26話 全滅のシャーマン


「ヒナ!一旦逃げに徹してくれ!」


「いやぁー!死ぬぅー!」


 言われなくても逃げるしか無かったみたいだ。とりあえず俺はヒナを攻撃しようとするシャーマンを邪魔しつつメイガスの元に駆け寄る。HPは8割ぐらい削れてるな。


「おい大丈夫か?」


「すまねぇ。あいつの火力高すぎるし、思ったよりノックバックがやばいわ」


「攻撃自体は7割くらいでノックバックで1割持ってかれたか」


「直撃でこれならちゃんと盾で攻撃を逸らせればもう少しは抑えられそうだ。思ったより攻撃単調だし」


「とりあえずポーション使って全回復しといてくれ。もう行けるよな?」


「もちろん」


 俺はメイガスの元を離れてアヤのところに戻る。現状シャーマンの数は残り8体になっていてオーガロードの攻撃をヒナが避けているとこだ。だがそんな簡単に避けれている訳では無い。むしろこれで避け続けられるならメイガスはいらない。エグスタでタンクが必要とされる理由はいくつか存在している。そのうちの一つが風圧。


 今ヒナがボスの攻撃で最も厄介ものは風圧だ。ただの風圧ではなくエグスタ内で全ボスが固有に持っている特殊な風圧。某レトロモンスターハント系ゲームでは龍風圧とか呼ばれていた程では無いが結構厄介。


 ヒナはボスの攻撃を避けれてはいるがその風圧で怯んでいる。そこを狙ってくるボスの攻撃をアヤの魔法で少しズラして回避しているがむしろよく出来ているな。

 だがそれだけじゃ完全に回避できておらず、ボスの攻撃が起こす衝撃でダメージを受けてるし、アヤがボスに労力を割くということはシャーマンが自由になるということだ。


「ヒナ、一旦下がっても大丈夫だ。メイガス、ボスにバフ入ってるからさっきよりも火力と速度が上がってるからな」


「まじかよ。いやそれでも大丈夫だ!」


 一旦戦況は立て直せたがシャーマンの数以外はさっきよりも状況が悪いな。だがここまでシャーマンの数が減った今なら、MPをフルに使ってスキルを使っても大丈夫そうだな。


「アヤ、シャーマンの動きを少しでいいから止めてくれ」


「分かったわ。10秒後に広域でバインドを使うわよ」


 広域は範囲を広げる代わりに効果量が著しく下がるというスキルだが、そのバインドで一瞬でも動きを止めてくれたら十分だ。


「エンチャント〈強射〉〈貫通〉〈速射〉〈弱点特攻〉〈ホーミング〉、エンハンス〈減衰〉〈威力〉

 、エレメント付与〈聖〉、スキル〈狙撃〉〈チャージ〉」


「行くわよ、バインド!」


 俺が放った矢はバインドで数秒動きを停められたゴブリンシャーマンの眉間を正確に貫いた。 そして矢はそのまま威力を落とさず全く別方向にいたゴブリンの眉間も貫き、そのまま計6体のゴブリンを倒しつつ、7体目で威力が落ちて眉間ではなく腹に突き刺さった。


 だが消費のでかい〈ホーミング〉のスキルと、込めたMPの分だけ威力が上がる〈チャージ〉のスキルのせいでMPがほとんどなくなってしまった。


「2体くらいなら私の魔法でも一瞬ね」


 そのままアヤはシャーマンを魔法でボコボコにしてしまった。

 だがこれでシャーマンは全滅したので残るは1番の問題であるあのオーガロードだけだ。


「あとはボスだけだな。あれが一番ヤバイけど」


「あんたもうMP残ってないから役立たずだけどね」


「うるせぇ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る