第150話 ダンジョンボスから放たれる絶望の息吹

カイト「一気に殲滅するにゃ」


グリエル「今度は何をする気だ…?」


オクロン「カイトやってくれるのか? お前の範囲攻撃なら確かに一気に数を減らせるが、あまり無理しないようにな…」


カイト「何も無理はないにゃ」


カイトはそう言うと城門の一番高い場所に飛び乗り、手を十字に交差する。そして、その交差した手から続々と迫ってくるスケルトン軍団に向けてターンアンデッドの光線を照射し始めた。


カイト「ウルトラターンアンデッド光線にゃ~」


カイトが手を組んだのは実は大した意味はない。なんとなく、である。日本で子供の頃見た地球を守る宇宙巨人が使った光線を真似てみたくなっただけである。


右から左に薙ぐように光線を走らせると、その射線上に居たスケルトンが蒸発するように消えていく。


だが、すぐに後からスケルトンが溢れてくる。


また薙ぎ払う。


それを何度か繰り返した時、アンデッド軍団に今までと違う動きが見えた。


グリエル「やったか?!」


カイト「フラグ立てるにゃ!」


見ると、まだスケルトンの軍団は全滅した訳では無いが、進行を止め、後ろを気にしているような素振りをしている。


すると、スケルトン軍団の中央が割れるように開かれた。


カイト「何か来るにゃ」


見ていると、後方から巨大なスケルトンがやってくるのが見えた。


カイト「あれは……スケルトン・キングだにゃ?」


【鑑定】結果にそう書いてあるからな。


グリエル「ああ、俺も見るのは初めてだが、そうだろうな」


オクロン「頭に王冠被ってるしな」


スケルトン兵は人間と同程度の身長だが、新たに現れたスケルトンはその数倍はある。骸骨の頭部には王冠が乗っており、肩にはマントを羽織っている。


オクロン「最下層のボスのおでましか?」


グリエル「ああ、まずいぞ……とうとう来やがった」


カイト「何が来ても一緒にゃ」


カイトが再び手を交差して光線を放つ。その光の線が巨大スケルトンにまっすぐ向かっていくが、スケルトンはマントを体の前に回してその光を防いでしまう。光はマントを貫通できないようだ。


カイト「おのれやるにゃ…」


グリエル「聖属性に耐性のある防備を持っているというわけか…」


オクロン「だが止まったな? 光線を浴びて警戒したか?」


グリエル「いや……おいおいおい、勘弁してくれよ……もっとやべぇ奴が出てきたぞ……」


スケルトンキングが他のスケルトン兵と同様に脇に寄って道を譲った。そしてその後ろから、さらに巨大な……異様な姿の怪物が現れた。


グリエル「あれは……ヘカトンスケルトン……だな」


オクロン「ああ、初めて見たが、あの姿は間違いなかろうよ……」


新たに現れた怪物は、スケルトン種であるのはその骸骨な外見から一目瞭然だが、身長はキングのさらに倍あり、そして……腕が千手観音像のように背後から生えていた。その数は百本以上はあろうか。


スケルトンキングが剣を抜き、街の方へと向ける。すると百本腕の巨大スケルトンが空に向かって雄叫びをあげる。


そのなんとも不快な大音響の雄叫び。これ自体に精神的ダメージを与える効果がありそうだ。その響きが城壁の上に居る兵士と冒険者をも震え上がらせてしまっている。


カイト「その程度の【威圧】は俺には効かんけどにゃ」


城壁の上に居た冒険者や兵士達は全員腰を抜かして尻もちをついてしまっていたが、グリエルとオクロンはなんとか立っている、さすがである。…膝が震えていたが見なかったことにしよう。


すると、上を向いていた百本腕の顔が街に向く。そしてその口がパカッと開いた。


グリエル「まさか……まずいぞ!」


次の瞬間、百本腕のスケルトンの口から大量の瘴気が吐き出され街へ向かってきた。瘴気のブレスである。グリエルやオクロンなど、それ・・がブレスであると理解ってしまった者は絶望の表情を浮かべた。それ・・の威力が竜種のそれと同じであるなら、城壁は持たないだろう。ドラゴンの上級種のブレスは一撃で街を滅ぼすと言われているのだから……いかにカイトの張った防御結界が強力であってもさすがに耐えられないのではないかと思ったのだ。


だが、カイトの表情には焦りはなかった。むしろ嬉しそうである。


「頂くにゃ!」


オクロン「…………


…………?」


死を覚悟してオクロンは目を閉じて顔を伏せていたが、何も起きないのでゆっくりと目を開け顔をあげる。すると、ぽかんと口を開けたグリエルの顔が見えた。


グリエルもまた、ブレスが迫って来た瞬間に死を覚悟したが、何も分からず死ぬのは嫌だと、最後の瞬間まで歯を食いしばって目を開けようとしていたのだ。おかげで、ブレスが城壁の直前で消えてしまった瞬間を見ていたのだ。


オクロン「おい…どうなった?」


グリエル「……」


オクロン「おい、グリエル?」


グリエル「……はっ! カイト! 何をした?」


「ブレスを【収納】しただけにゃよ?」


グリエル「収納魔法が使えるのか……というか、ブレスを収納なんてできるもんなのか?」


カイト「収納できるだけの十分な空間を用意できれば可能にゃよ。容量の小さいマジックバッグとかでは裂けてしまうだろうけどにゃ」


オクロン「収納……しただと?!」


どうやらブレスが消えてしまったのはスケルトンキング達にも驚きだったようで、スケルトンキング、百本腕ヘカトンスケルトンも口を開けたままフリーズしていた。


カイト「レアものゲットにゃ。瘴気のブレスなんて普通の竜種からはゲットできないからにゃ」


グリエル「いやいやいやいやいやおかしいでしょう、カイト君? カイト様? カイト先生?」


オクロン「あ、グリエルがちょっと壊れ始めた…」


グリエル「ブレスって、収納できルモンナンデスカ?」


カイト「できるにゃよ? 俺は古龍ドラゴンのブレスも収納してあるにゃ。色々な魔法やブレスを収納してコレクションしてるにゃ。見せられないからコレクションと言っていいのか分からんけどにゃ。放出するとそれで終わってしまうからにゃ…そうにゃ、瘴気のブレスを貰ったから、お返しにちょっと見せてやるにゃ。古龍のヤツ・・にゃらまだ何個かストックはあるから出してもいいにゃ」


グリエル「なんかチョイチョイ不穏なワードが聞こえた気がシマシタケド、大丈夫デスカー?」



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