俺は幼馴染である悪役令嬢を守るため奮闘する

第14話 冒険者ギルド

　俺はシルヴィアと冒険者登録に来ていた。冒険者ギルドには、筋肉がムキムキの屈強な男性や魔法使いらしいローブを着た女性など戦いに行くような人が来ていた。

「いよいよだなルーク君。君の冒険者としての生活の幕開けが」

「そんなこと言っても、俺は上を目指そうとは思ってませんよ」

「まあ、冒険者で上位になってそんなことなんてないから目指しておけばいいだろうルーク」

「そうなんですか先生。例えばどんなことがあるんです?」

「上位のランクになるといろいろなサービスがつく。地図を描いてもらうのは有料だがAランク以上の場合は無料、魔物の解体も無料でやってくれる。後、上位ランクしか入れない場所に入れたりする」

「それって、どういう場所ですか」

「そういうダンジョンがあるんだ。魔物の強さは地獄の蓋より強くないかもしれないが金目のものがたくさん手に入ったりする場所だったり、いろいろ面白いものがあるぞ」

「分かりました。上を目指そうと思います」

　俺はシルヴィアからの話を聞いてやる気が出てきた。ランクが上がるといいことがあるのが冒険者なのならば頑張ってみてもいいかもしれない。

「次の方。どうぞ」

「はい。冒険者登録に来ました」

「分かりました。少々お待ちください」

　並んでいて俺の番がやってくる。受付嬢は金髪青目で整った顔立ちの女性だった。まあ、俺にとってはエレンの方が100倍可愛いが。

「お待たせしました。こちらにサインしてください」

「分かりました」

　俺は受付嬢に手渡された紙にサインする。名前を書き終わり受付嬢に手渡す。

「こちらが冒険者であるという証明書です。Gランクから始まりSランクあります。そこはお客様の実力次第ですが」

「ありがとうございます」

　俺は証明書を貰う。この後は自由なそうだ。

「冒険者としての依頼をこの時間に受けてもいいんだぞ。まあ、最初は簡単なものだがな。ルークなら出来るだろう」

「そうですね。じゃあ一つ受けていきましょうかね」

　そう言って俺は依頼の紙を見渡すGランクの依頼はゴブリン討伐が時間的にも一番良さそうだった。

「すいません。この依頼を受けたいんですけど」

「分かりました。紙はこちらで預かっておきますので行ってきてください」

「じゃあ先生、また学校で会いましょう」

「ああ、それとこれを渡しておく」

　シルヴィアは鞄から小さな鞄を取り出し俺に渡した。

「マジックバッグだ。これは空間魔法がかけられていて中にはたくさんのものが入る。ゴブリンも100匹くらいは収納できる」

「ありがとうございます。先生、俺頑張ってきます」

「その意気だ。ルーク、冒険者としての活躍を期待してるぞ」

　俺は、ゴブリン討伐に向かう。昨日行った公園の近くにゴブリンの巣があるようでそのゴブリンを数体討伐してくるように頼まれたようだ。俺は走ってその場に向かう。昨日行った公園は森の近くだった。森の方に行くとゴブリンがいるというのは少し危険な気もするがどうなのだろう。そんなことを考えながら一心不乱に走りその場に着いた。公園の近くで森の少し深い場所。そこに緑色の肌をしたゴブリンの集落があった。俺は注意をひきつければ相手の方が寄ってくると思いゴブリンの集落に姿を現した。

「グガー」

「ガガガガ」

「グガー」

　ゴブリン達はこちらに気付き武器を持ってこちらに寄って来た。俺は土属性の初級魔法ストーンバレットを何発も放ち武器を持ち襲い掛かってくるゴブリンをやっつけた。10体くらいは倒した。するとゴブリンはその場から逃げ出そうとしていた。

「これくらいだな。戦意を喪失した奴まで倒すつもりはないしな」

　俺はゴブリンの死体を10匹分回収しマジックバッグに入れる。そして、ついでに地獄の蓋に寄って行った。そこでマンティコアをマジックバッグに収納し、冒険者ギルドに走って戻った。

「討伐してきました」

「え、もう戻って来たんですか」

「これが証拠です」

　俺は受付嬢の前に10体のゴブリンの死骸を出す。ギルドが少し騒がしくなる。たくさんの人間がこちらを見ていた。

「分かりました。分かりましたからしまってください」

「それと、換金してほしい魔物を持ってるんです」

「何でしょう」

「マンティコアです」

「まさか、自力で倒してきたんですか。こちらに来てください」

　俺は受付嬢に案内されて倉庫に来た。

「ここならそのマンティコアも充分に出せるでしょう。出してください。私はギルド長を呼んできます」

　受付嬢はそう言うと倉庫から出て行った。俺はマンティコアをマジックバッグから出す。こうしてまじまじとみると獰猛そうな獣だった。これを俺が狩ってきた事実がある。前世ではこんな魔物を狩ってくるのなんて想像もできなかっただろう。死亡し転生する事実を神様から言われた時もだ。俺は強くなったんだなと思っているとギルド長を連れた受付嬢が来た。

