27話 足掻き
オーガロードのHPバーは残り6.7割程まで削れているが、シャーマンがいなくなったことによりバフが消えつつあるので、さっきよりも柔らかいし何よりゴブリンシャーマンの邪魔が入らないので楽に削れるはずだ。
それにメイガスが敵の動きに慣れてきたのか、オーガロードの攻撃を直接受けるのではなく受け流せる時が最初より増えた。それにより受けるダメージが格段に減り、またスキルによってオーガロードのヘイトが殆どメイガスに向かってるのでほかの3人が非常に立ち回りやすく、オーガロードHPは目に見える速度で減っていく。
俺はと言うと、MPは少しずつ回復してきているが、こんな少なさじゃないのと変わらないので弓でチクチクと敵を削ることしかできない。
なんなら今使ってるスキルの〈弱点看破〉じゃ弱すぎて頭全体が弱点部位と表示されるだけで正確な弱点位置がとごにあるかが全く分からない。というかスキルを使ってない矢だと普通の肌に攻撃しても弾かれるだけなので取り敢えず目を狙っている。
いや敵も回避したりたたき落としたりしてるからちゃんと貢献することは出来てるが、絵面としてあまり活躍してる気分になれない。実際貢献度で言えばみんなよりも明らかに落ちてるからな。
だがそんな風に順調にいってたのも敵のHPが3割を切るまでだった。オーガロードが自らのデカい棍棒の武器を捨てると共にオーラを纏い始めたからだ。
「なんか見るからに何か起きてるんだが!?」
「これは…多分さっきよりも速くて硬くて攻撃も痛くなると思うぞ」
「第2形態になったてことですか?」
「そんな感じ。武器捨てて得意な格闘に切り替えだな」
「素手の方が強いならなんで最初からあのでかいだけの棍棒使ってたのよ」
「ダンジョンモンスターって基本的にシステム的な思考しかしてないからそういうの考えれないんだろうな。とりあえずメイガスは攻撃パターンが全部変わったから対応宜しくな」
「嘘だろ…騎士職だからって負担多すぎやしないか!」
そう言われたらチクチクしてるだけの俺は何も言えない。せめてメイガスが立ち直ししやすくなるようなタイミングで俺もオーガロードに攻撃してるから許して欲しい。
それに敵の直撃を食らったら俺もヒナもアヤも全員ワンパンされると思うので、敵の攻撃パターンが分からないうちは充分に安全を取りながら回避してるからな。今のカスダメでもヒナのHPがゴリっと削れるからヒヤヒヤする。
格闘の攻撃パターンというのは棍棒とかとは違って少し軌道などが読みづらくメイガスの回復ポーションの消費が激しい。
ヒナも直撃を喰らうと死ぬのでアヤの沼魔法や俺とアヤの攻撃を敵が避けたタイミングで攻撃が当たらないような位置に周りながら大剣で攻撃しているので、さっきよりも敵のHPの減りが遅くなってしまう。
だが思ったより外野のモンスターがいないというのは大きく、メイガスも苦戦しつつも攻撃に少しずつ慣れてきて次第に俺たちの立ち回りも安定してきた。
「アル!そろそろ回復アイテムが切れそうだぞ!てかあと1個!」
まじか。ていうかもう少しだけ早く言って欲しかった。
「多分このまま押し切れるから根性で頼む!アヤってハイヒールの魔法覚えてるよな」
「わかったわ。詠唱少しだけ長いけどそれをメイガスにかければいいのよね?」
「頼んだ」
順調に削れてオーガロードのHPは残り1割を切ったが、ボスのゲージなのでその1割も大きく思える。回復アイテムが切れかけてるので決着を急ぎたいが…
メイガスが敵の攻撃を受け流しつつ最後のポーションを使い、敵の背後に回ったヒナが双剣士のスキルを使用し、2回に分けられた攻撃で敵のHPを削る。ここで幸運なことにヒナの2段攻撃が両方ともクリティカルを発動し、敵のHPが残り1.2%付近まで削られた。
「よし!今のでめっちゃ削れたぞ」
「あと少しだからみんなで一気に…」
「ちょっと、なんか様子が…」
本来ならばクリティカルで大きくHPを削ることは喜ばしいことだが、俺はひとつ失念していたことがあった。この時ヒナのクリティカルによってちょうどぴったり敵のHPトリガーを踏んでしまったらしい。いや覚えいたら直ぐに追撃などの指示や行動をできたのかもしれないが、忘れていたのだ。
それは1部のボスのみに、特に殆どのユニークモンスターやほんの1部のレアエネミーに分類するボスが最後の足掻きと言わんばかりぶっ壊れ攻撃をしてくることがある。
最後の最後に壊滅の危険がある攻撃をしてくる仕様。そんなことをしたらでクソ仕様と言われるのが普通かと思われるが、基本はそのまま削り切れるし、本来ユニークモンスターは殆ど遭遇するこが出来ない、というよりかは痕跡や情報から自分で見つけに行くボスなので、その攻撃がある事が前提に動くので、トリガーを踏まないようにしたり、対策できるようにアイテムを整えたりスキルを温存するのが常識。というか割と生態や情報から事前にどんな攻撃をするかまで予想ができるので対策しやすい部類だ。
レアエネミーなんて周回すれば誰でも遭遇できるのでどいつがどんな攻撃をしてくるかまで情報が出てるし、周回してる人は対策なんて当たり前にしてるので、本来は初見だけが苦しむ仕様なのだ。それはそれでクソだが…
さて問題はオーガロードがそれに該当する1部のレアモンスターで、俺たちがこいつにたまたま出会わない前提で情報を知らないことと、今から対策できるほど強くないことと、俺が完全に忘れていたことだ。
だってしょうがないじゃん。初挑戦で出会うだなんて予測できないし、俺こいつと戦うの何年ぶりだよ。忘れてない方が可笑しいよな…
ウルガァァァァァァァ
そんな俺の言い訳を待ってくれず碧玲の10迷宮10階層にはオーガロードの咆哮が響き渡った。
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