第15話 マンティコアの剥製

 座学を終えた俺達はいつものように学園内の噴水に向かう。俺達は手を繋ぎながら行っており、周囲には恋人同士と認識されている。だからと言って邪魔してくる人間もいない。俺が入学試験で放った魔法が恐れられているようだ。だがやはりエレンは赤髪で避けられている。アルティやクリス、カイルとは話すことがあるが全体的には避けられているようだった。俺は俺で入学試験の件で恐れられているため友達が少ない。だが、今日はそんな俺達に話しかけてくる人間がいた。


「やあルーク君にエレンちゃん。お似合いだね」

「君はえーとブライアン君だったか。何のようだい?俺達はデートに行こうとしてるんだが」

「そうよ。用事なら早くしてね」

「実はルーク君、君に頼みたいことがあるんだよ」

「何だ?」

「君にマンティコアを狩って来て欲しいんだよ」

「何だ、素材が欲しいのか」

「いや、僕は剥製が欲しいんだ。マンティコアの剥製が家にあれば美術品として充分じゃないか」

「ちなみに聞くが報酬は?」

「そこはいいだろ友達じゃないか」

「さっき話したばっかりだろうが。この話しは無しだ。行こうエレン」

「待ってくれたまえルーク君。報酬ならそういえばある。家に腕利きの指輪職人がいるんだ。その職人に君達の結婚指輪を付くってもらう」

「よし、乗った」

「うん。流石僕が見込んだだけあるね」


 それから先はブライアンにマンティコアを屋敷に持ってくるということで話がまとまった。それから俺達はいつものように噴水に向かった。


「結婚指輪かあ、夢みたいだな。ルークとお揃いの指輪」

「結婚指輪の話が無かったらあの話しは無かったことにするつもりだったけどな。まあ、結婚指輪が手に入るのはいいな」

「ルークは子ども何人欲しい?」

「どれくらいだろう10人は欲しいかもな」

「私もいっぱい欲しいよ。ルークとの子どもだ何人も産みたい。そういえば子どもってどうやったらできるのかな」

「えーとそれはなあ」


 俺は静かにどうやったら子どもができるかエレンに話した。エレンは顔を真っ赤にする。


「ルークと、その、エッチなことすることで、それでできるんだ。私、恥ずかしいこと言っちゃったかな」

「別に恥ずかしくはないだろ俺しか聞いてないし」

「でもルークとだったらたくさんエッチしたいな」

「成人まで待たないと行けないかもしれないけど今も時々やってはいるよな」

「うん。でも体と体を合わせあうところまではやってないけどね」

「それをやったらルール違反になるけど一回だけやりそうになったことがあったよな」

「うん。あの時は凄くドキドキしたな」

「俺もだ」


 俺達は互いに見つめ合う。そうして抱き合いキスをした。舌と舌を絡め合う。これを教えたのは俺だが、何回もやっている。どれくらいの唾液を交換したかは覚えてないくらい毎日このディープキスをしていた。キスしている時間はこの時10分間ずっとしていた。


「そろそろ昼休みが終わりの時間だな」

「ずっとこの時間が続けばいいのに」

「そうだな。俺もまだエレンとキスしていたい。でも休んだら成績がやばいしな」

「そうだね。行こうルーク」


 俺達は噴水を後にした。座学の時間になる前にアルティとクリスが話しているところを見た。因みに、俺はクリスに作った魔道具を渡していた。それを使いこなしているようで授業で戦うときに使うとクラスの中では負け無しのようだ


「アルティ。僕はまた君と一緒にいたい」

「クリス、ありがとう。そうしよう。厄介なのも居なくなったし私も貴方が居てくれると嬉しい」


 ここは空気を読んで話しかけないことにした。エレンも黙っている。そうして俺達は席に着く。結局付き合うというところまでは行かなかったようだが、関係が元に戻るならそれはいいことだろう。


「え、ルークにエレン。もしかしてさっきの会話聞いてた?」

「聞いてたよ。仲が戻って良かったな」

「うー。人の恥ずかしい会話を」

「アルティちゃん、見られないところでやれば良かったんじゃない」

「そうだったかも。反省反省」


 アルティは俺達に会話が漏れたことで赤面していたがエレンが指摘するとその取り乱した姿をすぐに戻したのだった。そうして座学の授業に入った。簡単なかけ算で俺はすぐにできた。他に教えるのに周り、俺がエレンに付きっきりで押してエレンも理解したようだった。


「なあ、ルーク、エレンにばっかり教えてないで俺達にも教えてくれよ」

「分かった分かった。今教えるよ」


 優秀な筈の1組でさえ俺のような恐れられている人間にも助けを求めるほどかけ算は難しかったようだった。こんなので前世の世界にいたら大変だったのだろうなと思った。話しかけてきたのは成績が1組の中でも低いバベル・ガードマンだった。俺はエレンやアルティ以外とはあまり話さない。1組の人間もあちらから話しかけてくることはあまり無い。これから友達を作るつもりは俺はそんなに無い。というのも俺は今の人間関係に満足しているからだ。そうして授業が終わる頃、バベルがお礼をしてきた。


「ありがとうなルーク。お前のこと怖がってたけど、いいやつなんだな」

「そりゃどうも。まあ、数学で困ったら言ってくれ」


 俺は数学が得意だったわけではない。前世の数学が進んでいただけだ。だが、それが生かせているので前世で勉強していて良かったと思った。そうして、数学の授業も終わり、放課後になった。俺はエレンと外にデートしに行った。また、カフェに向かい俺がコーヒーを頼みエレンが紅茶を頼む。そして今日はデザートに苺のショートケーキを頼んだ。


