第4話 神託

 春の陽気が心地よい日、俺とエレンは神託を受けにシルヴェニア王国の教会に向かっていた。シルヴェニア王国はときめき王女様でも出てきた主要な土地だ。エレンと会った後家で土地を調べてみたが、ゲームで出てきた場所がこの辺りから多かった。やはりこの世界はときめき王女様の世界らしい。だが、ゲームと同じことばかりではない。この神託はゲームに登場していない。ゲームには出てこなかったがあるもの。それは俺自体もそうだし、俺の使う上級魔法の一部もそうだった。この世界はゲームに登場するがゲームではない。俺はゲームでのエレンの辿る運命が悲惨なものであることを知っている。エレンを守るために俺もこの3年間強くなるように時間を作って修行したし、エレンにも孤独にならないように沢山関わった。エレンに関してはゲームでは孤独故に悪役令嬢になったとあったのでそこまで心配しなくてもいいかもしれなかったが念のために友達としていっぱい遊んだ。それからここ数年でエレンも魔法を俺から習いだした。いつになっても鬼ごっこで歯が立たないと言うことだったのでその謎に迫られた時、俺が魔法を使えることを言った。それからエレンと魔法の修行をすることも増えた。共に楽しくやっていたのである意味鬼ごっこよりも俺は楽しかったと思っている。それはさておき神託が始まる。俺達は教会の中で結果を待った。話によると自分にしか見えないステータスのようなものが出てくるらしい。ゲームではステータスは毎回確認できるが、いつもステータスのようなものを確認できるわけではないと思う。そして俺は強烈な光のようなものを認識する。


ルーク・ジルベルト

ジョブ【魔道士】

体力210

魔力370

筋力67

防御力71

素早さ91

スキル【火魔法】【水魔法】【風魔法】【土魔法】【回復魔法】【結界魔法】


「何だったんだ今のは。これが神託か」


 俺は強烈な光のようなものを認識ししっかりとそれが記憶に焼き付いていた。だが、俺に見えた光のようなものは他の人には見えていないらしい。エレンも神託のようなものが来たようだ。


「すごい。これが神託」

「お二方とも神託を得たようですね。ここで得た情報は秘密にするのも自由ですがジョブによっては優遇されるものもあるので考えて使ってください」


 そう教会の司祭に言われたが、俺はエレンに神託でどうだったか聞いてみることにした。


「エレン、どうだった?」

「分かんない。比べられる相手がいないし」

「俺はジョブは魔道士だった」

「私は魔女。何か周りには知られたくないな」

「エレンも魔法系か。一緒だな」

「それは嬉しいかも。ルークと一緒なのは」

「照れるなあ」

「ちょ、ちょっとそういう意味じゃなくて」


 エレンの顔が赤い。こうやってエレンをたまにからかっているが、俺はエレンが好きだ。この思いをいつか伝えたいと思っているが、学園に入ったら他の子を好きになってしまうのだろうと思った。攻略対象はどの人物も魅力的な人物だ。俺も転生してかっこ良くなったと思うがそれでも容姿も敵うかどうか分からない。その時になってもエレンが俺に好意を持ってくれていたらいいが。


「お坊ちゃま。終わりましたか?」

「ああ、終わったよマリア」

「それにしてもエレン様には使用人は何故付いてこないのでしょうか」

「っ」


 エレンは実家でも避けられている。それはエレンの赤髪のせいなのだが、母親も父親も赤髪ではないのだ。これはゲームでも語られていることで、俺には直接言われていない。だが、俺は動揺しているエレンの頭を撫でる。


「大丈夫だよ」

「何よ。これくらい大丈夫なんだから。でも、ありがとう」

「俺はエレンの髪も綺麗で好きだよ」

「なっ」


 エレンが再び顔を真っ赤にした。そしてその赤くなる顔を手で隠した。マリアは俺の態度にやれやれと言った感じで呆れている。


「お坊ちゃま。イチャイチャするのはいいですがエレン様と結婚するつもりなのですか」

「それは秘密だよ。とは言っても家が家だし結婚はできるか分からないな」

「け、結婚」

「そんな縮こまらないでもいいよエレン。いつも通りに、な」

「ルーク。私のことどう思ってる」

「とっても大事だと思ってる」

「私もルークのこととっても大事だと思ってる。だから、その、いなくならないでね」

「当たり前だろ。それくらいは守るよエレン」

「私、ルークくらいしか友達がいなくて。昔は友達だった猫もいたけどもう死んじゃった。赤髪の私は避けられるばっかりだったけど初めてルークが友達になってくれて嬉しかった。でも友達じゃ足りない。もっとそれ以上の関係になりたいの」

「これは告白と受け取ってもいいのかな。俺でいいなら恋人になってもいいよエレン」

「本当?嬉しい」


 俺は内心で歓喜した。エレンと恋人になることに成功した。前世では彼女はいなかったが、ついに彼女ができた。しかも仲のいい子と。ゲームでも好きなキャラだったが、こちらに来てから彼女に恋心を抱くようになったのはいつからだろうか。ゲームをするのと実際に会うのは別の感覚だ。だが、彼女を好きになった時から守ろうと思う思いは急激に強まった。エレンもまた喜んでいるようだった。この愛がずっと続いてくれればいいと思った。そして俺はエレンを愛し続けると決めた。できれば結婚もしたい。いや絶対にしようと思った。


