25話 レアエネミー

 10層への階段を降りた先には俺たちの身長の3倍はある大きな扉があった。


「もし誰かがボス戦をしてたらこの扉は開かなくなるらしい」


「誰も入ってなくても開けられなさそうな見た目してるぞ」


「でも実際はびっくりするほど軽いらしいぞ、この扉」


「これってちょっとだけ開けて中を確認とかもできるの?」


「ああ。周りの奴らとかは入ってからリスポーンするから分からないが、ボスの見た目は確認できるから最先端を攻略してるパーティーはそれをやってるらしい」


 俺たちはもう一度ボス部屋に入る前に作戦やアイテムの準備をしておく。

 作戦はゴブリンロードの攻撃をメイガスが耐えてる間に俺とアヤで周りに召喚されるソルジャーを倒す。そしてヒナは多分メイガス1人じゃ耐えられないので程よくロードの気をひく役割をしてもらう。とはいえ実際4人でなら勝てる相手の筈だから、落ち着いてやることが一番大事な気がする。


 ゴブリンロードはゴブリンよりも一回り大きいバーサーカーよりもさらに一回り大きく、見た目も緑の肌に凄い筋肉をつけている。

 だが騎士ジョブは一定回数の攻撃を防げるので、スキルを全て使ったメイガスならちゃんと耐えれるはずだ。

 それにあくまで一定回数しか受けれないし、スキルのCTが終わるまでに被弾回数が多くなってしまったら困るので、ヒナにはしっかりとヘイト分散を頼みたい。


「よし、じゃあ扉を開くぞ」


「うわ。ほんとに軽いな」


 俺とメイガスで扉に手をかける。扉は重さを感じさせないが、大きさゆえか少しずつ開いていく。事前情報は分かっているので覗くことはせずに全員中に入る。この時点でアイテムの無い俺たちは、もうボス部屋からは死ぬまで抜けられなくなる。


「ふぅ。ドキドキしてきたわ」


「でもきっと楽勝だよ。さっきより数も少ないんでしょ?それなら余裕だよね!」


 おい馬鹿、そういうのフラグだろ。いや待て最近だとこのツッコミまでがフラグな気がする。


 扉が完全に開ききり、暗かったボス部屋に光が差し込む。暗くて見えづらかったボスの見た目が少しずつ見えてくる。

 俺たちが完全に部屋に入り切ると扉が閉じていき周りの蝋台に火が灯る。そしてそれと同時に完全に姿が見えるボスは事前情報通りの大きさと武器の棍棒を持っており、事前情報とは違う赤色の見た目をしていた。


「おい?ちょっと待った」


「ねぇ、ゴブリンロードって大きな見た目と筋肉質な緑の肌が特徴なのよね?」


「そうだな」


「じゃあなんであいつ赤色の見た目してるんだ?」


 簡単な話、俺たちはレアエネミーを引いたのだ。確率にして約1/32768の確率で出現するボスの別種。あれはゴブリンロードではなくゴブリンの別種進化とされているオーガロードだ。


「もうどう足掻いても戻れないしやるしかない。メイガス、作戦変更。回復アイテム全部預けるから死ぬ気で攻撃に耐えて欲しい」


「いやあいつの攻撃なんて耐えれるのか?」


「多分ちゃんと防御すれば一撃では死なないはず。ポーションケチらずにすぐ回復すれば数回なら受けれるはず」


「分かった」


「その間に3人でソルジャーをすぐに殺す。バフかけられたらやばいから赤色の魔法使うやつを最優先で倒してくれ」


「了解」


「じゃあ行くぞ!」


 俺が言い終わるのと同時にオーガロードが立ち上がる。その場で咆哮を上げると同時に周りにゴブリンシャーマンが召喚される。数にして15体、ゴブリンロードよりも10体増えてるが、ヒナのステータスならワンパン出来るはずだ。


「アヤと俺は同じやつを攻撃して確実に仕留めるぞ」


「どれから狙えばいいの?」


「ヒナとメイガスを攻撃しようとしているやつか、バフをかけようとしているやつを最優先」


 そう言ってるうちに2体のシャーマンがボスにバフをかけようとしている。片方にはヒナが行っているので俺はもう片方を狙う。


「エンチャント〈強射〉、エレメント付与〈聖〉スキル〈狙撃〉」


 俺が放った矢はゴブリンシャーマンの胴体を射抜く。眉間を狙えれば確実に殺せるが外すわけには行かないので胴体を狙った。そこにアヤが追撃でファイヤーボールを当てる。


「よし!次のやつ狙うぞ」


「ヒナはもう2体やってるわね」


 残り12体だがこの速度で削れれば問題は無いが…


「うぐぁ!」


「メイガス!大丈夫か?」


 オーガロードの攻撃を受けたメイガスが吹っ飛んだ。ちゃんと防御していたようだが今のでHPが3分の2くらいは減ってるな。

 それよりも問題なのはメイガスが吹っ飛んだのでオーガロードのヘイトがヒナに向かったことだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る