第98話 疑うにゃ?
◆周囲の冒険者達
モブロン「納品カウンターにドラゴンを出した奴が居たんだよ」
モブタ「ドラゴンだと?!」
モブロン「ああ、バカでかかった、この部屋がいっぱいになっちまうくらいだ」
モブタ「嘘つくんじゃねぇよ、そんなの出したら騒ぎになってるだろうが…」
モブタ「マジックバッグ? Aランクのパーティか?」
モブロン「いや、ソロみたいだったが…」
モブタ「ドラゴンをソロで討伐ったらSランク冒険者か? ってそんな奴このギルドに居たか?」
モブス「というか、猫だったよな?」
モブロン「ああ、子供みたいに小さな、先祖返りの猫人だった。それに、初報酬だとか言ってたから、新人だろう」
モブタ「新人の、猫人の子が、ドラゴンを持ってきたってのか?」
モブロン「おい、裏で出すみたいだから見に行こうぜ!」
周囲に居た冒険者達もモブロン達とともにゾロゾロと裏手の解体場に移動していった。
+ + + +
■カイト
「ここに出せばいいにゃ?」
タイラー「ああ、ここならデカいの出しても大丈夫だ」
「じゃぁトカゲ一匹目…」
タイラー「おい、一匹目ってなんだ? まさか…」
だがタイラーの言葉はそこまでだった。俺が空いたスペースに出したトカゲを見て、タイラーが絶句してしまったからだ」
タイラー「こ、これは……トカゲじゃねぇ! ……
タイラーは出されたドラゴンの周りを歩きまわり見分した。
タイラー「
「これは素材として納品できるはずにゃ、ノアが作った辞典に書いてあったにゃ」
ノアの魔物辞典にはこう書いてあった。
その鱗は固く、魔法も剣も通用しない。吐き出される
まぁ、俺にとってはドラゴンではなく、ただのトカゲだがな。古龍と交流ができてしまったからか、知能が低く会話ができない
タイラー「見事な地竜だ……」
見分しながら見惚れているタイラー。
タイラー「……お前、これをどこで……いや、どうやって手に入れた?」
「どうやって? って普通に森で狩ってきたにゃ」
タイラー「嘘をつくな! お前みたいな小さな猫人が、こんな大きな地竜を狩れるわけがないだろうが?」
「嘘などついてないにゃ。森の中でトカゲを見かけたから狩ったにゃ」
タイラー「そんな出任せはいいんだよ。はっきり言わないと分からんか? お前、コレをどこから盗んできたんだ?」
「はぁ? 盗んでなと居ないにゃ! 森で、自分で斃したにゃ!」
タイラー「一人でか?」
「そうにゃ」
タイラー「嘘はもっと上手につくものだ。地竜はAランク以上の冒険者十人以上でやっと狩れるかどうかと言う魔物だ。一人でできるわけがなかろうが」
「そんなのは知らんにゃ。この程度のトカゲ、一人で倒せないなんて随分人間の冒険者ってのはレベルが低いんだにゃ。だいたい、素材の納品にどうやって手に入れたかなんて関係ないにゃろ?」
タイラー「関係あるんだよ。盗品は買い取れない。もし盗品を持ち込んできた奴が居たら、犯罪者として衛兵に突き出さなければならない」
「やれやれにゃ。そのトカゲは俺が狩ってきたにゃ。盗んでなどいない、俺は嘘などついていないにゃ」
タイラー「衛兵の取調べ所には嘘を見極める魔道具がある。それに掛けられても同じ事が言えるか?」
「問題ないにゃ、俺は嘘などついてないからにゃ」
するとタイラーは少し意外そうな顔をした。
タイラー「嘘を見分ける魔道具に掛けると言うと、嘘つきは大抵動揺するもんだが……なるほど。どうやら嘘が見破られない自信があるようだな。とすると……」
タイラー「…では、どこかのAランク以上の冒険者達が地竜と戦い、相打ちとなって死んだところに、【収納魔法】持ちのお前がたまたま通りかかり、地竜を持ち帰った。だから盗んだわけではない、そんなところか? どうだ、図星だろ?」
「いい加減にするにゃ……。失礼な奴だにゃ、お前は?!」
タイラー「……? …ひっ!」
タイラーの失礼な物言いにムッとした俺は、ドラゴンの威圧を一割ほど発揮し、タイラーにぶつけてやった。
ほんの一割。だが、それでも人間のタイラーには厳しかったようで、尻もちをつき真っ青な顔になって震えだしてしまったので、すぐに引っ込めた。
「理解できたなら、さっさと査定して買い取るにゃ…」
タイラー「―――は…はいっ~~! すみませんっ…! できたらお呼びしますのでっ…、し、室内で、お待ち下さい~っ!」
俺はムッとした顔のままギルドのロビーに戻ろうとしたが、それを周囲で見ていた野次馬の冒険者達が呼び止めた。
モブラー「まぁ待て。本当にコイツが斃したのかもしれんだろうが?」
モブッチ「そんなわけねぇだろ」
モブコフ「まぁ可能性はないわけではない……いや、ないな、ゼロだゼロ」
モブラー「分からんさ、だから俺達がコイツの実力を試してやろうじゃねぇか?」
ごちゃごちゃ言っているが相手にする気はないのでそのまま行こうしたのだが、因縁をつけてきた三人に立ち塞がられてしまった。
モブラー「おい、逃げんじゃねぇよ!」
モブッチ「俺達がお前の実力を確かめてやるって言ってんだよ! 訓練場に行こうぜ」
モブコフ「こええのか? こええよなぁ? そりゃそうだろうなぁ? 生意気な事言うんじゃなかったって後悔してるんだろう? だがもう遅えぜ!」
モブラー「模擬戦? 見てねぇよ。俺達はついさっきギルドに着いたばっかりだからな?」
モブス「俺は見てたぞ、ラルゴがまったく歯が立たずにやられちまったんだよ」
モブラー「なに? ラルゴが……? なるほど、それで調子にのっているといわけか。だが、ありえねぇだろう、ラルゴが、こんなチビネコにやられるなんて。おそらく奴は風邪でも引いて調子でも崩してたんだろうさ。だが、俺達は絶好調だぜ、同じ様に行くと思わん事だな」
「ごちゃごちゃうるさいにゃ……。喧嘩売るなら買うにゃよ?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます