第103話 事情聴取2
ギルマス執務室にやってきたタイラーに問い質す。
「それで? その猫?の新人冒険者がトカゲだと言って納品したのは、ドラゴンだったのか? それともやっぱりトカゲだったのか?」
タイラー「……納品されたのは
タイラー「…でも! でも、さすがにあんなチビ猫がドラゴンなんか狩れると思えないじゃないですか? ギルマスもそう思いますよね?」
「俺はそのチビ猫を見てないから知らんよ…」
タイラー「とても小柄な猫だったんです……まぁ、本当は、あんなデカいモノを【収納魔法】で保管していた時点で普通じゃないって気づくべきだったんですが。しかも、後で気づいたのですが、素材は新鮮そのものでした。おそらく、収納魔法の中では時間が停止されていたのだと思います…」
「ちょっと待て、【収納魔法】使いというだけでもレアなのに、時間停止だと? まるで【賢者】じゃないか?」
タイラー「はい…でも、ソロで仕留めたとか言われて、バカな事言ってんじゃないよって思ってしまって、その時点ではそんな事に思い至らなかったんです。それで、思わず『どっから盗んできた?』って訊いてしまったんです…
…そしたらあのカイトとか言う猫、怒っちゃいまして……」
「……それで? どうなったんだ?」
タイラー「その、睨まれたんですけど……すごい威圧感でした。まるで生きてるドラゴンの前に居るのかと……」
恐怖を思い出したのか、タイラーは青くなって震え出し、黙りこくってしまった。それを見かねたモルメルが後を続ける。(モルメルも大分落ち着いたようだ。)
モルメル「…あの、それで、その場には本当にドラゴンなのか確認しようと野次馬してた連中が居たようなんですが、その連中がタイラーが脅されたのを見ていたようで。職員を脅して盗品を正規の納品として認めさせるのは違法じゃないかと騒ぎ出したようで…」
「盗品だという確実な証拠はあったのか?」
タイラー「……証拠があったわけではありません…」
ノア「そもそもー。ドラゴンなんか盗まれたら、大騒ぎになってると思うんですけどー?」
「それはそうだな。ドラゴンが討伐されたとなれば、それだけでニュースになっているはずだ」
モルメル「その―――それで、その場に居たモブ三兄弟が代表して、本当にドラゴンを狩れる実力があるか模擬戦で確認してやるって言い出したようで…」
「ああ……」
まぁよくある展開だ。
「それがなんで【決闘】に? 模擬戦では済ませられなかったのか?」
タイラー「その…、猫人が、模擬戦なんて甘いことやってるからドラゴンも狩れないんだっていい出しまして。帝都の冒険者はレベルが低いって嘲るような事を言ったもんですから、モブ達が怒ってしまって。だったら望み通り【決闘】だと……」
俺は頭を抱えた。
「なぜ許可した?!」
ノア「【決闘】は帝国民に等しく認められた権利だって聞いたよー?」
「態度のデカい新人に意地の悪い先輩が絡むなんてよくある話だが、命のやり取りまで発展しないようにうまく誘導するのも職員の仕事だろうが! モルメルは何をしていた?!」
モルメル「いぇっ、その…、ノアが勝手に受理してしまったので…」
ノア「えー嘘つくなよー。確かに受理したのはボクだけどー、主任がさっさと受理しろって急かしたんじゃんかー」
「なに?!」
モルメル「ちょっアンタ何言って……アタシそんな事言ったかしら? 勘違い、聞き間違いじゃない? そうよ、そうに決まってる! アンタはもう黙ってなさい! もう戻っていいわ! あとはアタシが報告しとくから!!」
ノア「勘違いじゃないですー! 私は、小さな猫ちゃん相手に先輩達が喧嘩売るなよーって説得しようとしてたんですー。その場に居た他の職員に確認して下さいー!」
モルメル「アタシはっ! だって…! あんな事になるとは思ってなかったし……」
「……決闘を模擬戦同様だと甘く見たか。まぁ、過去の事例では、決闘とは名ばかりでグダグダになるケースのほうが多かったからな。そう思うのも仕方がないか……
…しかし、モブ三兄弟はBランクだったはずだろう? それが猫の獣人一人相手に殺されたというのか? まぁドラゴンを
…そんな逸材、どこから出てきたんだ?」
ノア「猫ちゃん、賢者様の紹介状持ってきたみたいですよー」
「賢者だと?! 紹介状……
…ってもしかして、これの事か…?!」
ノア「あーそれそれー。床に落ちてたんで、ギルマスの机の上においといてあげたよー」
モルメル「いくら探しても見つからないと思ったらオマエカー!!」
「差出人は…賢者アダラールと書いてあるな」
モルメル「やば……」
ノア「…あ!!」
「なんだ?」
ノア「猫ちゃん、ワダバールさんのところに居候してるって言ってたけど、それって賢者アダラールの事か!」
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