第137話 強制招集は拒否できません
「ギルマスは居るにゃ?」
受付嬢「ええっとカイトさん、でしたよね? ごめんなさい、ちょっと今バタバタしていて…」
確かに、いつもは田舎のギルドらしくのんびりした空気感がある冒険者ギルドが、今日は妙に緊張感に満ちていた。
「何かあったにゃ?」
受付嬢「他の街でスタンピードが発生して、応援要請が来ているの」
「そうか…大変にゃね。じゃぁいいや、帝都に帰るとギルマスに伝えといてくれにゃ」
受付嬢「あ、お待ち下さい! それはいけません!」
「?」
受付嬢「つい先程、冒険者全員に強制招集が発令されましたので」
「強制招集?」
なんかそんな事書いてあったなと思い、映像として記憶してあるノアのガイドブックをパラパラと脳内確認してみる。なるほど、スタンピードなど緊急事態が起きた場合、冒険者はその対応に強制的に参加させられる制度があるらしい。
“指名依頼”ならばCランク以下は拒否してもよいが、逆に“強制招集”となるとAランク以下は拒否はできない、とある。(もし拒否した場合は冒険者資格の剥奪となるらしい。)
別に冒険者の身分にこだわりはないが、今は外国で商取引をするためのパスを手に入れるミッションの最中なので問題があるな。まぁ最悪、冒険者資格などなくてもなんとかなるだろうけど……まぁせっかくEランクになったのだから、もう少し頑張ってみるか。
「強制招集って、そのスタンピードの救援にゃ?」
『そうだ、リブラムの冒険者ギルドから応援要請が来ている』
「ギルマス…」
現れたのはこの街、ウィレムグラードの冒険者ギルドのマスター、ボーザである。俺は辺境伯に紹介されてクラゲカズラの駆除も手伝ったので既に顔見知りである。
ボーザ「この街を空にするわけにもいかんが、できる限りの応援は送らねばならん。困った時はお互い様だからな。それにお前は辺境伯の紹介だ、大いに期待しているぞ?」
「俺はこの街の冒険者じゃないんだけどにゃ?」
ボーザ「拠点がどこであろうと関係ない。冒険者には特に所属などの区分はないからな。帝都で活動している冒険者だろうと、滞在している街で強制招集を受けたなら従う義務がある。そもそもお前はこれから帝都に帰るんだろう? リブラムは通り道だ、どっちにしても避けられんさ。それに……活躍次第では、ギルドに多大な貢献をしたという事で、昇級にも有利になるぞ?」
『おいおい、ギルマスよぉ、こんな子猫に期待したって役には立たねぇだろうが』
ギルマスとのやりとりを聞いていた冒険者が口を挟んできた。
ボーザ「ハリラか。コイツは少なくともお前よりは強いと思うぞ? 辺境伯の騎士達を軽くあしらってみせたらしいからな」
「見た目でしか判断できないなら三流、いや、四流、いや五流かにゃ」
ハリラ「なんだとてめぇ! 喧嘩売るなら買うぞ!」
ボーザ「やめんか! 競うならスタンピードの防衛戦の成果で競えばよかろう。さっさとリブラムに向かえ! もう手の空いている冒険者は出発している。お前のパーティの仲間もとっくに街を出たぞ!」
ハリラ「何? 寝坊して置いていかれたか! こうしちゃいられねぇ!」
ハリラは慌ててギルドを出ていった。
ボーザ「お前は行かないのか…? 断れば冒険者資格剥奪だぞ? 剥奪されたら再登録も認められないぞ?」
「行くけどにゃ。どうせ俺のほうがさっきの奴より先に着くから心配するにゃ。ただその前に、もう少し詳しい情報を教えて欲しいにゃ。スタンピードって事はダンジョンがあるにゃ? どこにあるにゃ?」
ボーザ「…そんな事も知らずに帝都からこの街まで来たのか?」
「俺は最近この国に来たからにゃ。この国の地理とか事情には疎いにゃよ」
ボーザ「こっちに来い、地図を見せてやろう…」
ギルマスの説明によると、
リブラムとラムシーダは帝都と辺境ウィレムグラードのちょうど中間くらいにある大規模城郭都市である。
ダンジョンにはラムシーダからも行けるが、リブラムからのほうが大分近い。そのため、ダンジョン目当ての冒険者がリブラムには多数集まってきている。
ダンジョンは世界にとって危険なものである。なぜならこの世界を闊歩している魔物はダンジョンで生まれ外に出てきたモノなのだ。そのため、ダンジョンを発見した場合はなるべく早期に攻略する必要がある。
攻略した後はダンジョンを破壊消滅させるべきだが、あえてそうせず、管理ダンジョンとして資源として活用する方法もある。リブラムの町はダンジョンを残し管理する道を選択した。
だが、ダンジョンの管理はそう簡単ではないのである。ダンジョンから魔物が出ないように設定しても、内部で魔物が増え過ぎると魔物の放出=スタンピードが起きてしまうのだ。(これはダンジョンが自らの健康を保つための新陳代謝のようなものだろうと研究者の間では言われている。)
かつて、リブラムの領主はダンジョン攻略をリブラムの街の冒険者ギルドに依頼し、大規模レイドの末、攻略に成功した。そしてダンジョンの管理権は依頼者である領主が持つことになった。だが、この領主、ダンジョンを甘く見ていたのだ。管理をおざなりにし、内部で魔物が増えすぎてしまい、スタンピードにつながったのだ。
+ + + +
俺は
(ウィレムグラードへの往路で、街には入らなかったが街の外は通ったので、そこまでは簡単に転移できるのだ。)
すると、数人の冒険者が街の外で無数の魔物と戦っているのが見えた。
相手は
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