第131話 治療完了
すぐにルグレフとジョージが執事とともにやってきた。さらに…
…何故か後ろにはお抱え治癒士のバリカルと鑑定士のフエヤリも一緒だった。
ルグレフ「娘は?! リリアンヌは……?!」
「
フエヤリ「何も変わっているようには見えんが?」
「辞めると行って出ていったけど、思いとどまったにゃ?」
フエヤリ「退職の意志は変わらんが、お前の嘘の結果を確認してやるために戻ってきたのだ」
ルグレフ「治ったのか?」
「俺の鑑定では、もう悪いところはどこにもないにゃ」
フエヤリ「だから、何も変わっておらんではないか? お嬢様は目を覚まさないが?」
「後は、最後の仕上げにゃ」
最後に俺は【
すると、それまで死んだように動かなかった娘がゆっくりと目を開けた。
ルグレフ「リリアンヌ!」
ジョージ「リリ!」
リリアンヌ「……あれ? お父様、お兄様……?」
その時、リリアンヌの腹から音がした。
リリアンヌ「……お腹減った……」
ルグレフは歓喜し娘を抱きしめ、ジョージは執事に食事の用意を指示していた。
フエヤリ「……嘘だ! 何がトゲだ! きっと、我々の最後の治療が効いて、既に治っていたのだ! それをこの猫が自分の手柄のように見せかけて奪ったのだ!」
バリカル「おい? フエヤリ……?」
「嘘じゃないにゃ。そこの瓶に抜き取ったトゲは全部入ってるにゃ。蓋を開けなければ大丈夫にゃ…っておい!」
フエヤリ「…何も入ってはいないではないか?」
「お前には見えないにゃ。俺には見えてるにゃ」
フエヤリ「……ふん、嘘をつくな。自分にしか見えないと言えば誰にも確認しようがないからな。本当に悪賢い…。だが私は騙されんぞ? ルグレフ様、まだこの猫の戯言を信じるのですか?」
だが回復を喜び合う親娘兄妹は、俺とフエヤリのやり取りなど聞こえていないようであった。
その時、リリアンヌの腹が鳴る。お腹が減ったとリリアンヌが言い出す。
食事の用意は少し時間が掛かるようなので、俺は亜空間収納に入れてあった果物を一つ取り出して渡してやった。
“最初の泉”の周囲に生っていた果物である。
フエヤリ「お前、いまどこからそれを出した?」
「【収納魔法】にゃ」
フエヤリ「……どうせそれも嘘だろうが今はいい、それよりリリアンヌ様! そんな怪しげな物を確認もせず口にしてはいけません! まずは私が毒がないか鑑定をして…」
リリアンヌ「おいしいー!!」
だが空腹に耐えかねていたリリアンヌは皮も剥かずに果物に齧りついてしまったのだった。
あっという間に果物を食べ尽くし、種までしゃぶっているので、もう一つ出してやると嬉しそうに受け取って齧りついた。
フエヤリ「…くそ! もう結構! 付き合ってられません!」
そう言ってフエヤリは部屋を出ていった。
ふと見ると、フエヤリが開け放っていった扉からマキが心配そうに覗いていた。
俺は廊下に出てマキと話したが、なんと、俺が治療を始めてからもう三日も経っているそうだ。
その間、マキは帰る事もできず、辺境伯の城に泊めてもらっていたそうだ。
「じゃぁ、そろそろ帰るにゃ?」
マキ「カイトさん、疲れてないんですか?」
「まぁ少しは疲れたけど、大丈夫にゃ」
俺も果物を取り出して食べる。この果物には怪我や病気を治し体力を回復する効果があるので、森を移動している時も重宝した。今度また“最初の泉”に戻って収穫しておこう。
+ + + +
マキも母親が心配だろうし、すぐに帝都に戻ろうと思ったのだが、そうはさせてもらえなかった。
リリアンヌの病気が本当に治ったか、再発しないか数日間でいいから確認する必要があると執事と治癒士に止められてしまったのだ。(これまではだいたい、治療後3~4日で再発していたそうだ。)
「むう、それは……仕方にゃいか……」
マキも、母は入院しているので大丈夫だと言うので、しばらく辺境伯の屋敷に滞在する事にした…。
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