第117話 護衛依頼、出発にゃ
「その依頼、俺が受けるにゃ」
マーゴット「え? だって依頼料銅貨五枚よ?」
「別に構わんにゃ。ランクアップ試験の条件の“護衛依頼”に金額の指定はないんにゃろ?」
ノア「そうだよ、条件達成のためにタダで受ける
マーゴット「依頼料じゃなくて条件クリアのためって事? なるほど…。まぁ安くても構わないと本人が納得しているならいいけど…」
ノア「そうだよー。だからどんな条件が悪くても、持ち込まれた依頼はちゃんと受けてもらわないといけないんだよー。ちゃんと依頼がアタシ達のほうに回ってきてれば、最初から猫ちゃんに紹介できたんだしー」
マーゴット「そ、それは……あまりおかしな依頼を受け付けてしまうと、ギルドが信用を失うでしょ! だからアタシは気を使って……
…それよりも! あなたも! 護衛がこの猫…? の冒険者でいいの?」
ノア「大丈夫だよー、猫ちゃん強いんだよー?」
マキ「…! そうですか! それでは、贅沢言える立場ではありませんので、是非、お願いします!」
ノア「じゃぁマーゴット、さっさと依頼の受付手続きしちゃってぇ」
「にゃ」
+ + + +
というわけで、その少年(マキ)の依頼を受けた俺は、翌朝早朝、待ち合わせ場所である街の門の前に来ているのだが。
門の前の広場では、門が開くのを待っている商人や旅人、冒険者達が待っている。
その中に、昨日冒険者のチェンジ要求をしてきた商会の番頭スリンとその護衛依頼を受けた冒険者パーティ“谷間の春”が居た。
シャプ「お、昨日の猫じゃん」
「…誰だにゃ?」
シャプ「昨日ギルドで会っただろ! お前が断られたアニル商会の護衛依頼を受けたパーティ“谷間の春”のシャプだ」
「…そんな奴も居たかにゃ。興味ないから覚えてなかったにゃ」
シャプ「…お前、そんな言い方してると喧嘩になるぞ? というか、お前は何しに来たんだ?」
「護衛依頼にゃ」
シャプ「お前が護衛依頼? 一人でか? …は! まさか!?」
シャプが番頭のスリンの方を見た。
シャプ「コイツの参加を認めたんですか?」
スリン「いや? ……なんだ? まさかこっそりついて来て、なし崩し的に参加を認めさせようという魂胆か? そんな事したって認めんぞ。お前はアニル商会は出入り禁止と言っただろうが。あっちへ行け!」
「そんにゃ事するかっ!」
シャプ「じゃぁ一体…」
「あ、来たにゃ、遅いにゃ」
マキ「遅くなってスミマセン!」
スリン「お前は…コバルト商会のところの…」
シャプ「子供…? 子供一人に護衛は猫一匹? おいおい大丈夫か?」
スリン「確かマキと言ったか。確か親父さんは行方不明になったって聞いたが? まさかお前が商会を継いで続ける気か?」
マキ「父さんはきっと帰ってきます! それまで、僕と母さんで商会は守るって決めたんです!」
スリン「ふん、本当にゲットーが帰ってくると思ってるのか? どうせ護衛の金をケチって魔物に襲われたんだろ。とっくに魔物の胃の中、よくある話さ」
マキ「そんな事…父さんは慎重な人だった。護衛をケチったりなんかしていない…!」
スリン「だが…お前はケチっているようじゃないか? 護衛にそんな猫一匹とは」
マキ「それは……」
スリン「ふん、大方、大商会のキャラバンにくっついて行って危険を回避する作戦なんだろうが、アニル商会の馬車にはついてくるんじゃないぞ? 足手纏は迷惑だ」
「そんな事する気はないにゃよ。というかお前達のほうが足手纏にゃ。俺を頼るんじゃないにゃよ?」
シャプ「何?!」
スリン「ふん、関わってこないなら勝手にすればいいさ。そろそろ門が開くぞ」
そう言うとスリンは行ってしまった。シャプもついていく。
そして門が開き、人々が次々街を出ていく。
この門の先にあるのはスターダクーという街である。
門から順次出発していくため、当然街道は旅人の列ができるが、なるべく距離が離れないようにするのが暗黙の了解らしい。そのほうが魔物に襲われる危険性も少なくなって良いのだそうだ。
俺達も門で出城手続きを終え街を出た。ただ、間の悪い事に、スリン達の
「偶然にゃ。というかお前達だって前の大商会の
スリン「みなそれぞれ単独でも身を守れるだけの護衛は雇っている。その上で、さらにリスクを減らすよう協力し合っているのだ。護衛も雇わず寄生している奴らとは違う」
「護衛は俺が居るにゃ。何なら俺一人のほうが今居る護衛全員より強いしにゃ」
シャプ「おお~吹くねぇ。魔物が出てきた時にビビらないといいんだけどな」
「それはお前らのほうにゃ」
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