第7話 ダンジョン
俺とエレンは翌日になって結果を見に行った。俺もエレンも同じクラスで1組だった。高い順から1234とあるようだったが同じクラスになれて安心した。
「同じクラスだ。良かった」
「これでひとまずは安心かもな。エレン、筆記の成績満点なのか。凄いな」
「ルークも実技満点じゃん。ルークも凄いよ」
俺達は互いを褒め合った。ここには成績が全員のが張り出される。良くない成績の人も張り出されるのでがっかりしている人も見受けられるし、後々大変ではないかとも思う。俺達は点数が高いのでいいが。ゲームではエレンは2組で主人公のアムネシアも2組だったが、アムネシアは2組のようだ。ゲームと同じ展開が避けられそうなので良かった気がする。他の攻略対象も2組で一先ずは安心と言える気がする。
「クラスが分かった人達から担当の職員の元に集まってください」
先生らしき人物が俺達を誘導する。1組はいかにも優等生な人物から実力だけで上がってきたような古傷だらけの人物までたくさんいた。クラスメイトが集まり自己紹介を始める。1組は計30人。その中で軽く自己紹介することになるのだと思ったが、途中で金髪青目の優等生らしき人物が青髪青目のボブカットの少女を罵倒する発言をしていた。
「先生。お考え直し下さい。こんな屑を1組にさせるなんて」
「っ」
「この青髪は魔女かもしれないんですよ。それにあの赤髪も」
「は、お前喧嘩打ってるのか」
「な、お前は」
「今の発言撤回しろ。屑はお前の方だ」
「学園のルールとして成績の良いものが1組になる。これはルールですので変えられませんアレスさん」
「くそ。魔女は殺されるべきなんだ。魔王が復活するかもしれないっていうのに」
魔王という単語がアレスから出てきてその意味を考える。一応魔王について学習はしていたが、魔女が関係あったような情報はない。アレスの勘違いなのかは分からないが俺はどうあってもエレンを守ろうと思った。エレンのジョブが魔女だと俺は知っている。でも大切な人だから守りたかった。
「では、そこの文句を言ったルーク君自己紹介を」
「ルーク・ジルベルトです。よろしくお願いします」
さっきどさくさに紛れてエレンを庇いアレンを罵倒したことで注目を集めていたが、無事自己紹介は終わった。
「隣のエレンさんも自己紹介をお願いします」
「エレン・フォン・ミレルアルカです。よろしくお願いします」
ついでにエレンの自己紹介も終わる。その先は順調に自己紹介が終わってこの時間は終わり休み時間になった。
「大丈夫だった?アルティちゃん」
「ううん。慣れてるから。貴方はエレンって言ったよね。あのミレルアルカ家の」
エレンが青髪青目の子アルティに話しかけていた。さっきのアレンによる罵倒を慰めていたようだ。仲良くなっているようだし、これから友達になってくれればエレンも俺がいなくなっても寂しくなくなるだろう。いなくなるつもりなど毛ほどもないのだが。
「エレン。新しい友達ができたか」
「アルティ。良かったら友達になってくれる」
「いいよ。エレンちゃん。私は友達がいなくて悩んでたんだ」
こうして、初日はエレンに加えてアルティが話仲間に加わった。
「それで、2人って付き合ってるの?」
「ああ、そうだよアルティ」
「うん。ルークのことは大好きだよ」
「そうか。いいな。私もいつか素敵な人と巡り合いたい。っていっても現実的じゃないけどね」
そうして、たわいもない会話をしながら休み時間は過ぎていった。初の授業は魔法の指導と剣の指導に分かれて行うらしく、俺とエレンは魔法の指導に行ったがアルティは剣の指導に行ったようだった。
「エレン。また友達ができて良かったな」
「アルティも嬉しそうだったよ。私も一人だったから分かる気がする。ルークもアルティと友達になったってことでいいよね」
「ああ。アルティとは友達さ。俺はエレンが一番だけどな」
「もう。ルークったら照れるじゃん」
教室の移動中にそんな会話をしながら移動が終わる。家の訓練場のような場所に来た。的も置いてあるし、ここならある程度の魔法ならどんどん放っても良さそうだ。
「これから魔法の訓練を始める。それからルーク・ジルベルト、お前は別の人物が先生だ」
「えっ。俺だけ」
「そうだ。シルヴィア先生、頼みました」
「久しぶりだねルーク。魔法の鍛錬は怠ってなかったようだね。これからは私にじっくりしごかれなさい」
「マジか」
俺はシルヴィアとの再会に驚きつつもまた強くなれるのならと思う気合と、面倒なことになったという思いが交差していた。だが、シルヴィアがついていてくれるのならもっと強くなれる気がする。感謝が面倒な思いを上回った。
「ルーク。あれが」
「そう、俺の家庭教師だった人だよ」
「ルーク。頑張ってね」
「エレンも頑張るんだぞ」
「ほう、ミレルアルカ家の令嬢を婚約者にしているというのは嘘じゃないみたいだなルーク」
「俺はエレンを守るためにもっと強くなりたいんです。先生、お願いします」
「分かった。その望みお前の努力の分だけ報われるだろう」
こうして、シルヴィアと俺の訓練がまた始まった。シルヴィアは俺を学園の少し離れたところのダンジョンに連れて行く。ダンジョンの入り口である黒い門が禍々しく黒く輝いていた
「流石に家からここまでは来れなかったからな。ダンジョンに潜るぞ。ルーク」
