第149話 画期的発見?

カイト「俺がやってみるにゃ」


グリエル「うむ、頼む」


カイト「にゃ!」


カイトは城壁の上から顔を出し、【ターンアンデッド】を城門を斬りつけているスケルトンに向けて放つ。光の球が飛び、一体のスケルトンに直撃。スケルトンは瞬時に蒸発する。よく見ると、空気のように薄くなったスケルトンが昇天していくのが見える。


『おお!』


それを見ていた冒険者達が歓声をあげる。兵士達は感動が薄いようだが、神官達の【ターンアンデッド】を見ていたからである。神官は二~三体は昇天させたがそこまでだったのだ。ただ、カイトの放ったターンアンデッドは神官のそれより高威力であったためか目を見開いて少しは驚いているようではあったが。


さらに立て続けにターンアンデッドをぶつけていくカイト。次々スケルトンが消えていく。それを見て少しスケルトン達が動揺したように見える。すると対岸に居たスケルトン軍団から弓を持った者達が前に出てきて、カイトにむかって矢を射始めた。


カイト「スケルトンにもアーチャーがいるんにゃね」


飛んでくる矢は正確にカイトに向かって飛んできたが、全てカイトが張った防御用魔法障壁に止められ城壁の外に落ちていく。


攻撃されてカイトも黙ってはいない。矢を射てくるスケルトンに向かって次々とターンアンデッド弾を投げつけ殲滅していく。


オクロン「…凄いな。街の神官は二~三体倒しただけで魔力切れになってしまっていたのに…」


グリエル「まぁ奴は街の結界を一人で張り直したくらいだからな…」


カイト「キリが無いから範囲攻撃に切り替えるにゃ」


グリエル「範囲攻撃?」


カイトはグリエルの問いかけには応えず、実際にやってみせる。【ターンアンデッド】を単発ではなく広範囲に広げて放ったのである。


※その分大量の魔力を必要とするが、カイトはもともと膨大な魔力量を持っている事に加え、最近は周囲の魔力を積極的に取り込んで魔力を補充する事、さらには周囲の魔力を直接魔法に変換する事も憶えつつあったので、それほど消耗する事はなかった。


空中からまばゆい光が降り注ぎ、その光を浴びたスケルトン達が大量に蒸発昇天していく。


グリエル「ちょ…ターンアンデッドの範囲攻撃なんて聞いた事ないぞ……」


オクロン「…凄いとしか言いようがない…何者なんだ?」


カイトは何度か範囲攻撃を繰り返し、城の近くに集まっていたスケルトンを消滅させた。しかし前列が消えても後から後から続々とスケルトン兵士が押し寄せてくる。


カイト「やっぱキリないにゃぁ」


グリエル「さすがのカイトも魔力切れか?」


カイト「まだまだ行けるけどにゃ…その前に、実験してみたらどうにゃ?」


グリエル「?」


カイト「アンデッドには通常の光球でも効くって言ったにゃろ? それを試してみるにゃ」


グリエル「え? …ああ、おお。そうだな」


グリエルは冒険者達に声を掛け、光球が使える者を集めて並ばせ、眼下に再び押し寄せてきたスケルトンに投げつけさせてみる。攻撃魔法ではなく、生活魔法なので、使える者はかなり多い。


照明代わりにしか使えない光の球を浮かべるだけの魔法なのだが、思いの外効果があった。普通の魔物に初級の火球ファイアーボールをぶつけた程度には効果を上げている。


冒険者達は面白がって光球を投げ続けている。生活魔法なのでそれほど多くの魔力を消費しないので、連発が可能なのだ。


グリエル「これは…目から鱗だな」


オクロン「照明の魔法をアンデッドにぶつけてみようって発想は、思いつかないもんなぁ…」


グリエル「カイトが言っていた、光属性の魔法は聖属性の魔法と同系列という説は正しいという事か…」


オクロン「なんとなく、聖属性の魔法は特別なものだって思い込んでいたからな…。だが、聖属性は光属性の別名って説が、そう言えばあったよな」


カイト「【光球ライト】は【ターンアンデッド】とは違うけどにゃ」


グリエル「そうなのか?」


カイト「よく見るにゃ。スケルトンは光球で体を破壊はされているけれど、昇天はしていないにゃ。普通に強力な攻撃魔法で破壊したのと同じ状態にゃ。アンデッドの魂を浄化・昇天させる効果までは、ただの【光球ライト】にはないみたいにゃ」


調子に乗って光球を投げ続けていた冒険者達だったが、しかし相手が多すぎる。生活魔法で魔力消費量が少ないとはいえ、何十何百と連続して使えばさすがに魔力もなくなってくる。


グリエル「射程距離も短いな…」


オクロン「遠くに飛ばすのに慣れていないんだろうな…」


グリエル「みんな、光球は照明として浮かべる事しかした事ないだろうからな」


カイト「そうにゃね。練習すればこんな事もできるけどにゃ」


カイトは大量の魔力を込めた眩く輝く巨大な光球を作り出し、それを高速で射出して見せた。射出された光の球は光の線となり、アンデッド軍団の中を突き進み、射線上に居たスケルトンをバラバラに粉砕していく。


カイト「まぁ、ただの光だからにゃ。アンデッド以外には効果ないんだけどにゃ」


そう言いながらカイトは光球をグリエルに向かって放ったためグリエルはビクリとした。先ほどからスケルトンを破壊している光球なのだから驚くのは当然だが、カイトの言う通り、光球はただの光の球なので、人間が触れても何も影響はないようだ。


グリエル「お、どかすなよ…」


グリエル(しかしこれは……、後で色々と、本部に報告を上げないといけないな…)


    ・

    ・

    ・


グリエル「しかし、本当にキリがないな。一体どれくらい居るんだ?」


オクロン「まぁ照明の魔法が有効だという画期的な情報が分かったのだ。後はコツコツ殲滅を続けるしかないだろうな」


グリエル「敵が尽きるまで、か…?」


カイト「もう面倒にゃ。一気に殲滅するにゃ!」


グリエル「…今度は何をする気だ…?」



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