第13話 デート
俺とエレンは町にデートに向かっていた。町は活気があり、人が多くいた。その中のカフェに俺達は入る。俺とエレンは制服から私服に着替えていた。この前デートに行った時に二人で買ったものだった。俺は青いジーパンにベージュのコート、エレンは白いワンピースを着ていた。カフェはコーヒーの香ばしい香りが漂ってきて程よく暗く、落ち着いて話せるような場所だった。ステンドグラスが張ってありそれらもこの店の雰囲気をよくしている。
「エレン。何にする?」
「うーん。コーヒーって私飲み慣れてないんだよね。私は紅茶にしよっかな」
「俺はコーヒーにする。後デザート何がいい」
「何にしよう。一緒に決めようルーク」
俺達はメニューを見た。プリンにパフェ、ケーキ、ティラミス、モンブランなど前世のカフェにも似たようなメニューが書いてあった。写真ではなく絵が書いてあったがその絵がリアルで上手い。写真ほどではないが実態をよく捉えている。それはともかく、俺達はメニューから何のデザートにするか選んでいた。エレンが喜びそうなものが何か考えているとエレンの方から指差しで決めてきた。チーズケーキのようだ。
「これがいいのか?エレン」
「ここのチーズケーキって美味しいってアルティが言ってた気がするし、これにしてみない?」
「アルティか。クリスと行ってたのかな、そんなことも無いか」
「ルークはこれでいい」
「ああ、エレンが選んだのなら俺もそれにする」
「すいません。注文です」
「はい」
「紅茶とコーヒーとチーズケーキ1つお願いします」
俺達は注文を終わらせ待ち時間を過ごす。ステンドグラスの光が魅力的でそれにエレンのきれいな赤髪と白いワンピースが生え、俺はエレンに見とれていた。
「ルーク、しりとりする?」
「しりとり好きだなエレン。まあ、俺もするけど」
「だって楽しいじゃん頭使うし」
「それもそうだな。これは元の世界の遊びなんだよ」
「そうだったんだ。通りでよくできてると思った。そういえばルークの元の世界の言葉はどんなものなのか教えてほしいな。確か名前は来栖太陽でこっちとは違って苗字が先だったよね」
「俺の世界の言葉を覚えたって使わないと思うけど知りたいなら教えるよ。今注文したチーズケーキはこうやって発音するんだ」
そうして、おれはチーズケーキを日本語で発音した。エレンはそれをじっと聞いていた。
「そうなんだ。前の世界の言葉を教えてもらいながらしりとりしていい?」
「いいけど、俺の世界のしりとりは最後にある発音をすると負けになるんだ」
「しりとりに勝ち負けか。新鮮だな。ちなみに負ける発音は何?」
俺はんの音を日本語で発音する。
「これが最後の音にすると負ける発音だよ」
「そうなんだ。早速やろう。って、コーヒーと紅茶が来た」
「まずは飲まないか?このしりとりをしたら長くなりそうな気がするし」
「それもそうだね。コーヒーってそんなに美味しいの?」
「慣れれば美味しいものだよ」
「ちょっと貰うね。カップに口付けたところに口付けて飲んでね」
「じゃあ、俺もエレンの紅茶をちょっと貰うよ」
「うん。飲んでいいよ」
俺達は互いに飲み合い、そして互いが口を付けたところから注文したものを飲んだ。間接キスは平常運転である。
「それで、しりとりやろうルーク」
「ああ、何から始める?」
俺達は日本語で発音するしりとりをした。俺が教える部分が多いのは当たり前だが、変換するのは結構時間がかかり、それでも2人で遊んでることに満足しながら時を過ごしたのだった。そうして、チーズケーキがやってくる。運ばれてきたチーズケーキは1人分だ。これを2人で分けるのだがフォークはもちろん2人で1つとして使う。
「ルーク、あーんして」
「あーん」
エレンがフォークを片手にチーズケーキを俺の口に入れる。そして、俺は食べる。チーズケーキは適度な酸味がありまろやかでとても美味だった。
「エレンばっかりもなんだし俺にもエレンにあーんさせてくれ」
「いいよ。こういうのっていいよね。あーん」
エレンの食べている姿が可愛かった。口に頬張る白い頬は笑顔で、見ているこっちが癒される。
「エレンは可愛いな」
「えへへ、嬉しい。ルークもかっこいいよ」
「ありがとう。エレンに言われると嬉しいよ」
「私もルークに言われるから嬉しい。他の人に言われることも無かったけど、ルークに言われるのが一番嬉しいよ」
俺達はチーズケーキを長い時間かけて食べ終わる。チーズケーキはアルティが言っている通り美味しかった。だが、エレンと来たことで美味しく感じたのもあると思う。俺達はこの店を後にする。そうして、ある公園へ向かった。町の中でも森に近い方にある公園で鴨や鳩などの鳥が集う池だった。池の中には鯉もいる。鳥以外はあまり人のいない静かな公園だった。だが、時折子どもが遊んでいる。
「ここでキスする、ルーク?」
「もうちょっと人がいないところはないかな」
「あそことかどう?」
エレンが茂みを指して言う。一つのスペースになっているし見られなそうな場所だった。俺達はそこに向かっていく。そして、そこで抱き合いながらキスをした。