「エレン、あーんして」

「あーん」


 俺は苺のショートケーキをエレンの口にフォークで入れる。エレンは美味しそうに食べていた。それがとても可愛いと思って癒される。


「ルーク、あーんして」

「あーん」


 エレンが俺の口にケーキを持ってくるのを食べる。ケーキは柔らかく甘かった。今飲んでいるコーヒーに良く合う。


「美味しいなエレン」

「美味しいねルーク」


 俺達はそれからしりとりをして時間を過ごし20分経つと席を離れた。そうして鳩と鴨がいる公園に向かう。人のいない場所を見つけてそこに向かう


「今日はここでキスしよう」

「うん。大好きルーク」

「愛してるエレン」


 俺達は茂みの中で抱き合いながらディープキスした。今度は20分くらいそれが続いた。


「今日も鴨に餌あげようか」

「そうだな。可愛いし」

「だよね。鴨の動きとか顔とか全部可愛い」

「確かあそこだったな」


 俺達はこの前着た時と同じ餌入れを見つける。そして餌をやろうとするとどんどん鴨が寄ってきた。


「わー、やっぱりすごい」

「やっぱりすごいな」


 俺達は鴨の群れに餌をあげていった。そんなこんなで楽しい時間はあっという間に過ぎ去るものだ。夕方になっていた。


「帰ろうエレン」

「そうだね。今日も楽しかったよルーク」


 俺達は町を通り帰った。今日は襲われることはなかった。魔女狩りには気をつけていようと思う。できれば俺が殲滅させようとも思った。エレンを守るために。そして帰りにアベルに会った。


「ルーク君か。君のお陰で魔女狩りの過激さが収まってるんだ」

「どう言うことです」

「エレンさんが魔女だと言う情報がもうあいつらには渡ってるみたいだがルーク君が付いてることを知って恐れて手出ししてきてない状態らしいそうだよ」

「そうなんですか。あいつらを殲滅したいんですが言い方法はありますか」

「本気かい!?君なら大丈夫だと思うけどどうしてそこまでするんだい?」

「エレンのためです」

「ルーク、その時は気をつけてね」

「分かってるさ、でも俺はエレンを傷つけようとする奴は許さない」

「殲滅の話なんだけど、アジトが見つかってるらしいんだ。冒険者の依頼としてもそのアジトの殲滅が張り出されてるけど」

「それを受けようと思います」

「やっぱり冒険者ギルドに登録してるんだね」

「はい、シルヴィア先生と登録に行きました」

「凄いな。気を付けるんだよルーク君」

「ありがとうございます先生」


 帰り道アベルと話ながら門に入った。俺達は別れ、俺は男子寮、エレンは女子寮に向かった。男子寮の同じ部屋ではカイルが待っていた。


「なあ、ルーク、俺はどうやったら彼女が出きる、また振られたんだが」

「どうやってってできるだけ優しくするとかじゃないか」

「俺には恋人を作る才能は無いのかもしれねえな。でも俺はあきらめない。俺だってお前らみたいな関係を可愛い女の子と作りたいんだよ」

「頑張れ、俺はあまり参考にならないかもしれないけど」

「幼馴染みがいるなんてずるいだろ。俺はいたけど他の男とくっついたしよー」

「いたのか。他の奴とくっつくって言ったってその人の自由だろうし」

「俺、顔はいいよな」

「ああ、格好いい」

「くそーどうして彼女ができないんだ」


 こうして、俺は今日カイルの愚痴を聞かされながら夕食を食べベッドに入った。

 次の日の朝、俺はマンティコアを狩るために地獄の蓋に向かう。このダンジョンも慣れたもので、すぐに第4階層に着きマンティコアを狩った。死骸はマジックバッグに入れて今日はここでの探索は終了にした。このダンジョンはあの名前の無いダンジョンに比べて簡単だ。走って敵と戦わずに進むことも可能になった。身体力が向上したのだ。

 俺はその後、名前の無いダンジョンに向かい今度は2階でどこまで魔物が発生するか試した。やはり99回までだったようだ。


「今日のところはこれでよしと。学園に戻ろう」


 俺は学園に戻り、そこから先はエレンと行動した。ブライアンにはマンティコアを狩ってきたことを告げた。


「本当かルーク君、今ここでマンティコアを出してくれないか」

「ここだと流石に邪魔になるだろうから体育館でな」

「分かった。じゃあ昼休み付き合ってくれよルーク君」


 座学の授業を終えて昼休みになる。俺はブライアンと約束通り体育館で、マンティコアをマジックバッグから出した。獰猛な目付きをした死んだ巨大な獣が突然現れ体育館にいた人達は驚いていた。


「素晴らしい。これを飾れるのは素晴らしいよルーク君」

「それで結婚指輪は?」

「ああ、夏休み中には持ってこれそうだよ。石は何がいいか2人で決めるといいよ」

「良かった。このマンティコアはお前の家に持ってくのか」

「そうだよ。このマジックバッグを使ってね」


 ブライアンはマジックバッグを使いマンティコアを収納する。


「じゃあ、俺はここで。エレンとデートして来る」

「ありがとうねルーク君」


 こうして、俺達は結婚指輪を作って貰うことになったのだった。





 

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