第9話 仲直り

「クリス。アルティが待ってるぞ」

「えっ。そうなのかルーク」

「そうだ。彼女を待たせるな。男だろ」

「あ、そうだね。でも急にどうして」

「いいから行くぞ」


 俺はクリスを男子寮から引っ張り出した。そしてアルティの元に連れていく。


「クリス。久しぶり」

「久しぶり、大丈夫だったアルティ」

「大丈夫かって言われたらそうじゃないけど来てくれて嬉しいよクリス」

「っ。ありがとうルーク」


 クリスは泣き出していた。嬉し泣きのようだった。これでハッピーエンドだといいのだが、早速アレスの奴がやって来ていた。


「ほら、やれジゼリウス。アルティに魅了を掛けるんだ」

「貴様、誰に向かって口ぎきしていると思っている」


 ジゼリウスがついてきたので俺はアルティに魅了防御の魔法をかける。アルティはジゼリウスに魅了される状況にはしたくなかった。


「アレス。お前誰に向かって口を聞いてるんだ」

「うるさい。こいつは俺の奴隷だ。王族気取りでいるのも最後にしてやったんだよ。そこの赤髪ごと魅了しろジゼリウス」

「ちっ。分かったよ」


 ジゼリウスが魅了を発動するが魅了防御の魔法が働いて何も起こらない。


「ほら、やったぞアレス。これでこの契約は終わりだろ」

「くそっ。何で魅了されない」

「アレス。お前は不敬罪だと思うぞ」

「そんな、誰か、誰か隷属の印を持ってこい誰か」

「お仕置きだアレス」


 俺はストーンバレットをアレスに向かって打つ。一瞬でアレスは気絶した。ジゼリウスは他国の王族だ。ここまでなめた口を聞いたのなら不敬罪でもおかしくないだろう。というか隷属させたのだからもっと大きい罪になると思う


「ふっ。感謝するぞルークと言ったか。私はアムネシアに好意があるだけで他には広げるつもりはなかった」

「隷属ってどうやってあなたほどの人にこいつがしたんですか」

「少し騙されてな。こいつが闇の組織と通じているとは知らなかった」

「どこに差し出します?」

「王国に差し出して処刑にしてやろう。こんな屑許すわけにはいかん」


 ジゼリウスが来て校内では騒ぎになっていた。一先ず学園長に報告に行くことになった。


「それで、そのアレス・セフィロスがジゼリウス・フォン・クオークを隷属させたと」

「はい。学園長。アレスはジゼリウス様が預かっています」

「そうか。ならそちらに任せるとしよう。にしても魔女狩りの連中がこの学園にまで手を伸ばしているとはのう」


 魔女狩りというのがアレスの属していた闇の組織らしい。その名の通り魔女を殺していく団体なのだが、魔女を実験台にするなどして非人道的な行為を繰り返していた組織のようだ。魔王が魔女と関係あるかは分からないが、もしかしたらそれもでっち上げたことなのかもしれない。この組織と俺は相いれないだろう。エレンもジョブが魔女なのだから。


「まあ、ルーク君。君の大切にしているエレン・フォン・ミレルアルカも魔女だろう」

「どうしてそれを」

「わしには、分かるんじゃよ。だが安心せい、魔女だからと言って何かあるというのは魔女狩りの連中の妄言に過ぎない。まあ、言い伝えには魔王が魔女を使って悪さをするというのはあるがの」

「それは嫌な言い伝えだ。どこの言い伝えなんです」

「この国のじゃよ。魔女は希少な髪色の女性になる者が多いとされておる。入学式後の時はアレス・セフィロスは酷かった。あれだけで疑ったがやはり魔女狩りだったとは」


 学園長は頭を抱えていた。俺はその後帰っていいことになり、エレンたちの元に戻った。


「ルーク。どうだった」

「アレスの対応はジゼリウスに任せられるらしい。それとアレスは魔女狩りっていう組織に属してたらしい」

「嫌だなあ。わたしもそうなのばれてなかった」

「学園長にはばれてたよ」

「エレン。私は貴方が魔女でも友達のままでいるからね」

「アルティ。大丈夫だよ。これまで通りやっていこう」

「アルティ。何かあったら俺が盾になるから。魔女って言われても俺は木身を守りたい」

「クリス。大丈夫。もう危機は去ったと思うから貴方が盾になる必要はないわよ」


 クリスがアルティに近づきながら言うが、その様子にアルティは優しく微笑んでいる。アレスがいなくなったからと言って魔女狩りの危機は去ったとは言えないと思う。だが、一先ずは2人は安心して会えると思う。


「おーい。ルーク、俺を置いて行くのは酷いじゃないか」

「カイル。おはよう、洗い物は終わってただろ」

「ああ、ありがとうよ。っていうかエレンちゃんと何かしたのか」

「ああ、恋人らしいことをしてたよ」

「そうかい。リア充末永く爆発してくれ」

「何だよそれ。俺達を祝福してくれてるのかけなしてるのか分からないぞ」

「半分嫉妬で半分祝福だよこん畜生。俺も彼女欲しいなあ」

「ルーク、友達なの」

「ああ、領で同じ部屋のカイルだよ。カイル・ジルコニアっていうのが本名さ」

「よろしく。みんな」


 俺はカイルの紹介をして、授業をしに教室に向かった。昨日と同じで俺はダンジョンに挑んだ。


「今日は時間を縮めることを目標に頑張れルーク」

「ちなみに前回はどれくらいだったんですか」

「2時間くらいだ。頑張れ」


 俺はシルヴィアにダンジョン攻略をまたさせられているのだった。昨日と同じダンジョンを少し楽になったかもわからない状況で急いで進まされた。タイムが縮んで1時間50分でクリアできたらしいがそれも気絶して分からなかった。そうして、また保健室で休んでいるとエレンがついていてくれた。そして今回はアルティやクリス、カイルまでもついてきていた。


