19話 推しギャング
さて疑問に思ってる人もいるだろう。何故ギャングの一員じゃない俺がこの場所にいるのかと。
それは俺がこのギャングの医者をしているからだ。専属医というか個人医的な立場として協力している。
ギャングには襲撃の際に蘇生等を行う医者を雇うことが多い。蘇生のシステムは今は割愛するが、医者の存在により成功率が結構上がるのである。
俺は基本的に生産職を育成しているが、薬の扱いや薬関連のジョブ取得には医者のジョブが重要になることがほとんだ。それにそれ以外のことでも結構便利なので医者関連はあらかたコンプリートしているのだ。
その医者のジョブの人気の仕事のひとつがこのギャングの仕事だ。医者は基本的に取得が難しいので競合が少なく稼ぎやすく人気の理由の一つだが、何よりも戦闘に関係ないスキルでもスリルを味わえるので人気になっている。
だが勘違いしないで欲しい。俺はこのギャングにほぼ専属みたいな形で医者をしているが、ものすごく儲からないのだ。むしろ大赤字も大赤字だ。
普通ギャング専属医はリスクの関係から、基本的に前払いで料金を受け取るので赤字なんて普通有り得ないが、このギャングは弱小チームなので前払いする金なんて無い。
いつも後払いだし、どうせ失敗するのでだいたいまともに払えない。比較的少数精鋭とはいえ一人一人は強いのに何故こんなにも失敗するのだろうか…
それでも俺がこのギャングを専属としているのかと言うと、まぁ面白いからと言う理由もあるのだが、このギャングを応援しているからだ。なんだろう推しに貢ぐというか?推しギャングとでも言うのだろうか。
「アルさん!久しぶりです。今回は成功間違いなしですよ!しかも結構美味い仕事!」
「リア様元気にしてました?今回こそ成功させましょうよ」
「もちろんですよ。私の脳内ではもう使い道も決まってるぞ!今回はアルさんにもちゃんと仕事料を払えるはずですからね」
今話してるのは、ゲーム名アルティメットミリアこと、このギャングのリーダーのリア様だ。
首まで伸びてる白髪と小学生位の身長とおでこに生えている紫色に発行している角が特徴。ちなみにチビと言ったらブチギレる。俺は言ったことないが。
このギャングもこのリア様が1から作ったもので、みんなリア様に直接誘われて結成されたギャングだ。ちなみに犯罪成功率は驚異の0%である。
メンバーはみんな強いのにほんとに謎だ。やっぱり人数が少ないのか?実は俺はリスクを求めてないので、実際に襲撃先に行ったことは無く失敗の理由が分かってない。
でもこれよりも弱いはずのギャングでも成功率は0まではいかないのに。
「リアさまー。そんなこと言ってこの前も失敗してたじゃねぇか」
「しょうがないじゃん。プランは完璧だったはずなのに敵にまさか〈剣神〉がいるなんてぇ…」
「あの時はみんなボッコボコに斬られてましたもんねー」
「斬られたの効果音がボッコボコはおかしくないか?」
「そんなこと言ってるからモテないんだよ?」
このギャングのメンバーを改めて紹介しよう。
まずリーダーのリア様。種族は鬼族でちっちゃくて結構強い。
次にスキンヘッドのエルドさん。脳筋の斧使い。
3人目はリニア。まるでGのようにすばしっこくて攻撃が当たらない双剣士。多分最年少。
4人目は緑髪に眼鏡で高身長のアアル君。魔法使いで作戦担当でイケメンなのにモテない。
5人目はこのギャングには似つかわしくない金髪巨乳でおっとりした雰囲気のお姉さんであるセルナさん。でも戦闘はメイスで敵の脳天をかち割るので怖い。
6人目は糸目で無口な二郎さん。刀使いで気づいたら首チョンパされるらしい。
7人目は身体中包帯ぐるぐるのリムさんだ。戦闘中は包帯が触手のように伸びる。
以上がメンバーだが基本的に全員強い。でももしかしたらアアル君しか後衛がいないからバランスが悪いのかもしれない。
とりあえずみんなに混じって食事をしてたらリア様が部屋にある専用の台の上に立つ。
あれは身長が低くて見上げることしか出来ないから用意されたリア様専用の台だ。
「ゴホン。諸君、今日集まって貰ったのは次の襲撃予定がたったからだ」
「リーダー。もしかして最近噂になっているアレがあるからですか?」
「アアル君が言っているのはカジノ襲撃のことー?」
「その通り。今アアルとエルナが言ってくれた様に、近頃最凶ギャングの隻蘭会がカジノを襲撃するってことが確定した情報を入手したぞ」
「さすがリーダーだぜ」
「ふふん。そんな褒めるんじゃない」
あの隻蘭会が動くのか。人数も多く下部組織も沢山あり人気のギャング集団である隻蘭会だが、最近は下部組織の行き過ぎた行動もよく聞く。NPCへの暴行もあるし初心者プレイヤーへの恫喝や初心者狩りの噂もある。
それにしてもカジノ襲撃か。カジノは国が運営してる巨大賭博場だがもちろん警備は激ヤバだし、カジノ襲撃に隻蘭会が動くとなれば動員される警察も凄いことになるはずだ。
その規模の襲撃が起こるのは半年ぶりくらいになるか?
「私の脳内スーパーコンピューターによる計算によれば、カジノに回される警備はすごいことになるはず。
そこで!私達はそこを狙って国際研究所を狙うことにする」
「「「な、なんだってー!?」」」
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