第126話 魔法は想像力にゃ!
「お前が辺境伯にゃ?」
男「いや、違うよ。僕はジョージ。…辺境伯ではない」
騎士「おい貴様! 辺境伯様の城に押し入って来たのか?! そんな事をしてただで済むと思っているのか!?」
ジョージ「あ~やめとけアロン」
ジョージ「お前では相手にならんさ」
アロン「あんな猫獣人…と子供一人? に負けるわけないでしょう!」
ジョージ「よく見てみろ。この屋敷を守る精鋭の兵士達・騎士達が倒れているぞ? それに、アレ、お前にできるか?」
アロン「アレとは…?」
ジョージ「あの扉だよ。
アロン「それは……できませんが……でも、こんな小柄な猫獣人があれをやったとも思えませんが?」
ジョージ「君……、アレをやったのは君達かい?」
「そうにゃ。でも安心するにゃ、直してやるにゃ」
俺は門扉に向けて治癒魔法を放つ。すると、バラバラだった扉が光包まれ、元通りに戻っていく。
アロン「…!?」
ジョージ「……えっと……今、何をやったんだい?」
「治癒魔法を掛けただけにゃ」
ジョージ「治癒……魔法…だって?! 扉にか?」
「そうにゃ」
アロン「馬鹿な! 生物でないものに治癒魔法など効くわけがないだろうが」
ジョージ「…でも実際、治ったね…」
「別におかしい事じゃないにゃ。扉だって生きてると思えば、治癒魔法も効くようになるにゃ」
アロン「何を訳の分からない事を……扉は生き物ではない。思い込んだだけで治癒魔法が効くわけがなかろうが」
「頭固いにゃ、そんなんじゃ上手く魔法は使えんにゃよ? 魔法はイメージにゃ。扉だって生きてると思い込めば喋りもするにゃ。」
俺は振り返って扉に向かって声をかけてみせた。
「おい、扉、何か喋ってみるにゃ。名前は?」
すると、低い声が帰ってきた。
扉『名前は…ない。扉、としか呼ばれた事はない』
「じゃぁ名前をつけてもらうといいにゃ」
アロン「馬鹿な! 扉が返事をしただと?! ありえん!!」
「信じるも信じないもお前次第にゃ。人間は自分が信じたいモノしか見ないからにゃ。信じれば今まで見えなかったモノも見えるようになるにゃ。どうにゃ、名前をつけてやったら?」
アロン「私が?!」
「まぁ扉のほうも相手を選ぶかもしれないにゃ、本人に聞いてみるにゃ」
扉「……ジョージ様、お願いします」
ジョージ「僕を知っているのかい?」
扉「もちろんです、いつも見ておりましたから」
ジョージ「そ、そりゃそうか、扉だもんな」
扉「……」
ジョージ「…えと、名前……ね。そうか、そうだな、じゃぁイギスというのはどうだ…?」
扉「イギス……私はイギス……辺境伯の城を守る門扉……」
「気に入ったみたいにゃな」
アロン「……頭がおかしくなりそうだ……というかジョージ様、扉に名前をつけるなんて…」
ジョージ「別に名前くらいあっても構わんだろ?」
アロン「名前はいいとしても、扉が喋るとか、どうして平然と受け入れているんですか!」
ジョージ「いつまで経ってもお前は頭が固いなぁ」
アロン「ジョージ様が柔軟過ぎるんです! それよりも! 扉はとりあえず置いておくとしても! 騎士達に危害を加えたのは許されないでしょう!」
「安心するにゃ。誰も殺してないにゃ。商売で来てるからにゃ。これが単に敵対してるだけだったら全員もう死んでるにゃよ。というか、もうちょっと鍛えたほうがいいにゃ。これじゃぁ城は守れんにゃろ」
アロン「きさま……辺境伯家の騎士を愚弄するか?!」
『何を騒いでおる?!』
そこに、もう一人、立派な服を来た男が現れた。さらにその男の後から数名の騎士と…なぜか先ほどの門番が現れた。
門番「閣下! アイツです! あの猫獣人とガキが襲撃犯です!」
閣下「我が城を襲う不敵な輩が居ると聞いて来たのに、子供と猫か……」
門番「みっ、見かけに騙されてはいけません! あれはただの獣人ではありません! でなければ! この私が! 簡単にやられるはずがないじゃないですかっ! この私が!」
閣下「
ジョージ「父上、ただの獣人ではありません。城を守る騎士達兵士達を簡単に制圧し、城の門扉を破壊して見せたのですから」
閣下「門扉…? なんともないが?」
ジョージ「彼が治してしまったのですよ、治癒魔法で…」
閣下「……ちょっと何を言ってるのか分からないが?」
ジョージ「はい…私も訳が分かりません。が、あの猫獣人が凄い魔法使いであると言う事は分かりました」
閣下「なるほど…。それで、その凄い魔法使いが、なぜ私の城を襲う? 誰かに頼まれたのか?」
「そうにゃ。この街に居るという辺境伯に頼まれたにゃ」
閣下「お前はいちいち面白い事を言うな。私はそんな事頼んだ覚えはないぞ?」
「お前が辺境伯にゃ?」
閣下「いかにも。私がこの街の領主、ルフレグ・ウィレムライツ辺境伯だ。して、お前は…?」
「俺はカイトにゃ。冒険者にゃ。なったばかりだけどにゃ」
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