「ルーク、大変じゃない?大丈夫?」

「大丈夫じゃないけどこれでエレンを守れるなら安いもんだよ」

「すごいな。モテる男はここまで違うのか。参考にさせてもらうぞルーク......真似したくはないけどな」


 エレンが慰めてくれたと同時にカイルが俺を褒めてくれる。そしてほかの二人は心配そうにこちらを見ていた。


「クリスもアルティも俺は大丈夫だよ」

「でもルーク。今君にいなくなられたら俺も困るんだよ」

「そうか。クリスはアルティとやってけると思うけどな」

「大事な仲間なんだよ。俺はお前に救われた。だからこうしてアルティといれる」

「俺もここまで頼られるとは。早くお前に魔道具を作ってやらないとな」

「いいのかルーク。俺のために」

「ああ、お前のためだ。俺はもっと強くなって魔王も倒せるようにしておきたい。そうすれば安心だろう」

「魔王ね。それって勇者の聖剣じゃなければ倒せないって言われてるけど」

「それでも強くて困ることはないと思う。俺はエレンを守りたい」

「ルーク......」


 エレンは何か悩んだ表情をして黙ってしまった。


「エレン。俺はお前を守るし俺もお前を一人にしない」

「ルーク。無理はしないでね」

「今しているのは無理じゃない。強くなるための修業だよエレン。俺はこんなことで死なないから安心してくれよ」

「......分かった。その言葉信じるよ。でも生きててね。約束だよ」

「ああ、嘘をついたら針千本でも飲んでやるよ」

「それだったら意味がないじゃない。嘘ついてもそんなことできないよ」

「それくらいの覚悟はする。じゃなきゃ婚約者として失格だろ」

「私はそんな大事にされてないけどルークがいなくなったら私が暴走するからね」

「それは困るな。だけど約束はたがえない。良かった顔色が戻ってきて」


 俺はエレンが笑っていることに安心して保健室を後にした。俺達は教室に向かう。授業が始まる前のようだった。


「それじゃあ、俺はここで」

「あ、俺もここで」

「二人ともありがとうな」

「代わりにいい彼女紹介しろよルーク」

「カイル。厚かましいんじゃないか」

「んだよ。いいだろ」


 カイルとクリスが4組に行った。俺達は授業をしてその日も問題なく授業が終わった。その後、風紀委員の話があるというので集まっていたが、マチルダが来ていた。


「この学校で風紀を乱す行為をしていたらアレスのようになります。気を付けてくださいね」

「マチルダがアレスに何かしたのか」

「知らないのかルーク。あいつは風紀委員のメンバーにボコボコにされてる真っ最中みたいだぞ」

「そうなのか。メルドだったけか。それをどこで知ったんだ」

「さっき魔法の録画を見せられたんだよ。この学校は風紀が乱れているのでとか言ってさ」

「先ほどいなかった人もいたようなので水晶を持ってきますね」


 マチルダから持ってこられた水晶には集団でリンチされるアレスが映っていた。俺はマチルダが敵でなくて良かったと思ったのだった。


「風紀委員って風紀を乱した奴にはこんなに厳しいのか」

「あ、ルーク。おはよう。怪我は大丈夫かい。私は忙しくて来れなかったけどその様子なら元気そうだね」

「マチルダ。お前が敵じゃなくて良かった気がするよ」

「それはこっちの台詞だよ。君が敵対したらこっちでも止められそうにないからね」

「うわ、アレスに目つぶししてるよ。ルークちょっと怖いよ」

「無理に見る必要はないからなエレン。にしてもこれはやりすぎなんじゃないのか」

「こうでもしたら逆らう奴はいなくなるとの方針だそうだよ。ルーク君」


 敵対した者の惨い姿を見せて風紀の乱れを防止するその姿は風紀委員と呼べるものなのか怪しいと思うが、これは確かに効果的かもしれない。水晶の中では拷問されるアレスが泣きわめいている。だが、彼がしたことはこうなっても仕方ないことだとも思う。隷属を王族相手にするものではないし、一般人にもそんなことはしてはいけない。今回は風紀委員が暴走しているとは言えないかもしれない。


「もちろん。乱した風紀に応じて対応は変えているんだが、彼はやり過ぎた。裏で魔女狩りに通じて本当に魔女を実験道具として提供していた証拠も見つかっている」

「そうなのか。アレスもアレスで酷いことしてるってことなのか」

「後補足しておくとアレスはジゼリウス様が風紀委員に頼んでこういうことをしているので処分としては正当なことなんだよ」

「ジゼリウス様は怒ってるってことか」

「そうだよ。王族としてのプライドも砕かれそうになったと言っていてね」


 そういえばこのような場面はゲームには登場していない。どうなっているのかは分からないがシナリオは変わっているということなのだろうか。俺は、謎だがそこらへんも後々探ってみることにしようと思うのだった。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る