「お坊ちゃま、やはりエレン様と結婚されるおつもりですか?」

「そのつもりだよ。ま、こうなったからには隠すつもりはないけどね」

「ルークと結婚かあ。私もそのために頑張らないと」

「エレン、俺は君と結婚したいと思ってる。そうしてずっと愛し合いたいと思う」

「私もだよルーク。大好き」


 顔を赤らめながら言うエレンが可愛らしいと思う俺だった。教会から帰る途中でこんな話になったが、親に相談しなければならない。エレンの親にも頼みに行かなければいけないかというと、そうでもないような気がする。ミレルアルカ家はエレンを軽く扱いすぎている。エレンからも親からあまり大事にされてた感覚が無かったそうだし、1回家に入ったことがあるがエレンは使用人にも愛想無い態度をされていた。結婚も勝手にするように言われるかは分からないが、両親は子どもを政略結婚の道具と考えているようでエレンはその落ちこぼれとして考えられているというのがゲームの情報だ。その点に関してはむしろチャンスである。エレンは俺より上位の貴族に当たるがそう考えられているのであれば俺が入り込める隙も沢山あるだろう。エレン自体十一女らしく、姉妹は沢山いる。兄も沢山いるらしく俺とは大違いだ。とにかく、エレンとの婚約の話を進めようと思うのだった。その後、一緒に魔法の訓練を少しして、お互い屋敷に戻るのだった。もちろんエレンは俺が送って行った。そして俺はエレンとの婚約の話を父アーサーにした。


「お前がエレン嬢と結婚?お前自分が何をしようとしてるか分かってるのか」

「まあまあ貴方。いいじゃない。この子達私が羨ましくなるくらい仲良くしてるんだし」

「そんなに大変なことなの父さん」

「当たり前だろ。こちらから上の地位の男性に娘を差し出すのは常識的だが逆は聞いたことがない」

「それって前例がないだけなんじゃなくて」

「はあ、お前は面倒事をこちらに降るか」

「エレン本人も頑張ってみるって言ってたよ。それと本人の立場が低い場合はどうなんだろう」

「エレン嬢がそうなのか」

「例えばの話だよエレン十一女らしいし」

「その場合は確かにこちらが入る隙はあるかもしれない」

「ふう。やっぱりそうなんだね。その場合積極的に進められそう?エレン家でかなり軽く扱われてるみたいなんだ」

「分かった。こちらでも努力はする。きちんとエレン嬢を迎え入れられるような精神性も身に付けろよ」

「分かってるって」


 こうして俺は父アーサーに協力を取り付けた。夕食を食べ寝て、朝が来る。俺はエレンを迎えに走った。


「おはようエレン」

「おはようルーク」

「どうだった。俺は大丈夫そう」

「私も。お父様がルークと結婚させてくれるって言ってくれたの」

「良かった。これで結婚できそう」

「ルーク。お父様は何か貴方に対してすごい評価が良かったの。何か心当たりはある?」

「無いなあ。俺は魔法の特訓を沢山してること以外は普通だと思うけど」

「何かある人に認められてるとかお父様は言ってたけど」

「誰だろうシルヴィアさんはあるのかなあ」

「そう。その人」

「マジか。あの人俺のこと認めてくれてたんだ。嬉しいな」

「何かその人とあったの」

「魔法を教わってた、後戦い方とか。魔法の方は上級魔法を習った」

「上級魔法って......ルークが。ルークに鬼ごっこが敵わないのはその人との修行のせいなのかな」

「あの時かなり鍛えられたからね。あの訓練にエレンは参加させたくないな。はっきり言って危険だし」

「そういえば昨日神託で体力とかも出てたけどどれくらいだったの」

「体力が210で魔力が370、攻撃力が67で防御力が71素早さが91」

「全部ルークの方が上だよ私なんて魔力以外は10位だったよ」

「そうなのか。俺って強かったんだ。ちなみに魔力は?」

「58。ルークには遠く及ばないよ」


 俺はあの時訓練として沢山のことを叩き込まれた。それがこのステータスに反映されているのだろう。だが、エレンを守れるのなら俺の危険など安いものだと思った。むしろエレンを守れるようになるための修行だったのではないかとも思う。物語の結末によってはエレンは殺される。そんな未来も俺の強さでもって防ぐことが出きるのならこれほど嬉しいこともない。


「エレン。俺は君にシルヴィアさんの教え方をさせようとは思わないしやって欲しくないあれは危険だ。それに俺の強さはエレンを守るために使うつもりだから」

「ルークくらい強くなろうとは思ってないよ。でもだからこそ。困ったときは守ってくれるって信じてるよ」

「ありがとう。俺ももっと強くなって魔王にエレンが狙われても守れるようになるつもりだよ」

「まあ多分そんなこと無いと思うけど嬉しい。ルークありがとう」


 エレンは俺の唇にキスをする。お互いが赤くなるが俺もエレンの唇にキスを仕返した。

エレンの顔がもっと赤くなる。


「もう、ルークったら」

「俺達は恋人なんだからこれくらい普通だろエレン」

「そうね。これからもよろしくルーク」


 俺達はこうして何年も恋人として過ごすことになる。婚約の話が正式になったのは数日後のことだった。






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