「まさか本当にマンティコアが。ルーク君だったか、どこでこれを狩って来たんだい」

「地獄の蓋って呼ばれてるダンジョンです」

「地獄の蓋だと!一体どれほどの実力なんだ」

「そもそも本当にこの少年は強いんですか。もしかしたら借り物を持ってきたということも」

「それはない。私は何人も強い人間を見てきた。この少年の魔力はとてつもないことが分かる」

「そうですか。私はここで失礼していいですか」

「ああ、ルーク君。この素材を買い取らせてもらう。金貨10枚でな」

「ありがとうございます」

　こうして、俺はマンティコアを売り10枚の金貨を貰った。金貨1枚は日本でいうところの100万円に相当する。1000万円儲けたというわけだ。だが、それを教会の神託に1枚使う。この時間だとまだ行ける気がするので今のうちに行って来ようと思い、教会に向かった。走って教会に行く、前に来たときは馬車で来たのでその町の風景は馬車の中からしか見れなかったが、教会の周りは建物が石膏造りで綺麗だった。花壇も所々にあり花が美しかった。そうして、走ること20分、教会にたどり着いた。俺は教会の門を開ける。中には修道服を着た女性が立っていた。

「すいません。神託を受けたいんですが」

「分かりました。金貨は用意してますでしょうか」

「はい。ここにあります」

　そう言って俺は金貨を1枚取り出す。それを修道女に渡した。

「では、神託を始めますので祭壇の前で祈ってください」

　俺は言われた通り祭壇の前で祈った。すると前と同じようにまぶしい光のようなものを目を瞑ったところから認識した。

ルーク・ジルベルト

ジョブ【魔道士】

体力450

魔力10129

筋力120

防御力168

素早さ211

スキル【火魔法】【水魔法】【風魔法】【土魔法】【回復魔法】【結界魔法】【魔力吸収】

　俺は結果を見て魔力だけが異様に高いことに驚いた。一つだけ1万を超えているというのは鍛錬の成果だろうか。それ以前にも才能のようなものがあるのだろうか。

「以上で神託は終わりです。神はいつもあなたをそばで見守っています。お気をつけて」

「ありがとうございます」

　俺は教会を出て行く。今日は収穫がたくさんあったが、最後に試したいことがあった。俺は名前のないダンジョンへ向かった。

「ここで、何回まで天使みたいな魔物が蘇るのかやってみようじゃないか」

　俺は白く輝く扉を開ける。血のような液体がその扉から出るが気にせず進む。そうして早々に天使のような魔物が現れる。それを上級魔法ヘルインフェルノで焼き尽くす。そして、次は虹色の鉱石の体でできたゴーレムを相手するのに魔力を吸収した。ゴーレムはすぐに割れて粉々になった。そうして、また天使のような魔物を上級魔法ヘルインフェルノで焼き尽くす。ちなみにこの間俺は一歩も先に進んでいない。

「さて、どこまで強くなるのかな」

　俺はその次にゴーレムが出てきたので魔力を吸収し鉱石を砕いた。次に天使のような魔物が出てきた時には上級魔法ヘルインフェルノを2回放ち焼き尽くした。そうして、ゴーレムが出てきて鉱石の魔力を吸収した。こんなことを何回も続け99回まで行った時その連鎖が止まった。

「今日のところはここまでにしておこう」

　俺は天使のような魔物の死骸が消えていることに気付く。この魔物は持ち帰ることができないようだった。まあ、何度も復活するうえ死骸がたまっていくのなら死骸だらけになっていくのでそれも良いと考えることにした。俺は学園に戻る。戻るとエレンが待っていた。

「ルーク、お帰り」

「ただいまエレン。今日は時間通りだったろ」

「うん。これで成績落とさずに済むかもね」

「ああ、勉強しないとな」

「行こう。怪我は無いね」

「ああ、ぴんぴんしてるよ」

「良かった。ルークが怪我するたびにこっちはとっても心配になるから」

「そんなに心配してくれてたのかごめんな」

「大丈夫。今日はちゃんと戻って来てくれたから」

　俺達は教室に向かい座学を受ける。だが、今日は珍しく自習になっていた。先生が風邪をひいて休みのようだった。

「ルーク、一緒に勉強しよう」

「ああ、そうだな。俺がいなかった分も教えてくれると助かるんだけど」

「その時間は私もいないよ。アルティ、ノート貸して」

「はいはい。お2人にノートを貸しますよ。それで二人はどこまで進んでるのキスとかはした」

「もうとっくにしてるよ」

「ちょっとルーク恥ずかしいよ」

「へー。とっくにか、いつからそんな関係なのかな」

「とっくに前からだよ。それより俺達のいなかった分の勉強を教えてくれ」

「つまらないな、ルークは。私の恋愛とか知りたくないの」

「じゃあ、クリスとはどこまで進んだんだ」

「えっ。それは、その。えっ、えっ」

　アルティの顔が赤くなっている。脈ありのようだった。

「へえ、アルティはクリスが気になってるんだ」

「ちょっとエレンまで。もう、内緒よ」

「やっぱりクリスとそういう仲になりたいのか。手伝ってもいいぞ」

「いいよ、私たちの問題だし。気にせずほら勉強始めるよ」

　こうして、俺達はアルティに勉強を教えてもらった。今日の授業は自習だが、アルティもクリスと両思いなのを知れたのは収穫だったと思う。クリスにはいい話だろうし。