「はい。ここはどういうところなんでしょうか」
「気にするな。というか自分で調べろ。私は命が危なくなった時以外一切の手助けはしない」
「はあ、そうですか。ここを攻略するんですね」
「当然だ」
そうして俺はダンジョンの扉を開ける。すると突然集団のコウモリのような翼の生えた角を生やした人型の小型の魔物ガーゴイルが襲って来た。それを俺は土の初級魔法ストーンバレットを放ってすべて倒す。そうして先に進み階段があったところにはデザイアーと呼ばれる手の魔物が地面から伸びてきて襲って来た。これもストーンバレットで何とかした。どれも凄い速さだが、ここはどういうダンジョンなのだろう。
「シルヴィア先生。ここってどういう肩書のダンジョンなんですか」
「地獄の蓋だ。Sランク冒険者が数人で挑むダンジョンだ」
「やっぱり異常だと思った」
俺は階段を下りる。その次のエリアは太陽のような物が天井にあり植物がたくさん生えていた。毒の霧を出す植物や、ハエトリソウのような植物型の魔物など植物が主流の階のようだった。それから虫の魔物もいた。蜘蛛の魔物と戦闘になった。ストーンバレットを打つが蜘蛛の糸に阻害されて蜘蛛に一撃を与えられなかった。俺は火属性の初級魔法ファイアーボールを出して糸を焼こうと思ったが、初級魔法では少ししか焼けなかった。俺は中級魔法のファイアーアローを使い蜘蛛の巣を壊していった。だが蜘蛛型の魔物はどんどん糸を張ってきりがない。俺は火属性の上級魔法ヘルインフェルノを使い蜘蛛ごと巣も燃やした。周辺の植物も焼けたがすぐに再生していく。これがダンジョンという物なのだろうか。俺は毒の霧を出す植物から毒を防御する結界を張って逃れながら次の階に向かう。
「まあ、上級魔法を使える魔力量も当然増えているのだろうルーク。これからはもっと強くなるから覚悟しておけ」
「分かってます。俺はもっと強くなりたい」
「案外まだ余裕そうだな」
余裕ではないと言いたいところだが、以前の俺よりは格段に強くなっている。もう一つ先の階層は湿地帯だった。そこにネッシーのような竜の魔物がいた。恐竜型のティラノサウルスのような蜥蜴の魔物やプテラノドンのような飛行する魔物もいた。それらに集団で襲われながらも水属性の上級魔法ヘルタイフーンを使い一掃した。たくさんの恐竜型の魔物たちを一掃して精神的に少し疲れた。
「これでも魔力切れにはならないか。やはり私が育てた甲斐があった」
「先生は魔力切れになったらどうするつもりなんですか」
「魔力回復のポーションなら持ってきてるぞ。だが、今は使わせない。魔力切れになってからだ」
「魔力が限界まで減った後に魔力回復のポーションを使うことで魔力回路を鍛え上げるっていうことですか。分かりましたよ。そういうことなら安心しましたよ」
「まあ、持ってるポーションなんてそんなにないんだがな」
「全然安心できない」
俺はその後次の階層に潜り、マグマの巡る洞窟を進んでいった。マンティコアという頭が禿げた男性の体がライオン型で尻尾には毒のある魔物に集団で攻められたり、それにオルトロスという二つの頭を持った黒い獰猛で巨大な犬の魔物の群れが加わってきたりして足場もマグマで少し焼けながらも回復して何とかその階層を乗り切った。だが、今回は途中で魔力切れが起こりポーションで回復したが心もとなかった。そして、次がボスの階層だった。階段を下りた先には入口よりも禍々しく輝く扉があった。
「さあ、いよいよ最後だ。この扉を開ける準備はいいかルーク」
「ええ。頑張って仕留めますよ」
扉を開ける。扉はゆっくりと開いた。その先にはとてつもないくらい巨大な山羊のような形の丸い角と顔の人型の体の筋肉質な魔物がいた。バフォメットという魔物らしい。ダンジョンのボスはずっしりとしたたたずまいをしていた。
「よもや人間がここまでたどり着くとはな。その実力見せてみよ人間」
「はあ、やるか」
俺は、魔力が少なくなっていて上級魔法はそんなに使えない。だが、身体強化の魔法をかけて急所を狙うことにした。バフォメットは動き出す。俺をその手に持った斧で切り裂こうとしてきた。衝撃波だけでもこちらが揺らめきかける。だが、そこに猛毒の中級魔法ポイズンランスを打つ。
「ふん。毒か。我をこれくらいで倒せると思うなよ」
バフォメットの動きが激しくなる。だが、それは落ち着きを欠いているようにも見えてそこにストーンバレットをマシンガンのように顔に撃った。目を狙ったが一発は目に当たった。
「人間よ。良くもやってくれたな」
バフォメットの動きがさらに激しくなり回避が困難になり俺は突き飛ばされた。だが、その足に俺は魔法を放っていた。土属性の上級魔法ストーンメイデンだ。バフォメットの足は粉々に砕かれた。そしてそれを顔にも放った。
「ぐあー」
「やった。勝った」
俺は勝利と共に意識を手放した。次に目が覚めたのは保健室だった。エレンが心配そうな顔をしていたが、慰めた。
「大丈夫ルーク?」
「ああ、無事さ。だから笑ってくれ」
「良かった」
俺はダンジョンを攻略した。こうしてエレンの顔を見れているだけでも幸せだ。俺は充実した休み時間を過ごすのだった。
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