第115話 早速次のランクアップ試験を受けるにゃ

ノアと一緒に受付カウンターに戻り、新しいギルドカードを作ってもらう。


ノア「はい、新しい冒険者証ギルドカードだよー。登録二日目でEランクは最速記録だよー」


「熊はAランクだったんにゃろ? それに勝ったのにEにゃのか? 飛び級とかはにゃいのか?」


ノア「ごめんねー、ギルマスの指示なんだよー。アタシもおかしいって言ったんだけどねー」


それを聞いて、後ろで見ていたスティングが思わず口を挟む。


スティング「お前のためだ」


「どういう事にゃ?」


スティング「確かにギルマス権限で飛び級させる事も不可能ではないのだがな。だがお前、賢者様からランクアップ最速記録を目指せと言われたんだろう? だが、賢者の紹介状を持ってきたお前がもし飛び級したとなると、賢者の圧力による依怙贔屓で昇級しただけって言われてしまうだろう。それでは、最速記録としては認められなくなるだろうな」


「にゃるほど…?」


スティング「他の冒険者との兼ね合いもある。短期間に昇格を続ければ、なかなか昇格できない冒険者からやっかみがある。そういう手合を黙らせるためにも、きちんと手順を踏んでランクアップしたほうがいいだろう。お前の実力なら、正規のルートでのランクアップ記録達成も十分可能だろう?」


「俺は別に、他の冒険者からどう思われようがどうでもいいんだけどにゃ。記録とかもどうでもいいにゃ。依怙贔屓でもにゃんでもいいから早くAランク以上の資格が欲しいにゃ」


スティング「なぜそんなに昇級を急ぐ?」


「カレーのためにゃ!」


スティング「ああ、そんな事言ってたな。スパイスを手に入れるために外国へ自由に移動できる資格が欲しいんだったか。だがそれはただの建前なんだろう? 本当は国家の依頼でスパ……」


ノア「すぱ?」


スティング「スパ…イス、そう、カレーを作るためのスパイスが必要だってことだな!」


ノア「えへへカレー美味しいよねぇー、賢者様が帝都に流行らせたんだよねー。でもー、最近どこのお店もカレー作ってくれなくなっちゃったんだよねー。なんかスパイス不足だって言ってた。そうか、猫ちゃんはそのスパイスを取りに行ってくれるんだねー? ギルマス! これは、Sランク認定を出しましょう!」


スティング「だからそれはできんと言っとるだろうが」


ノア「意地悪ー」


スティング「意地悪ではない。…いや、意地はあるか。ギルドが国の圧力でルールを曲げたとなったら、他国のギルドにも笑われるし、ギルド総本部からもお叱りを受けるんだよ」


「まぁなんでもいいにゃ。試験を受ければいいんにゃろ? 次の受験資格はにゃんだっけにゃ?」


俺はノアのガイドブックを写し取った記憶画像を脳内に映し出しページを高速でめくる。


Dランクは……納品と護衛依頼、それと……


ノア「次はDランクだから……Dランク以上の魔物十体以上納品と、護衛依頼の達成、それから…一人前の冒険者として殺人の依頼をこなす事が必要だねー」


スティング「おまえ、誤解を招くような言い方をするな。それじゃまるでギルドが暗殺を請け負ってるみたいに聞こえるだろうが!」


「冒険者ギルドには人を殺す依頼があるにゃ?」


ノア「あるよー、例えば盗賊の討伐とかだねー。生死を問わずデッドオラアライブってやつ」


スティング「そうだ。Dランク以上となればもう一人前の冒険者として扱われる。場合によっては人を殺さなければならない事もある。その覚悟があるかを確認するというだけの話だ。護衛依頼の最中に盗賊に襲われたのに、躊躇して殺せないなんて事があると重大な被害に繋がる事があるからな」


Dランクで一人前? そう言えばガイドブックに書いてあったな。


H:未成年者(依頼は街の中のみ)

G:特例者(未成年ではないがそれに準じる事情の有る者等。依頼は街の中のみ)

F:初心者

E:修行中

D:一人前

C:ベテラン・

B:職人・凄腕

A:達人

S以上:人外~神級 


という感じだった。


ノア「普通はねー、何回か護衛依頼を受けてー。その間に盗賊の襲撃を受けるから、それを殺して無事条件クリアってなるんだよー」


「そう都合よく強盗に襲われるにゃ?」


スティング「あまぁそれは運だが…あえて襲われやすい護衛依頼を狙うのもコツだな」


「襲われやすい護衛ってなんにゃ?」


スティング「例えば高額な商品を運搬する商人の護衛などだな。もちろん、商人だって襲われたくはないからキチンと自衛するので、必ず襲われるという保証はないがな」


ノア「でもー猫ちゃんだったら人をコロしちゃうのは既に達成済みではー?」


スティング「紹介状に隣国で戦争まがいの事をしていたと書いてあった件か? 残念だが賢者の紹介状とは言え、証拠もなしにその言葉だけでそれを信用する事はできん」


ノア「ちーがいますー、紹介状の中身なんてアタシ知らないしー。そうじゃなくて、猫ちゃん昨日、決闘したじゃないですかー」


スティング「あ……そうだった……な。モブ三兄弟は殺されたんだったな……。なんとなく、考えないようにしてしまっていたよ……。確かに……既に殺人の実績があったな、この猫には……」


スティングの声のトーンが落ち、苦々しい視線がカイトに向けられた。


スティング「いざという時に人を殺せる覚悟は必要だが、何の躊躇いもなく人を殺せるというメンタリティも問題がある…。が、Eランクの段階では人格まで問う規定はない。いいだろう、殺人の件はクリアとしてやる。だが、護衛依頼の実績はないからな。そこはきちんと達成してもらうぞ」


「別に構わんにゃよ」




  +  +  +  +




俺はギルドで紹介してもらった護衛依頼を受け、依頼主の商会に顔見世に言った。


番頭「ん? なんだ? 服着て歩くでかい猫が来たぞ?」


普段サイズの俺の身長は人間の子供と同じくらいだ。人間としては小さいはずだが、動物の猫としては確かに大きいかも知れないな。


「冒険者ギルドの護衛依頼を受けて来たにゃ」


番頭「獣人か。というか護衛依頼? そして冒険者? お前が?」


「そうにゃ、昨日登録したにゃ」


番頭「嘘をつくなよ、昨日登録したばかりの初心者が護衛依頼なんか受けられるわけないだろうが。依頼はEランク以上で指定していたはずだぞ?」


「Eランクにゃよ? 今日昇格したにゃ…」


番頭「なんだって?! 昨日登録で今日Eランクに昇格? やれやれ勘弁してくれよ……。我が商会も舐められたものだな、こんなの・・・・を寄越すとは。これは冒険者ギルドに苦情を言わないとだめか……?」



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