「噴水だけじゃなくてこういう場所でもこうしてたいな」
「ああ、この場所を見つけられてよかった」
もう一度キスをする、舌と舌を絡め合った。俺達はこの公園で2人だけの時間を長く過ごしたのだった。しばらくして、公園の方も見て回ろうと2人で歩いた。鴨が泳いでいてその餌が置いてある場所があった。貯金箱にお金を入れてくれれば取って行っていいようだったので、俺達は銅貨1枚を貯金箱に入れ、鴨の餌を買った。そして、鴨に餌をやる。
「「「グワグワ」」」
「うわー。寄って来た。凄いよ」
「やっぱ餌に釣られてくるんだな」
俺は前世で鴨に餌をやった経験はない。だが、集まってくる数は予想以上だった。池の鴨が俺たちの周囲を囲む。餌をやると口に入れて行った。餌を投げた場所に鴨が集まるということもあった。
「ルーク、楽しい」
「俺もだ。こんなに鴨が来るとはな」
「ルークは前世でこういう経験したことあるの?」
「いや、ないよ。新鮮ですごく楽しい」
「そうなんだ。私は鴨が好きになっちゃうかも可愛い」
「そうだな。こんなに近くで鴨を見ることになるとは」
俺達はしばらく鴨の群れと戯れた。餌が無くなると去って行ったが、いい思い出になったと思う。
「もう夕方だね。帰らなきゃ」
「もうそんな時間か。太陽を見りゃ分かるけど」
「まあ、まだ門限じゃないからゆっくりしててもいいかもしれないけど」
「帰るか」
俺達はエレノール学園へ向けて歩き出す。公園の人ごみの無い場所を歩く。ここには2人だけしかいなかった。その状況を快く思いながら歩いているとエレンが俺の耳にキスをしてきた。
「2人だけの秘密ね」
「ああ。俺も」
今度は俺がエレンの耳にキスをする。エレンは笑いながらも顔を赤らめていた。その様子も俺には愛おしかった。そのまま歩き続け、町にまた来た。だが、町の様子は昼間とまた違った。何かピリピリしているような感じだった。そして、エレンを狙う気配を察知した。それは黒装束の男だった。
「何者だ」
「へっ。俺らが名乗るとでも。まあ、魔女狩りだよ。坊主、その嬢ちゃんを寄こしな」
「誰がやるか。ぶっ殺してやろうか」
「へえ、やんのか」
俺は咄嗟に土属性の初級魔法ストーンバレットを放つ。一瞬で黒装束の男は気絶し倒れた。
「エレン、大丈夫か」
「私は大丈夫だよ。それよりこの人どうする?魔女狩りって言ってたけど」
「何だ。ノワール。どうした」
黒装束の男をやったと思ったら別の黒装束の男が出てきた。
「お前らもこいつの仲間か」
「なっ、まさか手前」
「こいつをやったのは俺だ。お前らはこいつの仲間なんだな」
「ああ、そうさ。だからどうしたっていうんだ小僧。お前ごときで何かできるわけがないだろう」
俺は土属性の初級魔法ストーンバレットを顔の横に放った。結構な速さだったはずだ。
「はん。魔法くらいなんだ。その赤髪を」
「じゃあ死ね」
俺はストーンバレットを男の顔面に撃つ。流石に殺してはいないが致命傷なはずだ。
「どうする。こいつらを先生たちに差し出すかどうしようか」
「それでいいでしょう。こちらに預からせてください」
「貴方は、アベル先生」
「魔女狩りが出没したって聞いたからやって来たんだけどまさかルーク君と戦闘になってるとはね。見事にそれを鎮圧したと。流石天才」
「褒めても何も出ませんよ。久しぶりですアベル先生」
「僕もエレノール学園で教師をやっててね。会う機会はなかったけど僕は普段は外の警備を担当してるんだよ」
「そうだったんですか」
「ルークの知り合いなんですか先生は」
「ああ、君がルーク君の許嫁か。そうだよ。ちょっと小さいころに家庭教師をしてたんだ。1日でやめたけど」
「1日で、じゃあシルヴィア先生がやっぱりルークの師匠なんだね」
「そうとも言えるな。シルヴィア先生には1番子どもの頃世話になったよ。おかげで今があると言っても過言ではないからな」
「お2人はやっぱりデートに行ってたのかな」
「そうですよ。エレンは可愛いですよ。あげませんけど」
「ははは。君からエレン嬢を取ろうものなら命はないと思うよ。お幸せに」
俺達はアベルに出会い、雑談をした。黒装束の男たちはアベルが捕えている。
「それより、早く学園に戻った方がいい。今日は魔女狩りの連中の活動が活発だ」
「分かりました。ありがとうございますアベル先生」
「急ごう。って言っても私が危険なんだけどね。ルークが守ってくれるから安心ではあるけど」
「そう言ってくれるのは嬉しいけど急ごう。奴等はエレンが狙いだろうからこうして行こうか」
「ちょっとルーク」
俺はエレンをお姫様抱っこした。そして、学園に向かって走った。魔法で身体強化もしている。なのですごいスピードが出た。
「みんな見てると思うのに恥ずかしいよ」
「こういう時は仕方ないだろ」
「もう、私もいつかルークに恥ずかしい思いさせてやる。嬉しいけど」
こうして、俺達は学園にすぐにたどり着いた。門限は過ぎていない。今日はデートから黒装束の男に狙われた。この点は反省しようと思う。
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