18話 もはや世紀末



 エルーナの店長に言われた通り14番の個室に向かう。


 個室の中は人が6人位が座れそうな広さのテーブルがある。床の下に空間があり足をそこに入れるタイプの机だ。机の真ん中には金網が置いてあり肉が焼けるようになっている。

 部屋自体は6人が座っても余裕があるくらいには広く壁には本棚と絵が飾ってある。


 俺は本棚に近づいて端っこの方にある絵本を手に取る。1~15話程の物語が書いてあるが、そのどの話もよく分からない内容が書いてある。


 さて、もう気づいてる方もいるかもしれないが、この15話の物語はそれぞれの番号の部屋の隠し扉の場所が記されている。


 隠し扉、なんとも素敵な言葉だろうか。男性なら1度は憧れたことがあるだろう。

 そんな皆さん憧れの隠し扉を実際に体験できる、そうエグスタならね。


 14番だと真ん中の肉を焼く金網を取り外して、その中にある見えないようになっているボタンを決められた順番で押すと地下への階段が出てくるって訳だ。

 地下への階段はそこまで長い訳ではなく、ある程度降りると扉が見えてくる。


 ここで扉を開けようとしても鍵がかかって入れないが、ここで三三七拍子で扉をノックをすると、中から誰かの足音が近づいて扉を開けてくれる。ここに来てアナログだ。それに三三七拍子はダサいと思います。


「やっと来てくれたか。先に始めちまってんぞ」


「アルさーん。来てくれましたか、遅いですよ」


 扉を開けてくれた2人はエルドさんとリニア。

 エルドさんはスキンヘッドでムキムキのアバターをしており、使用武器もどでかい斧を振り回す脳筋プレイヤーだ。

 リニアは黒髪黒目のアバターで腰にいつでも2本の剣を刺している。戦闘スタイルは避けタンクというもので、リニア持ち前の瞬発力と速さ特化のビルドで戦う。


 2人に並んで扉の奥に進むと、少し広い空間に5人の男女が机の上に並んでいる大量のご飯を食べていた。


 ここは王国を専門として活動しているとある集団のアジト。酒場エルーナを集合場所として作戦を立て、王国にて犯罪を犯すギャング集団。


 そう、その名も


 ギャング「スーパーアルティメットハンターズ」

 の皆さんだ。


 あ、勘違いしないで欲しいのだが、俺はこのダサい名前のギャングのメンバーでは無いので悪しからず。


 ギャングというのはエグスタにおいて最もポピュラーな犯罪職。むしろこれのためにエグスタを始める人もいる。

 活動内容は簡単。金の置いてある場所の情報を集めて犯罪予告をして襲撃する。


 犯罪予告は最短で犯罪の10分前に行われる行為だが、基本的には全てのギャングが行う行為だ。ではなぜ犯罪予告をするかというといくつかの理由がある。


 1つはNPCが巻き込まれないようにするため。

 犯罪予告というのは襲撃側からするとデメリットのように思うかもしれないが、犯罪職にももちろんいくつかのスキルがあり、その中でも予告をすることでトリガーとなるスキルが存在する。

 ステータスが上がるスキルなども存在するがそれはおまけであり、メインとなる理由は予告したエリアの広さに応じた時間分だけ犯行をしなかった場合、そのエリア内にいるNPCに被害を与えても特殊犯罪とはならないというものだ。監獄に送られるリスクを抱えてまで犯罪を犯したい人は少ないからな。


 2つは予告をすれば捕まった時に減罪されるからだ。まぁおまけみたいなもので1つ目の理由の方が大分部を占めるが。


 予告を行わないのは怪盗とかがほとんどでギャングはだいたいしてると思う。どちらにしろ金を盗まれる国はたまったものでは無いが、国民からは面白がられてるし、被害を修復する会社が儲かったりする。

 もちろん襲撃は容易なものではなく、襲撃を行う施設が大きくなればなるほど大体が失敗に終わる。ただ成功すれば大きく金を得ることが出来る。


 大体月に3回位はどっかで襲撃が起きている。多い月はその倍くらい。警察としても割と楽しんでる人が多いけどな。

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