山登りだったが俺はそんなに疲れない。なのでエレンをおぶって進んだ。そうして、たどり着いた風景は最高だった。


「すごい。町がこんなに見渡せるなんて」

「高いところで見る風景は綺麗だよな」

「その感じ、前世で行ったことあるの?」

「ああ、山登りに行くことがあってな」

「道なりも自然いっぱいですごくきれいだったよ」

「そうだな」


 俺は、何となく前世の山登りを思い出していた。もちろん登った山とは景色も違うが。俺達は誰もいない展望台でまたイチャイチャした。キスしたり抱き合ったりして時間を過ごしたのだった。そうして、展望台を降りて行った。その間も俺がエレンをおぶり連れて行った。そうしているうちに夕方になった。俺とエレンはアベルに出会った。


「おう、ルーク君。魔女狩りの殲滅ご苦労だったね。だけどちょっと気になることがあってね」

「何ですか」

「フランドールっていう女の人がいたんだろう。その人がスパイかもしれないんだ」

「マジですか」

「分からないけどフランドールが黒装束の男に変身していたところを見たっていう宿屋の人の証言があるんだよ」

「でも何でだ。俺達に不利なことをしてきたってことだろうし、何か誤った情報を言ったのか」

「それだけど、魔女狩りはハモンド王国じゃなくクオーク王国に向かったっていう話らしいよ」

「特定されてるってことは寿命は長くなさそうだけどな」

「それで、さっきその黒装束らしき男を捕まえたんだよ。それで拷問してる最中に魔女を食べることでその魔女の能力を手に入れられるっていう情報を手に入れたんだ」

「うわ。そいつって魔女を食べたってことなんですか」

「どうもそうみたいだね」


 俺はフランドールさんが正体が魔女狩りの黒装束の変身した姿だったということを聞いてショックを受けた。


「エレン、先に戻ってて。俺はアベル先生と話がある」

「分かった。気を付けてねルーク」

「エレンも気を付けろよ。狙われてるのはエレンの方だと思うからな」


 俺はエレンと別れアベルとの会話を再開する。


「それで、その黒装束とは会えるんですか?」

「ああ、こっちに来てくれれば会えるよ」


 俺はアベルについて行った。暗い牢屋の中に傷だらけになった男がいた。その男が変身してフランドールになる。


「助けてルーク君」

「今更その姿になっても無駄だぞ。話は聞いてある」


 すると再びフランドールだった肉体は黒装束の男に戻る。


「はんっ、この姿も使えないものだ。で、ルーク・ジルベルトよ。何のようだ」

「お前は俺をだまして何がしたかったんだ」

「エレン・フォン・ミレルアルカが魔女であることを確認したかっただけだ」

「クオーク王国にお偉いさんが言ったていうのが本当らしいが」

「ああ、そうだ。お前には嘘をつかせてもらった。時間稼ぎになるかもしれないと思ってな。そして、結婚した時にお前たちを襲って実験体も貰う、その予定だった」

「ジゼリウス様の王国だったな。お前たちを俺は許さない」


 俺は黒装束に拷問を開始する。水属性の魔法で水を操り窒息させては回復魔法で回復してを繰り返した。


「うう、もうやめてくれ」

「お前達は、人の体をいたぶっておいて何を言う」

「分かった。もうしない。だから」

「そろそろ門限の時間だ。後は私がするから気を付けて帰るんだよルーク君」

「分かりました」

「ひっ」


 俺は牢屋を出て学園に向かい、門限には間に合った。そして、同じ部屋のカイルと話をする。


「それで、その魔女狩りっていう屑連中はお前が倒したってことか」

「そうだけど、魔女らしき人達は薬漬けにされてたりして、全員死んでたよ」

「最低だな。女の子なんだろう。俺が助けてやりたかったなあ、そうしたらモテるだろうし」

「そんな話じゃない気がするけどな。最後に残った女性っぽい人がいたんだけどその人変身してて正体が魔女狩りの奴だったんだよ。それがショックでさあ」

「大変だったんだなルーク。その魔女狩りっていう集団はそれでもお前が殲滅したんだろ」

「いや、魔女狩りのお偉いさんはクオーク王国に逃げたらしい」

「また、そこでも同じようなことが勃発するなら俺が行って止めてきたいな。お前だけがモテるのもなんだし」

「俺は別にモテてないよ。ただ、クオーク王国にした理由が俺がエレンと将来行く場所だったからなんだよ」

「そうなのか」

「これは秘密にしておいてほしいんだけど実はジゼリウス様に爵位を貰えることになったんだ」

「あいつか。あいつの周りには女子が集まってていいよな。俺もああなりたい、って、爵位。王様じゃないと与えられないはずなんじゃ」

「ジゼリウス様は権力が高いんだよ。それでその国でいた方が俺達を狙いやすいからなんだとさ」

「でもそれって自殺行為じゃないか。お前くらいに強いなら尚更だし」


 そんな話をしながら夜を過ごした。この話は盛り上がり10時まで続いたのだった。

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