17話 犯罪
エグスタにはたくさんの職業が存在しそれを自由に選べるというのが人気のひとつだ。種類にもよるが、もちろんしっかりとした収入を得たりするには職のレベルを上げて上位の職を取得することが必要だが、例え医者でも初期位のものなら条件もなく取得できる。
そしてエグスタの職業は何度も言うがほんとに種類が多い。現実ではそれ職じゃないだろっていうネタジョブものまで存在する。例えば[小玉飛ば士]というジョブなんかだと、ビー玉とかを有り得ないコントロールと速度で飛ばして敵を倒す事が出来るし、[連打者]なんかだとボタンとかの連打が早くなる。
ちなみにネタジョブ専門の友人曰く、[小玉飛ば士]は[玉芸士]まで上げると牽制とか雑魚敵とかに強く、彼的には結構取得推奨らしい。
さてそんな職業だが、こんなに種類が多いのだ。もちろん犯罪に関するジョブというのも存在する。というかエグスタでは結構人気だ。
エグスタの犯罪は大きくわけて2つある。それが通常犯罪と特殊犯罪だ。
通常犯罪は主に万引きとか、脅迫とかの犯罪だ。一般の定義としてゲーム内のシステムで犯罪とはなっていなく、その国の法律で決められているだけの犯罪と言われている。
特殊犯罪は明確なラインが決められており、例えばNPCの殺害を行ったプレイヤーが死んだ場合監獄という特殊エリアにリスポーンするようになっている。ちなみに現在監獄からの脱獄を成し遂げたプレイヤーは0人だ。
通常犯罪を犯したプレイヤーは国に罰金を払うか、牢獄に入れられることになるが、ここで問題がひとつ。
プレイヤーはNPCと違ってリスポーンするのだ。それに自殺コマンドも存在するので犯罪者が死なないようにすることも不可能になる。つまりいくらプレイヤーを牢獄に入れようともNPCとは違い容易に脱獄ができてしまう。
ただプレイヤーとしては自殺はできるだけしたくない選択肢になってくる。というのもこのゲームにはデスペナルティが存在する。普通なら死亡時所持アイテムの1部ロスト、持ち歩いていたマーニの1部減少、一定期間のステータスダウンを課せられる。
ちなみにこのゲームでもPKというものは存在するが、デスペナルティ時にロストしたアイテムは、特定のジョブを取得していないと手に入らないし、そのジョブにはデメリットもあるのでPKはあまり流行っていない。
話を戻すが自殺時のデスペナルティは更に重くなっており、アイテムロストとステータスダウンはそのままだがそこに自身が所持している総マーニの1割が無くなり、熟練度に加えジョブレベルが1部ダウン、そして半日のゲームログイン禁止がある。
マーニに関しては上級プレイヤー程痛く、熟練度、ジョブレベルはカンスト関係なくランダムに下がり、そしてゲーム内時間で120時間ものログイン禁止は出来ればしたくない。
そこで国が行ったのが、牢獄を回避する代わりに犯罪度に応じた罰金か労働をさせることである。これなら国側も無駄な逮捕になることが少なくなるし、金か労働力が手に入る。犯罪者側も自殺という重いペナルティよりそちらの方が丁度いい罰になる。
ここでもし犯罪者が罰金も労働もせずに逃げた場合は事前に交わされる契約によりその国の全てのリスポーン地点が使えなくなる。最初からそれが罰でいいと思う人もいるかもしれないが、プレイヤーはその国にとって重大な戦力になってきているので国も簡単に手放したくは無いのだ。
かくしてエグスタにおいてその絶妙な罰の重さから、プレイヤー間で犯罪職というものが流行ってしまった。
もちろん流行ってる犯罪というものは脅迫とかそういうものではなく、カジノの襲撃とか豪華客船襲撃とかが多い。昔とは違い犯罪の仕方も進化してきているし、警察の方も強いプレイヤーが増えているのでこの道はなかなか難しいものだが。
そして俺が今向かっている場所も犯罪を行う者が集まる場所のひとつ。
そこは酒場エルーナにおいて、ある合言葉を唱え、案内された部屋の隠し扉を開き、地下に続く階段を降りた先にある扉で決められた回数とタイミングでノックすることで辿り着ける。
とあるギャングが集まる秘密の集会場である。
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