1話 エグスタ


 Existent another


 通称エグスタ


 俺は少なくともエグスタ派だ。世間じゃエグスタ以外にもスタンザーとか色々呼ばれてるけどなんかそれは道具みたいじゃん?


 世間では神ゲーと呼ばれているがそれもそのはず、膨大な量の職業に称号や、ユニーククエストがあり、超高性能なNPCのAI、決まったストーリーなどは存在せず自分達の好きなように過ごせる。もちろん内部時間加速も搭載されている。

 エグスタの構成要素は個人レベル、ステータス、職業、スキル、称号の5つと言われている。

 ステータスで現実ではできない動きをして、職業とスキルでは現実ではできない仕事や経験ができる。

 言わば第2の人生を送れると言っても過言ではないというのが世間での評判だ。


 VRゲーム自体が流行りだしたのは2030年のこと。当時はリアルとのタイムラグが見られたり不具合が多発したりとまともにプレイできたものではなかったそうだ。だが2037年頃には内部時間加速機能が開発され仕事などでもVRが多く普及された。

 一時期時間加速は実年齢と精神年齢の乖離がなんちゃらとか言われ、規制されたが今は科学の進歩で何とかなったらしい。

 専用の法律もつくられてるVRは今や教科書でも出るし、専用授業も学校で取り入れられている。


 このゲームが発売されて6年の月日が経つがプレイヤー総人口は億は超えている。そして聞いて驚くな、その人数がひとつのサーバーに集まっている。いや人混みで溢れてやばいと言われるかもしれないがこのゲーム土地も広いんですよ。もちろん翻訳機能搭載なので全世界でプレイされてる。


 だが人気が出るのには時間がかかった。発売された時期が人気ゲームのラッシュの時期だったので世間に認知されていくまでに1年近くかかったし、運営が売れてないと思ったのか、カセットの総数は少なく追加製造もあまりされていなかった。そもそもダウンロード版が無いしな。

 そこに超人気配信者がプレイしたことで一気に大ブームとなったせいでもちろん製造が追いつかずまともにプレイできるようになったのは発売から2年後という大惨事。それでもダウンロード版が発売されないのは何か運営の強い意志を感じる。

 だが発売から6年たった今でも人気は衰えず、なんならどんどんユーザーは増えてる。


 エグスタの発売日が10歳だったので俺ももうピチピチの高校生だ。


 そんな俺だが、現在俺はエグスタで歴史的瞬間を迎えようとしている。


 目の前には空中に浮かぶスライム。それが引き付けられるように俺の前にくる。そして俺は慎重にそのスライムを掴み、優しくマッサージをするように揉みながら絞っていく。ちなみにここでのポイントはスライムにストレスを与えないように、スライムのツボを押してかつスライムを絞っていくというテクニックがいる。

 スライムのツボってなんだよ、と思う方もいるかもしれないがスライムにもツボがあるんだ。


 するとスライムから溢れ出す半透明の紫色の液体。さながらぶどうジュースのような液体を専用の保存容器に入れていく。

 絞られたスライムは俺に触手を伸ばして抱きついてそのままスライム菜園のどこかへ飛んでいく。


《職業「スライム養殖士」のレベルが99になりました》


《「飲料生成」の熟練度が1000になりました》


《称号「スライム飲料を極めし者」を獲得しました》


《称号「スライムと共に」を獲得しました》


《称号「創造者」を獲得しました》


《称号「極」を獲得しました》


《称号「先極者」を獲得しました》


「おお!一気に来たな!」


 今回の目標を達成した俺はとりあえず一旦マイホームに転移して椅子に座りながら収穫を見る。


 まずはスライム液から。




 至高のスライム飲料 レア度15

 味 グレープ

 効果 与ダメージ上昇2倍(1回)被ダメージカット(1回)速度上昇2倍(1分)ランダムステータス上昇2倍(1分)蘇生効果


 最上級スライムから取れるジュース。伝説では美味しさのあまり死者をも蘇るような味がするという。

 グレープの味付けがされている。





「おお。蘇生効果付くのかこれ。当たりだな」


 まさか蘇生可能アイテムのひとつになるとは。味優先系なので効果自体はあまり強くは無いが結構当たりの部類だな。


 スライム飲料って普通に売られてるけど、いざやってみると結構難しかったな。

 専用スライム自体売ってるけど、やっぱ上を目指すとなると天然スライムを自分で調整して飲料用に調整していき、尚且つスライム自体の好感度も味に関わるので調整して行かなければならないし。

 スライムって表情がわかんないから特に苦労した。でもスライム飲料に蘇生効果付いたのはまじででかいかも。作成の素材が結構軽いからなぁ。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る